音楽でいう「キー」とは?軸になるスケールと中心の音がキーを作る

執筆者: エルエミュージックセオリーでは、楽典や音楽理論の分野に関わる情報を発信しています。これらは、楽曲の分析や作曲、演奏をする上で必要な知識で、より深く音楽を理解し解釈することができます。音楽学校をでたライターにより執筆を行い、適宜情報を修正しながら運営してまいります。

カラオケや、バンドでの演奏の際、たびたび「キー」という言葉を耳にします。
「キーを下げる」「この曲はキーCだ」のように。

なんとなく使っているこのキーという言葉。実際はどういった意味なのでしょう。
あなたはそれを答えることができますか?

音楽のキー(調)とは

音楽におけるキー(調)とは、その曲がどんなスケール(音階)を軸に作られているかを示したものです。
加えて、スケールの主音が、その曲の中心にある音ということまで伝えています

例えば、Cメジャーキーの楽曲は、Cメジャースケールを軸に作られています。
そして、C音が中心にあるため、C音に「落ち着き」を感じます。

下の音源はスピッツのそらも飛べるはずのイントロです。
Cメジャースケール(C・D・E・F・G・A・Bで構成されるスケール)を軸に作られた、Cメジャーキーの楽曲であり、最後のC音やCコードで落ち着いた感と、終わった様な雰囲気を感じられるかと思います。

空も飛べるはずのイントロ楽譜

えるるん
キー(key)は英語、日本後では調と言うよ!
例えば、「Cメジャーキー」は「ハ長調」と同じ。
日本でクラシック音楽について学ぶ際は、「調」を使うよ。

調と音階の違いは「中心の音」

スケール(音階)という言葉は「単なる音の並び」を表します。
対して、キー(調)という言葉は「その楽曲がどんな音階を軸に作られているか。また、どの音が中心にあるのか」を表します。

スケールとキーの違い

中心の音(中心音)は、一番「落ち着く」と感じる音です。
フレーズの最後になれば「曲が終わった様な雰囲気」を感じます。

下の譜例、赤い音が中心音(主音)です。

Cメジャーキーの譜例

えるるん
上例のC音の様に、音楽を聴くと無意識に中心音を感じられるよね。
いくつかの音が、僕らに中心音を感じさせる作用をトーナリティ(調性)と呼ぶよ!

スケール以外の音も使われる

Cメジャーキーは、Cメジャースケールを軸に作られています。
そのため、Cメジャーキーの楽曲は、ほとんどCメジャースケールに含まれる音でできています。

ただし、Cメジャースケールに含まれる音しか使われない・使ってはいけないというわけではありません。

Cメジャーキーでも、Cメジャースケール以外の音を使っても良いのです。
その音階に含まれない音は、驚きや緊張感をもたらし楽曲を彩ります。

えるるん
ただし、そのキーのスケールに含まれない音は適度に扱わないと「中心音」がどこにあるか分からなくなってしまう。言い換えると、調性がなくなってしまうんだ。
下の例は、Back numberの高音の花子さんのサビ部分です。
この曲はAメジャーキーですので、Aメジャースケールの音(A,B,C#,D,E,F#,G#)中心ですが、一時Gナチュラルが使われています。
高嶺の花子さんに使われている非和声音
本来G#であるべき音が、半音下がってGになっていて「もどかしい」様を感じます。

カラオケでキーを下げると音がさがる理由

カラオケに行くと、「キーを下げる」「上げる」ボタンがあります。
ここで、キーを下げたら音が全体的に低くなった様に感じ、あげれば高くなった様に感じます。

例えば、Cメジャーキーの楽曲でキーを一つ下げた場合で考えてみましょう。
キーを一つ下げるということは、半音下げるということなので、CメジャーキーはBメジャーキーになります。

Bメジャーキーは、B音を中心としたBメジャースケールを軸に形成されます。
音の並びは『B・C#・D#・E・F#・G#・A#』となりますので、Cメジャースケールの音が全て半音下がったものとなります。
中心が下にずれるので、スケール以外の音も同じ様に半音下がります。

キーCからキーBに移調するイメージ画像

調を下げるということは、「中心音を下げる」ということであり、中心音を下げるということは「周りの音も同じだけ下がる」ということになります。
そのため、キーを下げるボタン1回を押すと、半音下のキーになり、全体の音も半音下がり、

メジャーキーとマイナーキー

先ほどの例のキーCは厳密には、Cメジャーキーと言います。ダイアトニックスケールからも明るい響きを感じますよね。

キーには、他にマイナーキーが存在します。メジャーとは反対に暗い雰囲気だったり、クールでかっこいい雰囲気があります。
例えば、米津玄師さんの『Lemon』はキーG#mの楽曲です。
冒頭から暗い雰囲気が漂っていますね。

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並行長と同主調

キーにはそれぞれ近しいキーが存在します。

同主調

あるキーと主音を同じとするキーのことを同主調の関係と言います。

例えば、CメジャーキーとCマイナーキーは同主調の関係といえます。
覚えやすいですね!

平行調

あるキーと同じダイアトニックスケールを持つキーを並行長と言います。

キーCは『ドレミファソラシ』で構成されていますが、Aマイナーキーも順番こそ変わりますが『ラシドレミファソ』の同じ音で構成されています。

ここでは、メジャーキーの1.5音(全音1つと半音1個分)下が同主調のマイナーキー。
マイナーキーの1.5音上が同主調のメジャーキーとだけ覚えておきましょう。

ダイアトニックスケールについては下の記事をご覧ください。

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キーと転調

キーのことを調と呼びますが、曲中に調を変えることを転調と呼びます。

先ほど解説した同主調や平行調の関係も、転調に応用することができます。
定番のものでは、Aメロはメジャーキーで、Bメロは同主調のマイナーキーに転調するものです。

king gnuの白日を見てみると、AメロはキーD♭で、Bメロから暗い雰囲気のB♭キーに転調したように感じますね。

もっと極端な例では、CメロではキーG♭に、ラストサビでは半音B♭から半音上のBマイナーキーに転調しています。
ラストサビで半音上に転調するのは、盛り上がりを高める定番のテクニックですね。

まとめ

キーはその曲を構成する中心の音を決めるルールのようなものです。

キーという概念を知ることで、その曲がどのように作られているのかを表面的に知ることができます。
筆者はギターを弾きますが、キーを知らずに演奏するのと、したうえで演奏するのには雲泥の差がでます。

楽器をひく方、歌を歌うかた。いずれにしてもキーを知ることは必要になります。
音楽理論の入口的存在といえますね!!