【Don’t say “lazy”/放課後ティータイム】コード進行と分析

今回のコード・楽曲分析は、放課後ティータイムの『Don’t say “lazy”』です。
この曲に溢れるかっこよさ・クールさの秘密を紐解いていきましょう。
ここからの内容は、er-music編集部の独自の見解になります。 読者様との解釈に相違がある場合も、考え方の一例、また娯楽の一環としてご覧ください。 また、ダイアトニックコードの理解があるとより楽しめるかと思います。 >>ダイアトニックコードについて

全体を通して

駆け抜けるようなテンポ感と、歪んだ音色、力強いリズムセクションなどロックな要素がふんだんです。
また女性ボーカルもあって、暑苦しくなくクールな印象です。

コード進行から、各演奏とてもシンプルでバンドでコピーしやすい楽曲です。
これも狙いか、実際にバンドでコピーする学生が非常に多く増え、社会的なバンドブームとなりました。

最近は、傾向としてブラックミュージックやヒップホップを取り込んだ楽曲が人気で、コードが複雑だったり、電子音を必要としたりします。

Don’t say “lazy”の様に、真似しやすい楽曲にするのも戦略の一つですね。

とはいえ、曲が「良い」「かっこいい」と思われるのは前提条件です。
今回は、シンプルさに潜むかっこよさや工夫を見つけていきましょう。

※分析記号はGをI、EmをVImとして表記しています。

頭サビ

サビ楽譜1

サビ楽譜2

※手前に1小節のドラムカウウト・フィルがあります。

1〜4小節目【C→D→Bm→Em】

『C→D→Bm→Em』の進行は王道進行と呼ばれる、超定番の進行です。
多くの人が、知らず知らずに同じような進行を何度も聞いているので、親やすさがあります。

王道進行からは、すこし切ない雰囲気を感じます。「決して明るくない」ということです。
この曲のクールな印象にもマッチしています。

この部分の解釈
『C→D』の後に『G』が来ると曲は落ち着きます。
Gに進まずに『Bm』へと進行することで、曲の疾走感が落ちません。
また、『Em』はトニックであるため、ここでも落ち着きが生まれます。
ただしここでは、『Em』の尺がたった2拍だけで、『D』へと進行します。
疾走感を落とさないために、落ち着きの与えるコードに進行しなかったり、尺を短くする工夫がされています。

7〜8小節目【Em】

8小節目は、サビの前半と後半を区切るポイントですので、トニックであるEmを2小節鳴らしてひと段落感を作っています。

13〜14小節目【Am→Bm】

ここも『C→D』と進行しても違和感ありませんが、『Am→Bm』としています。

コード進行にはそれぞれ機能(役割)があり、サブドミナントという機能から、ドミナントという機能、トニックという機能のコード順で進行すると、最後に強い落ち着きを感じさせます。

キーEmの純粋なサブドミナントはAm、ドミナントはBmですので、これまでの進行よりも、よりトニックであるEmを引き立てています。

えるるん
ここだけEmの暗い感じが増している気がする!
キーEmが持つ印象を強めているんだね!
この部分の解釈
1〜4小節で説明した王道進行は、「明るくはないですが、暗すぎることもない進行です」。
なので、王道進行を聞いただけでは、明るいキーGとするべきか、暗いキーEm(平行調の関係)とするべきか判断しにくくあります。
8小節目で(Emが2小節続いた部分)キーEmであるイメージはつきますが断言はできません。
サビの最後で、『Am→Bm→Em』と進行することで、キーEmである確信を持てます。
単純な表現ですが、この曲が「暗い」のか「明るい」のかを明示するために、重要な進行なのです。

間奏

間奏楽譜

トニックであるEmが中心ですが、偶数小節の4拍目に『F』が使われています。

Fは、キーEmのダイアトニックコード上には出てきません。
解釈は以下2通りです。

モーダルインターチェンジは、モードという概念を用いて、ダイアトニックにない音を使用するテクニックです。
普段私たちは、長調(メジャーキー)か短調(マイナーキー)で曲を分類しますが、それとは異なる分類方法がモードです。

モードという概念の中では、キーEmは、Eエオリアンモードと言えます。
「モーダルインターチェンジによって、一時的にEフリジアンモードにモードチェンジして、『F』というコードを持ってきた」という解釈です。

えるるん
フリジアンは暗い雰囲気がとても強いモード
だから、Fを使うとダークな雰囲気が漂うね。

次に、『F』を裏コードと捉える解釈です。
Emに対するドミナントは、B(B7)で、Bから増4度先のルートをもつF(F7)をB7の裏コードと呼びます。
裏コードは、ドミナントの代理としての役割があるため、FもBのようにEmへ進もうとします。

ノンダイアトニックで、かつEmの半音上ですので、非常に緊張感のある響きをして、Emへ早く戻りたくさせます。

この部分の解釈
ここでは、「Emへどう進行させるか」というより、「緊張感がある外れたサウンドを出したい」という意思の方が強いように感じます。
重点が、「Emへ戻ること」ではなくて、「その外れた音自体」にあるということです。
であれば、ドミナントの代理となる裏コードという解釈ではなく、モーダルインターチェンジによって持ってきたコード捉える方が自然に思います。

Aメロ

Aメロ楽譜

メロディーは8部音符中心で、スピード感があります。
メロディー部分のコードは『Em』一発で、楽器の音数も減っています。

演奏よりも、ボーカルを聴かせることに重きを置いているのでしょうか。
ただし、メロディーに使われる音は限定的で、どちらかというと単調です。

そのため、メロディーラインよりももっと、歌詞とか歌い方に注目しやすくなります。
ここで、主役であるボーカルのクールさを固めているように感じます。

Bメロ

Bメロ楽譜

1〜4小節目【C→D→Bm→Em】

冒頭のサビの1〜4小節と全く同じ王道進行です。

5〜8小節目【C→D→Em→D】

ここもサビと似た進行ですが、サビでは7〜8小節が『Em』だけでした。

ここでは、『Em→D』として、曲の落ち着きを弱めています。
サビと比較して聞いてみると、違いがわかりやすいかと思います。

えるるん
Bメロは「たんたんと」進んでいくイメージ。
ここに大きな「落ち着き」「一段落」は必要ないんだね。

13〜16小節目【Am→A#dim→B7】

ここまで見てこなかったコード進行ですね。
dimなどが入ってくると難しく見えがちですが、この進行の元は『Am→Bm』にあります。

『Am→Bm』を土台に考えていきましょう。

A#dim

まず、『A#dim』は二つのコードをつなぐ潤滑剤のような役割で入れられているコードです。
このように全音間隔の2つのコード間にあるディミニッシュコードをパッシングディミニッシュと言います。

B7

先ほど、Bmとして登場していたコードがB7になっています。
これは、次のEmへの進行感を高めるために、ドミナントセブンスコードに変えたものです。

トニックの5度上(この場合のB)のセブンスコード(この場合B7)は、不安定な響きのコードで、安心を求めトニックへと強い進行感、推進力を生みます。

この部分の解釈
B7がなると、次にEmが来ることを強くイメージさせるので、Emの暗い雰囲気を濃く感じます。
また、パシングディミニッシュA#dimは、B7に対するドミナントのような役割を果たします。
そのため、暗い雰囲気を強くする『B7』、そのB7の雰囲気を強くする『A#dim』というような関係性を生みます。
結果、Emへ進む期待感が増しに増していき、サビへ突入していきます。

まとめ

コードを一見した時点では「シンプルな曲」と思ってましたが、なんとも語りどころが多い楽曲でした。
語れるということは、それだけ考て作られている楽曲なのでしょう。(直感で作られているかもしれませんが…)

ただ、当時あれほどのブームを読んだ理由がわかった気がしました。

 

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