MISIAさんが2021年11月12日に配信リリースした新曲、「Higher Love」。藤井風さん初の楽曲提供ということでも話題になりました。
今回は、藤井風さんが生み出した至高のゴスペルソングのコード進行について分析していきます!
冒頭サビ
1~4小節目
コード | A♭M7→Gm7→C7(♭9)→Fm7→A♭M7/B♭→A♭7(9,13)→Gm7→C7(♭9) |
ディグリ ー表記 | ⅣM7→Ⅲm7→Ⅵ7(♭9)→Ⅱm7→ⅣM7/Ⅴ→Ⅳ7(9,13)→Ⅲm7→Ⅵ7(♭9) |
「届け」のアウフタクトで始まる冒頭サビ。
2小節目のⅥ7(♭9)はセカンダリードミナントです。
この楽曲全体に共通する特徴として、Ⅵはすべてセブンスコードになっていることが挙げられます。
Ⅱm7→ⅣM7/Ⅴはツーファイブですが、ドミナントの部分にはⅣM7/Ⅴというオンコードが使われています。
このコードはドミナントとしての役割を持ちながらも、Ⅴの長3度の音が鳴っていないため浮遊感があり、通常のⅤ7を使うよりも解決感を和らげることができます。
一般的にはⅣ/ⅤやⅡm7/Ⅴの形で使われることが多く、aikoさんの「カブトムシ」やOfficial髭男dismの「LADY」などでも聴くことができます。
もうすでに多くも方にカバーされ、考察されてきた超名曲『カブトムシ』 今回も、カブトムシのコード進行を分析していきましょう。 ここからの内容は、er-music編集部の独自の見解になります。 読者様との解釈に相違がある場合も、考え方の[…]
5~9小節目
コード | A♭M7→A♭m69→Gm7→C7(♭9)→A♭m7(9)→D♭7(9,13)→G♭M7→C♭M7→Fm7→A♭/B♭ |
ディグリ ー表記 | ⅣM7→Ⅳm69→Ⅲm7→Ⅵ7(♭9)→Ⅳm7(9)→♭Ⅶ7(9,13)→♭ⅢM7→♭ⅥM7→Ⅱm7→Ⅳ/Ⅴ |
1小節目のⅣm69はサブドミナントマイナーです。ⅣからⅣmへ進行する流れは非常によく使われます。
7小節目のⅣm7(9)→♭Ⅶ7(9,13)→♭Ⅲmaj7→♭ⅥM7と一拍ずつコードが動く部分。とても浮遊感があり不思議な進行に聴こえます。
この部分はすべて強進行になっている為、こういった自由なコードワークを用いても楽曲の中で成立させることができます。
また、全体としてマイナーキーのコードが使われている為、一瞬キーがわからなくなるような、浮遊感があります。
Ⅱm7→Ⅳ/Ⅴは3小節目にも登場したツーファイブのパターン。ここではⅣM7/ⅤではなくⅣ/Ⅴになっています。
イントロ
1~4小節目
コード | Fm7→Gm7→C7(♭9)→Fm7→Gm7→C7(♭9) |
ディグリ ー表記 | Ⅱm7→Ⅲm7→Ⅵ7(♭9)→Ⅱm7→Ⅲm7→Ⅵ7(♭9) |
イントロ4小節はⅡm7→Ⅲm7→Ⅵ7(♭9)の繰り返し。
Ⅲm7→Ⅵ7(♭9)はⅡm7に向かうツーファイブになっており、延々と繰り返すことができるコード進行です。
マイナーコード2つに加えてオルタードテンションの付いたセブンスコードという、全体としてかなり暗い雰囲気の和音が使われていますが、煌びやかなブラスやコーラス、オルガンなどのアレンジによって明るくお洒落に聴こえます。
Aメロ
1~4小節目
コード | Fm7→Gm7→C7(♭9)→Fm7→A♭M7/B♭→G♭/A♭→E♭add9/G→C7(♭9) |
ディグリ ー表記 | Ⅱm7→Ⅲm7→Ⅵ7(♭9)→Ⅱm7→ⅣM7/Ⅴ→♭Ⅲ/Ⅳ→Ⅰadd9/Ⅲ→Ⅵ7(♭9) |
ⅣM7/Ⅴ→♭Ⅲ/Ⅳの流れは、ⅣM7/Ⅴの「ソ♭」以外が平行移動したような形です。
この進行はトップノートのみ、ⅣM7/Ⅴの長7度の「ソ」が♭Ⅲのルートである「ソ♭」へと半音の動きをしており、単純な平行移動よりもジャジーな響きになっています。
Ⅰadd9/ⅢはⅠadd9の長3度の音がルートにきている第一転回系のコード。藤井風さんがよく使われるコードで、「旅路」や「帰ろう」でも使われています。
5~8小節目
コード | Fm7→Gm7→C7(♭9)→Fm7→B♭7→E♭→Cm7→C7 |
ディグリ ー表記 | Ⅱm7→Ⅲm7→Ⅵ7(♭9)→Ⅱm7→Ⅴ7→Ⅰ→Ⅵm7→Ⅵ7 |
Ⅱm7→Ⅴ7→Ⅰ→Ⅵm7はツーファイブワンからのⅥという、定番の進行。
ここでトニックとⅥm7の音がやっと出てきたという感じがしますが、Ⅵm7の部分はボイシングの流れ的に見ると構成音がⅠのままルートのみがⅥになったような形。
キメと同時にⅥm7→Ⅵ7へ。
Bメロ
1~4小節目
コード | A♭m7→C♭M7/D♭→D♭7(♭9,♭13)→E♭M7→Gm7→C7(♭9) |
ディグリ ー表記 | Ⅳm7→♭ⅥM7/♭Ⅶ→♭Ⅶ7(♭9,♭13)→ⅠM7→Ⅲm7→Ⅵ7(♭9) |
サブドミナントマイナーであるⅣm7から♭ⅥM7/♭Ⅶ→♭Ⅶ7(♭9,♭13)へ。
♭ⅥM7/♭Ⅶは♭Ⅶ7(♭9,♭13)へ向かうクッションのようなコードで、sus4コードのような使い方をしています。
次のコードはトニックのⅠM7に解決しており、大まかな流れで見るとⅣm7→♭Ⅶ7→ⅠM7となっています。これをバックドア進行と言います。
Ⅳm7→♭Ⅶ7という同主短調からのモーダルインターチェンジコードで成り立っているツーファイブ的な進行で、ジャズではよく使われます。
5~8小節目
コード | A♭m7→C♭M7/D♭→D♭7(♭9,♭13)→G♭M7→C♭M7→Fm7(♭5)→B♭ |
ディグリ ー表記 | Ⅳm7→♭ⅥM7/♭Ⅶ→♭Ⅶ7(♭9,♭13)→♭ⅢM7→♭ⅥM7→Ⅱm7(♭5)→Ⅴ |
5・6小節目は1・2小節目と同様の流れで進み、7・8小節目の♭ⅢM7→♭ⅥM7→Ⅱm7(♭5)。
ここはイントロの7小節目に出てきたコードと同様のもので、同主短調から借用したモーダルインターチェンジコードです。
Ⅴからサビ頭のⅣM7へつながり、そこでやっと元の調に戻ってきたような感覚になります。
サビ
1~4小節目
コード | A♭M7→Gm7→C7(♭5)→Fm7→A♭M7/B♭→A♭7(9,13)→Gm7→C7(♭9) |
ディグリ ー表記 | ⅣM7→Ⅲm7→Ⅵ7(♭5)→F♯m7→AM7/B→A7(9,13)→Gm7→C7(♭9) |
Ⅳ7(9,13)は、冒頭サビの3小節目に出てきたⅣ7(♭9,♭13)と同様、Ⅳがセブンスコードになった形です。
冒頭サビのⅣ7(♭9,♭13)と比べると、かなり明るく煌びやかな響きになっています。
5~8小節目
コード | A♭M7→A♭m69→Gm7→C7(♭9)→A♭m7(9)→D♭7(9,13)→G♭M7→C♭M7→Fm7/B♭→B♭7(♭9) |
ディグリ ー表記 | ⅣM7→Ⅳm69→Ⅲm7→Ⅵ7(♭9)→Ⅳm7(9)→♭Ⅶ7(9,13)→♭ⅢM7→♭ⅥM7→Ⅱm7/Ⅴ→Ⅴ7(♭9) |
ⅣM7→Ⅳm69は冒頭サビと同様、Ⅳからサブドミナントマイナーの流れ。
Ⅳm7(9)→♭Ⅶ7(9,13)→♭ⅢM7→♭ⅥM7も冒頭サビと同じ、浮遊感のある進行。
Ⅱm7/Ⅴ→Ⅴ7(♭9)は、Ⅱm7/ⅤをⅤ7に解決するⅤ7sus4コードの様に用いた進行。
9・10小節目
コード | A♭m7(9)→D♭7(9,13)→G♭M7→C♭M7→Fm7→A♭M7/B♭ |
ディグリ ー表記 | Ⅳm7(9)→♭Ⅶ7(9,13)→♭ⅢM7→♭ⅥM7→Ⅱm7→ⅣM7/Ⅴ |
ここでは7小節目の進行を繰り返します。
こういった、あっさり解決させずに同じフレーズを繰り返すという焦らしのようなパターンは、J-POPにおいてよく使われます。
最後はⅡm7→ⅣM7/Ⅴのツーファイブで間奏へ繋がります。