【きらり/藤井風】コード進行と分析

今回は、藤井風さんの『きらり』を分析していきます。

『ホンダ ヴェゼル』のCMソングに起用された楽曲です。
曲の爽快感と楽しくも涼し気な映像が最高にマッチしていて、青春のようなきらめきが感じられました。

ここからの内容は、er-music編集部の独自の見解になります。 読者様との解釈に相違がある場合も、考え方の一例、娯楽の一環としてご覧ください。 また、ダイアトニックコードの理解があるとより楽しめるかと思います。 ダイアトニックコードとは?

全体を通して

4つ打ちで電子音のサウンド感が特徴的です。
ラスサビ前にはビルドアップもあり、EDMチックなアレンジも見られます。
キャッチ―なメロディーではあるものも、ディスコミュージックの要素も詰め込まれているダンサブルな一曲ですね。

それでいて緩やかに前へ前へと進んでいく、希望的で爽やかな疾走感があります。
強進行ドミナントモーションが多用されているためコード進行からも強い推進力を感じることができます。

藤井風さんでは毎度のことですが、使われているコード進行が複雑で、表現に対する細部までのこだわりを感じさせられますね。

えるるん
疾走感を感じる16分の4つ打ちビートにコードの推進力が、相まってドライブしているみたいな爽快感があるよねドライブしてるみたいな速度感を感じるね!
他の車のCMでも、よく4つ打ちでディスコミュージックチックな楽曲が使われているよ!

Aメロ

きらりAメロ

2小節4拍目

2小節4拍目のF7が通常のダイアトニックにないコード(ノンダイアトニックコード)になっていますね。

順当にいけば、『GM7→F#m7→Em7 →』と行く流れですが、Em7 の前に半音上のセブンスコード(F7)が入っています。
これは、Em7につながる裏コードと言われるもので、半音上のセブンスコーであることが特徴です。

このコードがもしB7であったら、Em7へとドミナントモーションするドミナントコードととらえられますよね。
F7はB7に重要なトライトーンを持つコードなので、代理(裏コード)として使うことができます。

この部分の解釈

曲を通して「前に前に」と進んで行く雰囲気が感じられます。
BPMなどからも「軽快で弾むような早歩き」、またはCMのような「風のここちよいスムースなドライブ」をしているような速度感を感じました。
ここでは裏コードにより、ベースラインが半音で下降していく進行になっていますね。
速度感であったり軽快さを損ねず、よりスムーズな進行になったように感じました。

Bメロ

きらりBメロ

Bメロ冒頭の『Gm7』は、キーDから見たらⅣm(サブドミナントマイナーにあたる)になります。
実はこのコードが起点となり、一時的にFメジャーキーに転調していると考えることができます。

こうした、もとのダイアトニックコードと転調先のダイアトニックコードで共通するコードをピボットコードと言います。
藤井風の楽曲でも頻繁に使われていて、『何なんw』や『燃えよ』でも見られますね。

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『Gm7』はFメジャーキーのⅡm7にあたり、Ⅴ7の『C9』、Ⅰの『FM7』とツーファイブワン進行をしていきます。

同様にBメロ7小節2泊目のGm7も、FメジャーキーでいうⅡm7、DメジャーキーでいうⅣm(サブドミナントマイナー)でここを起点に、通常のDメジャーキーへと戻っていきます。

この部分の解釈

こうした共通するコードをきっかけとして転調をする方法はJPOPでもよく使われるものなので、こういった解釈を覚えておしょう。
実は、藤井風の「何なんw」でもBメロで同様の転調方法を使用しています。

サビ

きらりサビ

2.3小節目

ここでは2回♭9コードが出現します。

♭9のコードはいずれも4度上のコードへとドミナントモーションするためのセカンダリードミナントになります。

この部分の解釈

セブンスコードに♭9のコードが付加されると、次のトニックコードに半音で動く音が一つ増えます。そのことにより強制力のある動きが生まれると解釈できます。
マイナーコードをトニックとする場合には♭9のテンションを使うことが多くあります。
サビの速度感を加速させる役割や、ジャジーで藤井風さんらしい複雑なサウンドの一つのポイントとなっているように感じます。

4小節目(G♯7♭5)

ダイアトニックに存在しない『G♯7♭5』というコードが出てきました。

♭5を考えず、セブンスコードとして考えると、Aメロにも表れた裏コードであることがわかります。
(GM7にドミナントモーションするための半音上のセブンスコード)

次に、この裏コードの本来の形は、GM7の5度下の『C7』です。
ここでC7にベース音G♯を加えると、ちょうど『G♯7♭5』になります。

この部分の解釈

通常の裏コードで♭5を使うことはあまりありませんが、ドミナントセブンスの響きを保ちつつ、ベースを半音下降としたい場合にこうしたコードが使われます。
とってもジャジーなコード進行で、使用例としてはジャズスタンダード曲である『Feel like makin’ love』が有名です。
通常のセブンスよりも特徴的で耳に残り、次のコードとの明確な境界線の役割を果たしてくれます。
この曲で言えば、「ここでサビ前半は終わりだよ、次後半だよと」明示されているように感じました。

6小節目(Gm7)

ここでは、GM7に続いてGm7が出てきますね。
このコードもBメロで登場した、サブドミナントマイナーで、4度から下降していく進行ではよく使われるパターンです。

この部分の解釈

パッと思いつくところで言うと、aikoさんもよく使う進行です。
例えば『カブトムシ』のサビ終わり部分「生涯 忘れる ことはないでしょう~」のではA♭M7→A♭m6の進行が使われています。
このコード進行からは、エンディング感や、俗にいうエモみなんかを感じられます。
サビ6小節目で入れることで、前半との差別化になり、「サビが終わるよー」って合図されているように感じます。

まとめ

とてもさわやかで疾走感があり、足ははずみ歩調が速くなってしまいそうな楽曲です。

歌い方のクールさや、速度感からも涼しさが感じられ、CMを見なくても青空のもと和気あいあいとドライブを楽しんでいる情景が思い浮かんでしまいそうです。

こういった雰囲気を感じ取れるのは、クリーンな楽器の音色や、強進行が多用され前に行く力が感じられるコード進行が関与しているのかもしれません。

 

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