シンコペーションとは?6つのパターンとアウフタクトとの違い

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シンコペーション(syncopation:英)は、リズムに関する音楽用語で、比較的ドラマーの口からよく耳にします。

今回は、「シンコペーションとは何か」「どの様に使われるのか」を詳しく解説いたします。
後半ではJPOPでの実例を紹介しますので、頭と感覚でシンコペーションについて理解していきましょう。

シンコペーションとは

シンコペーションとは、本来あるリズムの重心をずらしたような状態を指します。例えば、音符の使い方を考え、アクセントの位置をずらすことで、重心がずれたような状態になります。

例えば、以下の音源が重心が安定した状態とします。どっしりとした印象です。

次にの音源は、重心が前にずれたように聞こえませんか?
前のめりで、勢いが生まれたようにも感じます。

2つ目のリズムも似たエイトビートですが、4拍目でシンコペーションが起こっているため、こうした重心の変化を感じます。

感覚的に感じていただきたいためにドラムのビートを例に出しましたが、シンコペーションはメロディーにも言えることです。

具体的な解説

先ほどは感覚的な話になってしまったので、より具体的に解説します。

まず、拍子の中の一つ一つの拍は、重みのある強拍と、軽い弱拍(あるいは中強拍)に分けられます。

強拍は、小節内の最初の拍に現れます。
例えば、4分の4拍子では1拍目が強拍。4分の3拍子でも1拍目が強拍です。
4分の4拍子の3拍目は中強拍とされることがあります。)

4分の4拍子の強拍

4分の3拍子の強拍

本来は、強拍に重みを感じるべきなのですが、アクセントが変化すると弱拍に重みをつけることができます。
こうした強拍・弱拍の重い軽いのバランスが変化している状態をシンコペーションと言います。

例えば、以下のように弱拍である4拍目と、次の小節の1拍目をタイで繋げると、4拍目に重みがつきます。
強拍が一つ前にずれたような感覚です。

シンコペーションの譜例

シンコペーションを使う意図

シンコペーションを使う意図はさまざまです。

まず、前のめりなシンコペーションを使えば楽曲に疾走感が生まれたりするなど、ノリを変化させることができます。

またジャズのような裏拍が強調される音楽ではシンコペーションのリズムが基本ですし、クラーベなどのラテンのリズムにもシンコペーションが含まれています。

ポリリズムを生み出すためにもシンコペーションが使われます。

結局は、「その音楽のグルーブを生み出すため」というのがシンコペーションの役目と言えます。

アウフタクトとの違い

全く違うのですが、よく混同されやすい言葉に『アウフタクト(弱起)』があります。
この違いについても確認しておきましょう。

まずシンコペーションは、自然な強拍の位置がずれることであり、リズムの話です。

一方のアウフタクトは、曲の頭やフレーズの頭が、手前の小節から先行して始まる(弱拍から始まる)ことを指します。
こちらはリズムというより、曲の構造に関する話です。

以下はアウフタクトで始まる例ですが、決してシンコペーションしているわけではありません。

アウフタクトの譜例

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シンコペーションの6つの作り方

音の長さや休符の使い方、演奏の方法などでアクセントの位置が変化し、シンコペーションが生まれます。
この章では、シンコペーションの作り方を以下6つのパターンに分けて紹介します。

  • 弱拍と強拍をタイで繋げる
  • 休符で強拍をずらす
  • 音符の長さでアクセントを出す
  • スラーでアクセントを出す
  • 反復メロディー・コードでアクセントをずらす
  • 演奏記号による指定

弱拍と強拍をタイで繋げる

弱拍と強拍をタイで繋げると、弱拍に位置に強拍が移動してきたように感じます。

シンコペーションの例1

 

上の例の通り、前のめりなリズムに感じるのではないでしょうか。
一般的に、このタイプのシンコペーションを表す際、「(リズムが)食ってる」「食う」と表現されることがあります。

えるるん
バンドとかしてると、「2小節目、最後食ってるから気をつけて」「ここ食ってた方がカッコよくない」なんてコミュニケーションがよくあるね!

休符で強拍をずらす

休符はアクセントになりません。強拍が休符になると、次の拍にアクセントが感じやすくなり、シンコペーションが生まれます。

シンコペーションの例2

 

音符の長さでアクセントを出す

長い音符にはアクセントを感じやすくなり、シンコペーションが作れます。

シンコペーションの例3

スラーでアクセントを出す

スラーで括られた部分は滑らかに演奏されます。
スラーの部分をフレーズとして感じやすく、その頭の音にアクセントがつきます。

シンコペーションの例4

拍子は、4分の4拍子のままですが、スラーがある箇所では3拍子のように感じられます。
他の楽器が4拍子をキープしていれば、ポリリズムとなります。

反復メロディー・コードでアクセントをずらす

メロディーやコードが同じリズムで反復されると、それぞれ繰り返し部分にアクセントを感じられ、シンコペーションが生じます。

シンコペーションの例5

演奏記号による指定

『sf(スフォルツァート)』や『>』のような強く演奏せる記号を用いて、アクセントをつける部分を奏者に指示できます。
これまでに紹介したものと違って「強い音を明確に鳴らす」ため、シンコペーションがより感じやすくなります。

シンコペーションの例6

 

まとめ

シンコペーションとは、本来あるリズムの重心をずらしたような状態を指します。
例えば、音符の使い方を考え、アクセントの位置をずらすことで、重心がずれたような状態になります。

リズムが前のめりに感じるシンコペーションは、「(リズムが)食う」と言われることもあるため、覚えておくと演奏時のコミュニケーションが円滑に進むでしょう。

シンコペーションにより、多様なグルーブ感を作れます。
様々なシンコペーションの使い方を学んで、自分の音楽に生かしてみてください。