「SEKAI NO OWARI」がまだ日本語表記の「世界の終わり」だった2010年、インディーズで最初のアルバムとしてリリースされた「EARTH」に収録されている1曲。
オリジナルの振付でダンスを披露する人気TikToker「ローカルカンピオーネ」がこの楽曲を採用し動画を投稿したことで、最近改めて注目されています。
明るい曲調の中にも、どこか切なさや憂いがあるような雰囲気の正体について迫っていきます!
全体を通して
ピアノ、エレキギター、シンセベース、ドラムマシンに加え、シンセのサウンドが楽曲を彩っています。
基本的にリズムは四つ打ちで、シンセベースはオクターヴで動いています。
BPMが170と早めなので、かなり疾走感があります。
イントロ
ギターのカッティングが楽しいイントロ。
シンセによるメロディは、サビのメロディをモチーフとしたものになっています。
1~4小節目
コード | D→Gmaj7→A7→F#7 |
ディグリ ー表記 | Ⅰ→Ⅳmaj7→Ⅴ7→Ⅲ7 |
Ⅰ→Ⅳ→Ⅴとオーソドックスな進行を経てF♯7(Ⅲ7)へ。
Ⅲ7はセカンダリードミナントと呼ばれるノンダイアトニックコードが使われています。
Ⅲ7はⅥに向かうセカンダリードミナントの為、通常のⅢよりも特徴的で切ない響きがあります。
5~10小節目
コード | Bm→Bm/B♭→Bm/A→G#m7(♭5)→Gmaj7→A7 |
ディグリ ー表記 | Ⅵ→Ⅵ/♭Ⅵ→Ⅵ/Ⅴ→♭Ⅴm7(♭5)→Ⅳmaj7→Ⅴ7 |
6小節目からはルート音のみが半音ずつ下降していくベースクリシェ。
クリシェには様々なパターンがありますが、Ⅵからルート音のみが半音ずつ下降していくベースクリシェは最もよく使われる進行のひとつで、切ない雰囲気があります。
Aメロ
1~8小節目
コード | Dadd9→Gmaj7→F♯7→Bm→G→A |
ディグリ ー表記 | Ⅰadd9→Ⅳmaj7→Ⅲ7→Ⅵ→Ⅳ→Ⅴ |
イントロでは1小節毎にコードが変わっていたのに対し、AメロではDadd9、Gmaj7と2小節ずつ鳴らしています。
これによって緩急がつき、一度落ち着いたような雰囲気を醸し出しています。
また、ピアノが9thを弾くことによって、2小節という時間に深みが出ています。
Bメロ
1~12小節
コード | G→A→F♯m→Bm |
ディグリ ー表記 | Ⅳ→Ⅴ→Ⅲ→Ⅵ |
4-5-3-6進行。多くの名曲やヒット曲で頻繁に使われているため、王道進行と呼ばれることもあります。
G→A(Ⅳ→Ⅴ)の流れでトニックにいくと思わせて、暗い響きのF♯m→Bm(Ⅲ→Ⅵ)に着地するというドラマチックなコード進行です。
リズム面では、Aメロで一度緩やかになっていたところからBメロで疾走感を取り戻し、サビへ繋がります。
サビ
1~20小節
コード | D→Gmaj7→A7→F#7→Bm→Bm/B♭→Bm/A→G#m7(♭5)→Gmaj7→A7 |
ディグリ ー表記 | Ⅰ→Ⅳmaj7→Ⅴ7→Ⅲ7→Ⅵ→Ⅵ/♭Ⅵ→Ⅵ/Ⅴ→♭Ⅴm7(♭5)→Ⅳmaj7→Ⅴ7 |
サビはイントロと同じコード進行・サウンドで、印象的なカッティングはここでも出てきます。
二回し目のF♯7(13・14小節目)ではボーカルがm7thの音を歌っていることによって、とても感情的なメロディとなっています。
一瞬のことですが、これがあるのとないのとではメロディの雰囲気が大きく変わってしまう重要なポイントのひとつです。
間奏
コード | Bm→Bm/B♭→Bm/A→G#m7(♭5)→Gmaj7→A7 |
ディグリ ー表記 | Ⅵ→Ⅵ/♭Ⅵ→Ⅵ/Ⅴ→♭Ⅴm7(♭5)→Ⅳmaj7→Ⅴ7 |
クリシェからのⅣ→Ⅴが3回ほど繰り返されるパート。ギターのアルペジオがより印象的な雰囲気を演出しています。
1番のサビ終わり、2番のサビ終わりと楽曲中に2回出てくるパートですが、終始明るく疾走感のある曲調の中でこのパートが挟まれることによって、曲を単調に感じさせない、ほどよいアクセントになっていると言えます。
シンセ・ギターソロ
Bメロで登場した王道進行の上でシンセとギターソロが展開されるパート。
シンセリードとエレキギターの掛け合いが見事なので、ぜひ注目して聴いてみてください。
落ちサビ
歌とピアノだけになる落ちサビパート。
二回し目からはドラムマシンが入り、最後はブレイク。ボーカルだけとなり「消えてしまうのだろう」でアウトロへ入ります。
ブレイク後、静かになったところで歌が入ってくると非常に印象的で、一層歌詞の意味が強く刺ささります。
その為、「僕らの命の炎は消えてしまうのだろう」という重要且つパンチのある歌詞を狙ってここに持ってきていると考えられます。
アウトロ
アウトロも、イントロやサビと同じ進行の繰り返しです。
入りではボーカルが「フェイク的なメロディ」を歌うことで感情の高まりや盛り上がりを感じさせます。
その後は、ボイスエフェクトを掛けた歌声で英語詞を歌っています。英語である上にエフェクトが掛かっているため、一聴してなんと歌っているのか聴き取りづらい部分ですが、ここはあえてわかりづらくして聴き手に「考えてもらう」ようにしていると感じます。
それぞれ聴き手がよく聴いて翻訳し、解釈するというプロセスを踏んでもらうことで、楽曲をより理解することができる構造になっています。
最後はイントロと同様、サビメロがモチーフとなったシンセリードが入り、トニック(D)できれいに終わります。
まとめ
コード進行という面ではシンプルなものが多く、繰り返しが多いので、音楽理論初心者の方でも理解しやすいポップソングとなっています。
しかし、明るい曲調に対して、メッセージ性の強い風刺的な歌詞やボーカル・深瀬さんの歌声が乗っかることによって、とても深みのある楽曲となっています。
コードやメロディ・リズムといったいわゆる音の要素と、歌詞の関係性というものを意識して色々な曲を聴いてみると、また別の発見があり大変面白いです。
是非、この機会にみなさんもそういった音楽の聴き方を試してみてください!