ピボットコードとは?あの曲のスムーズな転調にも使用されている

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曲の解説をするうえで、転調部分で『ピボットコード』といったワードを使う機会があります。
ピボットコードを知り、使うことは、スムーズな転調を行う上で重要となるテクニックです。

この記事では、ピボットコードの解説と、実際の使用例を紹介いたします。

ちなみに
「ピボット」は「回転軸」という意味合いがあります。
他にも「方向転換」や「路線変更」といった意味で使われる言葉です。
この言葉からも転調が関与していることがイメージできるかと思います。

ピボットコードとは

ピボットコードとは、転調前のキーと転調後のキー、どちらのコードとも解釈できるコードです。
2つのキーで重なりあっていて、転調する際のきっかけとなるコードです。

最後のサビなどでよく見られる、半音や全音上への強引な転調(ダイレクトモジュレーション)に比べて、転調をスムーズに感じさせます。

例えば、以下のコード進行では、キーCからキーDへ転調する際に、ピボットコード(A、G)が使われています。

ピボットコードの譜例

2小節3拍目のAは、キーCのVI(ピカルディ終止)といえますが、キーDのVとも言えます。
3小節1拍目のGは、キーのCのVといえますが、キーDのIVとも言えます。

このコードにより、一時的に2つの調が混ざり合っているかの様に見えますね。

ピボットコードが使われている楽曲例

転調において、ピボットコードがどの様に使われているのか、実際のヒットソングから見ていきましょう。

  • カメレオン/King Gnu
  • きらり/藤井風

カメレオン/King Gnu

この曲のキーはCですが、間奏はDmへ転調しています。
その間奏の後におとずれるAメロで、キーDmとキーC両方を感じるピボットコードが現れます。

カメレオン楽譜

実際このAメロにおいては、たった2小節だけで転調したとも考えにくいですし、最初からキーCであったと言われても問題なく解釈できます。

ここは、DmキーからCメジャーキーに転調したというよりは、最初2小節だけDドリアンモード(レラティブモード)で作られているイメージです。

きらり/藤井風

AメロからBメロへ移り変わる部分で、キーDからキーFへ転調しています。

下の楽譜5小節目の『Gm7』は、キーDのサブドミナントマイナーとも捉えられますが、キーFのIIm7としても機能しています。

きらりの楽譜