【もうええわ/藤井風】コード進行と分析

藤井風さんの一作目のアルバム『HELP EVER HURT NEVER』に収録されている楽曲。

HIPHOPライクなアレンジと、ダークさと温かさを併せ持つコードワークが特徴で、歌いまわしを含め藤井風さんの表現力の高さが窺える一作。

ここからの内容は、er-music編集部の独自の見解になります。 読者様との解釈に相違がある場合も、考え方の一例、娯楽の一環としてご覧ください。 また、ダイアトニックコードの理解があるとより楽しめるかと思います。 >>ダイアトニックコードについて

イントロ

 

楽譜イントロ

 

1~4小節目

コードEm→Bm7→Em7→Dm7→Cmaj7→Bm7→Am7→A/B→B7(♭9)
ディグリ ー表記Ⅵm→Ⅲm7→Ⅵm7→Ⅴm7→Ⅳmaj7→Ⅲm7→Ⅱm7→Ⅱ/Ⅲ→Ⅲ7(♭9)

Ⅵm7→Ⅲm7→Ⅵm7』と短調の暗い雰囲気ではじまるイントロ。

『Ⅴm7』ドミナントマイナー

そこからⅣmaj7→Ⅲm7→Ⅱm7の流れで少し明るい雰囲気が出てくるも、Ⅱ/Ⅲ→Ⅲ7(♭9)でマイナーキーのドミナントでまたAメロのⅥm7へつながっていきます。

『Ⅱ/Ⅲ』はⅢ7(♭9)に解決するsus4コードのような、クッション的な役割となっているオンコードです。

 

『Ⅲ7(♭9)』セカンダリードミナント。平行短調のⅥm7に対するドミナントであるため、暗い雰囲気を予感させるコードです。

 

Aメロ

 

楽譜Aメロ

 

1~4小節目

コードEm7→Bm7→Em7→Dm7→Cmaj7→Bm7→Am7→B7(♭9)
ディグリ ー表記Ⅵm7→Ⅲm7→Ⅵm7→Ⅴm7→Ⅳmaj7→Ⅲm7→Ⅱm7→Ⅲ7(♭9)

基本的なコード進行はイントロと同様ですが、ここではⅡ/Ⅲのクッションがなく、そのままⅢ7(♭9)へ進んでいます。

5~8小節目

コードEm7→Bm7→Em7→Dm7→G7(♯5)→Cmaj7(9)→Bm7→Am7→Amaj7/B→A6/B
ディグリ ー表記Ⅵm7→Ⅲm7→Ⅵm7→Ⅴm7→Ⅰ7(♯5)→Ⅳmaj7(9)→Ⅲm7→Ⅱm7→Ⅱmaj7/Ⅲ→Ⅱ6/Ⅲ

 

2小節目のⅤm7→Ⅰ7(♯5)は、セカンダリードミナントであるⅠ7(♯5)と、それに向かうリレイテッドⅡm7であるⅤm7から成り立つコード進行。

Ⅱmaj7/Ⅲ→Ⅱ6/ⅢはBメロのEメジャーキーからみたⅣmaj7/Ⅴ→Ⅳ6/Ⅴであり、転調のきっかけとなっています。

 

Bメロ

 

楽譜Bメロ

 

1~4小節目

コードEmaj7(9)→C♯m7→F♯m7→Amaj7/B→A6/B→Emaj7(9)→C♯m7→F♯m7→G♯7(♭9)
ディグリ ー表記Ⅰmaj7(9)→Ⅵm7→Ⅱm7→Ⅳmaj7/Ⅴ→Ⅳ6/Ⅴ→Ⅰmaj7(9)→Ⅵm7→Ⅱm7→Ⅲ7(♭9)

BメロはEメジャーキーで進んでいきます。

1・2小節目は1-6-2-5の温かいコード進行。

3・4小節目は1-6-2まで進んでからⅢ7(♭9)へ進行しています。

Ⅲ7(♭9)セカンダリードミナント。平行短調のトニックであるⅥm7へ向かうドミナントコードであるため、暗い雰囲気を予感させます。

 

5~8小節目

コードC♯m7→C♯m7/B→Amaj7→Eadd9/G♯→Gm7(13)→F♯m7→B7sus4
ディグリ ー表記Ⅵm7→Ⅵm7/Ⅴ→Ⅳmaj7→Ⅰadd9/Ⅲ→♭Ⅲm7(13)→Ⅱm7→Ⅴ7sus4

6小節目のⅠadd9/ⅢはⅠadd9の長3度がルートになっている第一転回型のコード。

藤井風さんがよく使われるコードで、『帰ろう』や『優しさ』、MISIAさんに楽曲提供した『Higher Love』でも聴くことができます。

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サビ

 

楽譜サビ

 

1~4小節目

コードEm→Bm7→Am7→C/D→D7(9)→Em→Bm7→Am7→C/D→D7(♭9)
ディグリ ー表記Ⅵm→Ⅲm7→Ⅱm7→Ⅳ/Ⅴ→Ⅴ7(9)→Ⅵm→Ⅲm7→Ⅱm7→Ⅳ/Ⅴ→Ⅴ7(♭9)

サビではGメジャーキーに戻ってきます。

2小節目のⅣ/ⅤはV7の代わりに使われるコードで、ドミナントとしての機能を果たしながらも緊張感が薄く、ポップスにおいてもよく用いられるコードです。

Ⅴ9sus4とほぼ同様の構成音をもっており、ここではⅤ7(9)に対するsus4コードとして使われています。

4小節目のⅤ7(♭9)はオルタードテンションである♭9thの音が付加されており、2小節目のⅤ7(9)と比べると暗い響きをもっています。

 

5~8小節目

コードG→Dm7→G7(♭9)→Cmaj7→E♭/F→Bm7→E7(♯9)→E7(♭9)→Am7→Amaj7/B→A6/B
ディグリ ー表記Ⅰ→Ⅴm7→Ⅰ7(♭9)→Ⅳmaj7→♭Ⅵ/♭Ⅶ→Ⅲm7→Ⅵ7(♯9)→Ⅵ7(♭9)→Ⅱm7→Ⅱmaj7/Ⅲ→Ⅱ6/Ⅲ

1~4小節目はⅥmから始まる暗い雰囲気の進行だったのに対し、ここでは一変してGから明るい雰囲気のコード進行になっています。

5小節目のⅤm7→Ⅰ7(♭9)は、リレイテッドⅡm7であるⅤm7からのセカンダリードミナントであるⅠ7(♭9)に進むことでツーファイブの流れを作り、Ⅳmaj7へ解決するコード進行。

Aメロの5~8小節目に登場した手法と同様のものです。

♭Ⅵ/♭Ⅶモーダルインターチェンジによって同主短調から借用したコード。

Ⅳから♭Ⅶへ進行する流れはソウルミュージックなどでよくみられる進行です。

 

 

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