テンションコードとは?利用できるテンションと定番の使い方を解説

執筆者: エルエミュージックセオリーでは、楽典や音楽理論の分野に関わる情報を発信しています。これらは、楽曲の分析や作曲、演奏をする上で必要な知識で、より深く音楽を理解し解釈することができます。音楽学校をでたライターにより執筆を行い、適宜情報を修正しながら運営してまいります。

よく使われるコードは単純な三和音や四和音のコードですが、時に下の様なコードが用いられます。

テンションコードの例

上のコードはいずれも四和音のコードにテンションという音が追加されたテンションコードです。

この記事では、テンションコードの仕組みやルールについて解説します。
また、ヒット曲での使用例まで紹介しています。

テンションコードとは

テンションコードとは、四和音(セブンスコード)の上に、コードトーン以外の音(テンション)を重ねたコードです。
5つ以上の音が重なるため、奥深い響きになりますが、『テンション(緊張という意味)』の名の通り緊張感のあるコードとなります。

例えば、以下の様なコードをテンションコードと言います。

テンションコードの例

9や13という数字は、コードのルートとの音程を表しています。
9とあればルートから長9度、13とあればルートから長13度の音を重ねるという指示になります。

コードトーンとテンションノート

えるるん
テンションは「セブンスコードに音を重ねる」という考え方だから、7よりも大きい数字で表されるよ。
例えばCM7(9)は9度の音が付加されているけど、これって実質Cから見た2度の音(D)だよね。
11は4度13は6度と同じだよ!

テンションコードの呼び方・読み方

テンションコードは、コードネームにそのままテンションを繋げて読みます。
いくつかの例を見てみましょう。

  • CM7(9)は「しーめじゃーせぶんすないんす
  • Dm7(9)は「でぃーまいなーせぶんすないんす
  • Em7(11)は「いーまいなーせぶんいれぶんす
  • FM7(9,11)は「えふめじゃーせぶんすないんすいれぶんす
  • G7(9,13)は「じーせぶんすふらっとないんすさーてぃーんす
  • Am7(9,11,♭13)は「えーまいなーせぶんすないんすいれぶんすふらっとさーてぃーんす
  • Bm7-5(♭9)は「びーまいなーせぶんすふらっとふぁいぶふらっとないんす

また、省力して書かれる・読まれることもあります。

省略する際は、『7(セブンス)』を省略します。
いかにそれぞれのパターンを紹介します。

  • 『CM7(9)』の場合、『CM9(しーめじゃーないんす)』
  • 『Em7(11)』の場合、『Em11(いーまいなーいれぶんす)』
  • 『G7(13)』の場合、『G13(じーさーてぃーんす)』
  • 『Am7sus4(9)』の場合、『Am9sus4(えーまいなーないんすさすふぉー)』
  • 『Bm7-5(♭9)』の場合『Bm9-5( びーまいなーないんすふらっとふぁいぶ)』

sus4コードや、-5コードなどは、セブンスの位置にテンションがくるため、後に着くはずのテンションが真ん中に現れる形となっています。

そのため、「セブンスを省略する」というよりは、「セブンスの位置にテンションを置き換える」と考えると間違えにくいでしょう。

テンションは複数使える

例えば、CM7に重ねられるテンションは一つだけではありません。
CM7(9)だけでなく、CM7(9,11,13)とテンションを兼ねていくことができます。

もちろん、CM7(11,13)として、9thを入れないことも可能です。

ちなみに
9,11,13を同時につけると、元の四和音に加えて3つの音が重なるため、計7つの和音となります。
これは、ちょうどそのキーのダイアトニックスケールを全て鳴らしていることになります。
スケールとテンションの関係
後術するノンダイアトニックなテンションノートがある場合はその限りではありません。

テンションコードの種類

コードにつくテンションは、大きく分けると『9th,11th,13th』です。
加えて、♭や#がつくため、正確には以下の7つです。

9th系♭9(短9度)9(長9度)#9(増2度)
11th系11(完全11度)#11(増11度)
13th系♭13(短6度)13(長6度)

11th系には♭がなく、13th系には#がありません。
これは、♭11thはコードトーンのM3と同じ音で、#13はコードトーンのm7と同じためです。
テンションは、コードトーン以外の音ですので、これらは除外されます。

#9thも、コードトーンのm3と同じですが、このテンションはオルタードテンションと呼ばれる特殊なテンションですので、場合によって使われます。
オルタードテンションに関しては次の章で触れています。

えるるん
これらのテンションが、次の章で解説するルールに沿って任意に付け加えられるよ。
無論、作曲する上で必ずルールを意識する必要はないよ!

テンションコードのルール

楽曲を作成する際は、音楽理論を意識しすぎることはありません。
ここでは『テンションコードのルール』という章を立てていますが、必ず遵守すべきものでないことを理解してお読みください。


テンションコードは、付け方によっては違和感が強すぎたり、コード進行の良さを邪魔したりします。

ここでは、ひどい違和感・気持ち悪さを与えず、コード進行を邪魔しないテンション(アヴェイラブルテンション)をつけるルールを紹介していきます。

テンションのルール

  • (楽曲キーの)ダイアトニックスケールの音を使う
  • コードトーンの全音上の音を使う
  • ドミナントセブンスの場合オルタードテンションを使える
  • オルタードテンションを使う際は、それ以外のテンションを使わない

本題に入る前に、上記ルールから外れた悪い例と、良い例を聴き比べてみましょう。

▼悪い例(ルール無視)

悪いテンションコードの例

めちゃくちゃに濁った

▼良い例

良いテンションコードの例

 

1.(楽曲キーの)ダイアトニックスケールの音を使う

キーがには、それを構成するダイアトニックスケールがあります。
Cメジャーキーの場合は、『C,D,E,F,G,A,B』がダイアトニックスケールです。ちょうどピアノの全白鍵にあたります。

CメジャーキーのIM7(CM7)につけられるテンションを考えてみましょう。
黒鍵にあたる♭9(D♭)や#9(D#)などは使えません。

Cメジャーキーのアベイラブルテンション

この時点では、9th(D),11th(F),13th(A)の音が候補として上がることがわかります。

同様に、Cメジャーキーのダイアトニックコードは全て、白鍵内(Cダイアトニックスケール内)の音がテンションとして利用できます。

2.コードトーンの全音上の音を使う

自然に聞こえるテンションコードを作るには、重ねるテンションはコードトーンの全音上(長9度)の音を使います。

CM7のコードトーンは、C,E,G,Bです。
先ほど、CメジャーキーのIM7であるCM7には、「9th(D),11th(F),13th(A)の音が候補として上がる」と言いましたが、ルール2を加味するとどうでしょう。

以下でそれぞれ考えてみましょう。

  • 9th(D):コードトーンCに対して全音上だから○
  • 11th(F):コードトーンEに対して半音上だから×
  • 13th(A):コードトーンGに対して全音上だから○

Cメジャーキーのアベイラブルテンション2

11th(F)は、コードトーンEの半音となるため、使用不可と判断できます。

3.ドミナントセブンスの場合オルタードテンションを使える

ドミナントセブンスの場合は例外的に、オルタードテンションを使うことができます。

オルタードテンションとは、コードルートに対して『♭9,#9,#11,♭13』のテンションです。
それ以外のテンションはナチュラルテンションと呼びます。

CメジャーキーのドミナントにあたるG7で使えるテンションを考えてみましょう。
なお、ナチュラルテンションは、ルール1の通りキーのダイアトニックスケールに含まれ、ルール2の通りコードトーンの全音上の必要があります。

ナチュラルテンション

  • 9th:A
  • 11th:C(ルール2により使用不可)
  • 13th:E

オルタードテンション

  • ♭9th:A♭
  • #9th:A#
  • #11th:C#
  • ♭13th:E♭

以上、ナチュラル11th以外の2つのナチュラルテンションと、4つのオルタードテンションが使用できます。

4.オルタードテンションを使う際は、それ以外のテンションを使わない

オルタードテンションを使う時は、前述のナチュラルテンション(オルタードテンション以外のテンション)は使いません。

そのため、ドミナントセブンスが出てきた際は、オルタードテンションか、ナチュラルテンションのどちらかを選んで使います。

 

add9やsus4コードとの違い

テンションコードの様に、コードトーン以外の音(非和声音)を使うコードとしてadd9sus4があります。
最後に、テンションコードとの違いを解説します。

add9コード

テンションコードは、四和音のコードにコードトーン以外の音を重ねた和音です。

対してadd9コードは、三和音のコードに9thの音を重ねたコードです。

えるるん
『add』は、追加する、付け加えるといった意味!

例えばCadd9は、コードトーンC,E,Gに加えて9th(長9度)にあたるDを加えた、C,D,E,Gのコードとなります。

Cadd9コード

sus4コード

sus4コードは、コードトーンの3度を完全4度に吊り上げたコードです。

えるるん
『sus』は、吊り上げるという意味!
addやテンションの様に音を追加せず、コードトーンの3度を4度に変化させるコードだよ。
例えばCsus4は、コードトーンC,E,Gのうち、Eを完全4度のFに吊り上げた、C,F,Gのコードとなります。
Csus4コード
sus4の場合は、三和音でも四和音でも利用できるので、C7sus4や、Cm7sus4といったコードも生まれます。