全体を通して
演奏の特徴
ギターバッキングとボーカルのみで楽曲が始まります。
音圧の少なさ、指引きのサウンドから静けさを感じますが、意外にもクランチ気味のギターではっきりとリズムを刻んでいます。
ここに、冬の重たさ(雪がしとしと降り積っていく様子や、何か少し体が重たい感じ、夏のように爽快でない様子)を感じました。
全体的に見ればAメジャーキーの明るさがありますが、ところどころ切なさや哀愁を感じるコード進行も見られました。
イントロのない構成
また、イントロがない構成も特徴的です。
同じ内澤崇仁が作曲した、Aimerの『カタオモイ』もイントロのない構成となっていました。
個人的に、Aメロから始まる楽曲が、登場人物への感情移入がしやすいように感じています。
反対に、イントロがある楽曲は、その楽曲が織りなす世界観に没入しやすい。
まず耳に入るのが歌メロになるので、歌詞やメロディーに意識がいきやすくなります。
そして聴者が各々、その歌詞の主人公をイメージしだします。
今回で言えば、歌いだしが「そっと降る雪が 君に似てるな」なので、『男性』『恋している』『ロマンチスト』みたいなイメージを一瞬でつかむことができます。
Aメロ
3~4小節目【F#aug7 | F#7】
先に4小節目のコードから見ていきましょう。
『F#7』は、次のBm7を一時的なトニックと見立ててドミナントコードに変えたものです。セカンダリードミナントと言います。
『F#aug7』は、よくドミナントコードの仲間として扱われます。そのため、F#7同様にセカンダリードミナントです。
7小節目【A/E】
Aコードの第二転回系が『A/E』です。
前のBm7がサブドミナントという機能を持ったコードのため、このコードはドミナントの代わりと考えると自然です。
ドミナントは非常に不安定な響きで、サブドミナントは若干不安定な響きがします。不安定なコードほど、トニック(ここでいうA)へ戻りたい力が強まります。
8小節目【DM7 – Dm6】
『Dm6』は、サブドミナントマイナーと呼ばれるコードです。
サブドミナントであるDM7が、マイナーコードになったもので、切なさや哀愁などが感じられます。
Bメロ
1~4小節目【DM7 ~F#7】
この4小節だけ切り取ると、王道進行と呼ばれるコード進行をとっています。
ただ、最後の『F#aug7→F#7』だけは例外で、セカンダリードミナントに変えた進行になっています。
6小節目【D/E】
『D/E』は、ここではドミナントの代わりとして使われています。
D/Eは、E7sus4(9)とも言えるためです。
7~8小節目【Asus4 | A】
sus4を入れることで、トニックAに着地する前に若干の緊張感と、解決の遅れが生まれ、Aの安定感が際立ちます。
サビ
ここでも王道進行を意識されていますが、また4小節目のコードがメジャー系のコードとなっています。
4小節目【F#】
『F#』は、Aメジャーの平行短調であるF#mの短3度の音が半音上がり、メジャーとなったコードです。
このようにマイナートニックをメジャーコードへと変えた終止の進行を、ピカルディ終止といいます。
Cメロ前半
曲全体を起承転結でわかるなら、『転』となるセクション。どっしりとしたバッキングに重みを感じます。
加えて、このセクションだけ、暗い雰囲気が強まっています。
『C#』はセカンダリードミナントですが、F#mをトニックと見立てるために、平行短調であるF#mキーの雰囲気を強めているのです。
Cメロ後半
1~4小節目【Bm7~F#m】
ここもBメロやサビで出てきた王道進行が軸にありますが、若干違いがあります。
『Bm7』は、DM7の代理となるコードで同じサブドミナントの機能があります。D→Eの動きよりもベースの跳躍があるため、広がりがあり気持ちの上がるような雰囲気になります。
『C#7』と、その展開系『C#7/E#』は、F#mを一時的なトニックと見立てたセカンダリードミナントです。
6小節目【B7】
『B7』は、Eを一時的なトニックと見立てたセカンダリードミナントです。
Eは、Aメジャーキー本来のドミナントですので、「ドミナントに対するセカンダリードミナント」と表現することができ、ダブルドミナントと言われたりします。
9~10 小節目【Fsus4 | F】
このコードがラスサビのキー(D♭)へ転調するきっかけとなる進行です。
強引に、ドミナントEを半音持ち上げ、D♭キーのドミナントとしています。
ドミナントのsus4コードは、サブドミナントの役割を果たします。
そのため『Fsus4 →F』の動きは、『サブドミナント→ドミナント』の動きを作り、転調の違和感を緩和しています。
まとめ
音数の少なさから単純な楽曲かと思いきや、冬の雰囲気や煌びやかさ、そして起承転結を意識し考えられたコード進行となっていました。
冬を彩る、キラキラと美しいラブソングでした。
なんといっても、Da-iCEの甘くハイトーンな歌声に、二枚目な主人公像をイメージせずにはいられません。