「ジャジー」「複雑なコード進行だ」と感じる曲には、裏コードが使われているかもしれません。
今回は、おしゃれで大人的な楽曲でよくみられる「裏コード」を解説していきます。
裏コードとは
裏コードとは、トニックへと進行するドミナントセブンスの代わりになるコードです。具体的に、ドミナントセブンスから見て増4度上のセブンスコードが裏コードに当たります。トニックから見ると♭II7になるため、半音下降で解決できるなどの特徴があります。
ドミナントがトニックへ進もうとする力を持つ様に、裏コードにも同じトニックに進もうとする力があります。
例えば、キーCのドミナント『G7』の裏コードは『D♭7』であり、『G7⇒C』の代わりに『D♭7⇒C』と進行できます。
以下で聴き比べてみましょう。
▼裏コードを使っていない進行(IIm7→V7→C)
▼裏コードを使った進行(IIm7→♭II7→C)
ドミナントセブンスの代わりになる理由
ドミナントセブンスには、トニックへ進もうとする力があります。
これは、ドミナントセブンスの不安定な響きによるもので、構成音に含まれるトライトーンが関係しています。
裏コードは、ドミナントセブンスと同じトライトーンを持つので、同じコード(トニック)へ進もうとする力があるのです。
例えば、Cメジャーキーのドミナントは『G7』、G7の裏コードはD♭7となりますが、トライトーンである「ファ」と「シ」が共通しています。

裏コードの特徴・聴こえ方
裏コードを使うとどんな効果があるのでしょうか。
またどの様に肥えるのでしょうか。
裏コードの特徴以下2つを紹介します。
- トニックへ半音で解決できる
- 大人っぽくジャジーなコード進行になる
トニックへ半音で解決できる
G7からCへの進行に比べると解決した感覚は弱まりますが、トニックの半音上からアプローチすることとなるのでスムーズな進行になります。
Cトニックへ解決するDm7→G7→Cの進行を例に考えていましょう。
ベースからDから半音で下行する進行になっていますね。
大人っぽくジャジーなコード進行になる
裏コードは、特にジャズで頻繁に使われます。
大人っぽさのある楽曲は、クロマチックなアプローチや、テンションコードが重要です。
G7とD♭7は全く違うコードですが、ある意味ではG7のテンションコード(ルート省略型)とも言えます。
それぞれの構成音を見てみましょう。
コード | 構成音 |
---|---|
G7 | ソ・シ・レ・ファ |
D♭7 | レ♭・ファ・ラ・ド♭(シ) |
共通するシとファはトライトーンです。
D♭7のレ♭は、G7から見た#11th、ラは9thです。
そのため、G7(9,#11)に近しい響きがします。
こうしたテンション感もあって、奥行のあるジャジーなコードに聞こえます。
セカンダリードミナントも裏コードにできる
セカンダリードミナントも裏コードにできます。
本来のトニック以外のコードを、一時的にトニックとみたてた際のドミナントを、セカンダリードミナントといいます。
例えば、Cメジャーキーで考えてみましょう。『A7→Dm』という進行は、『A7』がセカンダリードミナントになります。
セカンダリードミナントを裏コードにすると、『A7』の増4度上、あるいは『Dm』の半音上の『E♭7』になります。
コード進行は『E♭7→Dm』となります。
ドミナント(セカンダリードミナント含む)と裏コードの一覧表
トニック | ドミナント | 裏コード |
---|---|---|
C(I) | G7(V7) | D♭7(♭II7) |
Dm(IIm) | A7(VI7) | E♭7(♭III7) |
Em(IIIm) | B7(VII7) | F7(IV7) |
F(IV) | C7(I7) | G♭7(♭V7) |
G(V) | D7(II7) | A♭7(♭VI7) |
Am(VIm) | E7(III7) | B♭7(♭VII7) |
裏コードのツーファイブ化
ここまでご覧になられた方は、『Dm→G7→C』のようなツーファイブ進行を、『Dm→D♭7→C』のように裏コードを織り交ぜた進行は納得できるかと思います。
次は、さらに発展させて、「裏コードをV7とした際のツーファイブ進行」を作ってみましょう。
『Dm7→D♭7→CM7』の進行が、さらに『A♭m7→D♭7→CM7』になりました。

裏コードが使われている楽曲
裏コードが使われる楽曲をいくつか紹介していきます。
実際に曲で聴いて雰囲気を感じ取っていきましょう。
- エイリアンズ/KIRINJI
- きらり/藤井
エイリアンズ/KIRINJI
少し古い曲ですが、絶妙に配置された裏コードが、少し怪しげな世界観の演出に一役買っています。
イントロ7〜8小節目のE9が裏コードです。
Dm7の半音上のコードで、Aメロの1小節目でD#m7に着地します。
きらり/藤井風
藤井風さんの『きらり』という楽曲でも裏コードが使われていますので確認していきましょう。
Aメロの『F#m7→F7→Em7』のF7がまさに裏コードです。
Emに進むセカンダリードミナント『B7』の裏コードととらえることができます。

裏コードのスケール・テンション
裏コードは、通常のドミナントにはない、ノンダイアトニックな響きが重要になります。
そのため、テンションを決める際も元のスケールから考えず、単にコードトーンの全音上を使用可能テンションとするのが一般的です。
この考えによって、裏コードのテンションは9th、#11th、13thとなります。
また、このテンションを含むリディアン♭7がよく使われます。
ただし、このテンションの付け方は、あくまでも裏コードのノンダイアトニックな響きを強めるためのものです。
単純に#9や♭9などを扱う場合もあります。
まとめ
一見難しそうに見える『裏コード』ですが、使ってみるのは非常に簡単で、行きたいコードの半音上のセブンスコードを裏コードととらえることができます。
コード進行を分析するうえでも、よくわからないセブンスコードが出てきたら、次に半音下に進んでいないか疑ってみましょう!
裏コードは半音上からアプローチすることができるコードですが、パッシングディミニッシュを使えば半音下からもアプローチすることもできます。
是非ご活用ください。
【Q&A】記事のおさらい