同年には、『わたがし』や『青い春』等がリリースされており、徐々にテレビを通してback numberを知る方が増えていった頃でしょう。
全体を通して
back numberらしい、ゆったりと感とドラマチックさが満喫できる楽曲です。
ゆったりとした曲調ですが、随所に力強さを感じ、またストリングスの気品溢れる響きが合わさり、なんとも壮大な世界観が浮かびます。
リズムは心地よく跳ねていて、人間らしい生き生きとした感じや、心の揺れ模様がより感じられます。
イントロ
1小節目【C#m7-5→CM7】
『C#m7-5』は、CM7のルートだけ半音上げたコードです。
ノンダイアトニックコードですので緊張感があって、ルート音の違和感が早くCへと動こうとする力を作ります。
3〜4小節目
『C→D→Em』とトニックへ向けて上行するコード進行で、1〜2小節を補うような力強さをかんじます。
ただ、ギターのフレーズは下行気味で暗く、またレガートを取り入れることで脱力感まで感じます。
コード進行と合わさると、なんとも”やるせなさ”を感じます。
Aメロ
イントロに比べて控えめな演奏で、落ち着いた雰囲気のするセクションです。
1〜2小節【Cadd9→D→Em7→G】
演奏がすっきりとして、コード感がより分かりやすくなりました。
『Cadd9→D→Em7→G』の進行では、Cadd9の9th部分であるD音が全てのコードに含まれています。
こうした、固定・持続させた音はペダルポイントと呼びます。
コード | 構成音 |
---|---|
Cadd9 | C,E,G,D |
D | D,F,A |
Em7 | E,G,B,D |
G | G,B,D |
例えば、優里のドライフラワーでも似たコード進行が使われています。
優里メジャー2作目の楽曲となる「ドライフラワー」 数々の国内チャートで首位を獲得しました。 メジャー1作目となった「かくれんぼ」のアフターストーリーとなっており、SNSでも数え切れないほどの拡散、言及、カバーがされています。 […]
この部分の解釈
この曲の場合で言えば、ギターで作曲する上での演奏上の都合(ひきやすさ、手ぐせ)的にこうしたコード進行にしているのかもしれません。
ただ、イントロに比べてAメロは落ち着きがあって、またC(サブドミナント)から始まる進行のために叙情的な雰囲気を感じます。
そこに、抑揚の少ない『Cadd9→D→Em7→G』の進行をとることで、心が冷え切るような「虚しさ」まで感じられます。
8小節目【G】
コードとメロディがどちらも『G』に行くことで、非常に明るい終わりとなりました。
ここまで散々、哀愁や虚しさを感じてきているので、「とっても元気!」というより、「落ち込んだ心に温かな光が差し込む様な穏やか」さに近い印象を感じるのではないでしょうか。
Bメロ
1〜2小節目【Cadd9→D】
ここまで1小節2つのコードが基本でしたが、Bメロは1小節1つのコードが基本となっています。
そのため、少し立ち止まった様な失速感を感じます。
この部分の解釈
歌詞を見てみると、どうやら過去の恋愛に対する後悔を思い返している場面の様です。
軽やかに進むAメロのコード進行よりも、Bメロの立ち止まった様なコード進行の方が、深く考えている様をイメージできます。
3〜4小節目【G→D/F#→Em】
ベースがG→F#→Eと順に下行していくスムーズな進行です。
先ほどの1〜2小節目に比べて軽やで、もどかしさが少しだけ解消されたいく様に感じます。
5〜6小節目【Am→G】
『Am』はここで初登場です。
少し暗くも感じますが、この後は上行していくコード進行なので、感情が徐々に込み上がってくるような高まりを感じられるポイントでもあります。
7小節目【Cm】
ここまで『Cadd9』を使っていましたが、ここではマイナーコードに変化しています。
このコードはサブドミナントマイナーと言われる定番コードで、哀愁のある響きをします。
9小節目【B7】
最後が『D』のままサビにいってくれれば、もっと明るい曲に感じたかもしれません。
『B7』は、暗い響きをもつ『Em』に対するドミナントセブンスで、緊張感、不安定感が強いコードです。
加えてメロディーも、上行&跳躍がより緊張感を高めます。
この部分の解釈
Aメロが明るく終わっていたので、Bメロの終わり方は衝撃的で、主人公の心の揺れようが強く伝わってきます。
こうした工夫もあると、歌詞を見なくても、「悲しみ」や「ドラマチックな感情の動き」がイメージできます。
サビ
1〜2小節目【Cadd9→D→Em7→G】
コード進行は、これまで使われてきたコードばかりです。
『G』で終わるため、サビの出だしは穏やかな印象です。
メロディーの特徴
1小節目は、4分音符のみ作られた音価の長いメロディーです。加えて、跳躍のない順次進行と呼ばれるメロディーになっています。
Bメロの最後の小節(B7の部分)でつけた緊張感が、ゆったりと解消されていくイメージで、心地よさがあります。
2小節目は、1小節目のメロディーの余韻のように働いています。
しっかりと落ち着かせた1小節目の余韻なので、哀愁すら感じます。
3〜4小節目【Cadd9→D→Em7】
サビはメロディーから見えても、4小節一塊のセクションです。
重要な4小節目は『Em』で終わることで、暗く、ネガティブな雰囲気となります。
メロディーの特徴
1〜2小節目で落ちた低い音域が続いています。
そのため暗い印象で、落ち込んでいる様にも感じます。
7〜8小節目【Cadd9→D→Em7】
最後まで『Em』で終わる進行で、メロディーと合わさって虚しさが感じられました。
メロディーの特徴
8小節目は、上向の跳躍が加わった力強いメロディーです。
16分音符主体の音価の短いメロディーですが、最後は長い音符で締められています。
最後のE音は、下から跳躍した音のため力強く感じます。
長い響きが、ずっと遠くを見ているような奥行きを感じさせ、これまでのストーリーと相まって、遠い過去を思い返している様が想像できます。
ワンコーラスを振り返って
今回は、エンディングのワンコーラスを見てきました。
なんとも切なさ、哀愁感の溢れる楽曲でしたね。
たまに来る、明るさを感じる進行には、過去の美しい部分を思い返している様に感じました。
楽しい記憶ながらも、選択を間違えた自分への悔しさがあるかの様で、とてもリアリティのある恋愛物語が見えてきます。
back numberは、ほとんどが恋愛ソングですが、どれも繊細な感情がみえ、聴き手が自分ごとの様に感じやすいほどのリアリティがある物語だと感じています。
強く共感され、支持される所以でしょう。
この部分の解釈
このタイプのコード進行はJpopでもよく使われますが、冒頭で使われる場面は稀で、多くはサビ終わりで使われます。
特にaikoの楽曲で多くみられますが、まさにエンディング感のあるコード進行です。
下降するコード進行は、暗さ・落ち着きを感じさせますが、C#m7-5の不安定感と相まって、もどかしさや哀愁が感じられます。