「演奏・作曲・分析」いずれを行う場合も、ダイアトニックコードの理解は重要です。
逆に、ダイアトニックコードさえ理解すれば、きっと見える世界が変わってきます。
この記事の内容(クリック/タップで簡単解説)
- ダイアトニックコードの基本的な解説
- ダイアトニックコードとは、スケールの音を3度音程で重ねたコードです。
Cメジャースケール(C,D,E,F,G,A,B)なら、C,E,Gからなる『C』コードから始まり、『Dm』『Em』…。と合計7通りできます。
先ほどの例のように3音重ねる『3和音』と、4音重ねる『4和音』のダイアトニックコードを覚えておくと便利です。
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- マイナースケールからもダイアトニックコードができる
- ダイアトニックコードを説明する際、メジャースケールを中心に話されることも多いですが、マイナースケールでもダイアトニックコードは考えられます。
Cマイナースケール(C,D,E♭,F,G♭,A ♭,B♭)なら、C,D,E♭からなる『Cm』コードから始まり、『Dm-5』『E♭』…。と合計7通りできます。
なお、先ほどの例はナチュラルマイナースケールの例であり、ハーモニックマイナースケール、メロディックマイナースケールでもそれぞれ異なるダイアトニックコードが考えられます。
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- ダイアトニックコードを覚える必要性と、その役割
- ダイアトニックコードを適当に並べるだけでも、ある程度違和感のないコード進行が簡単にできます。
これは、スケールの音だけで規則的に作られたコード(ダイアトニックコード)だけを並べることで、コード進行に秩序が生まれているためです。
この違和感ない状態では、ある音に対して「落ち着く」「安定する」と感じるようになります。
そのよように感じられる状態を調性といいます。ダイアトニックコードは調性を作り出すために重要で、現代のポピュラー音楽の基礎となっています。
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ダイアトニックコードとは
ダイアトニックコードとは、スケールの音を3度音程で重ねたコードであり、スケール各音をそれぞを根音(ルート)とする7つのコードを指します。
Cメジャースケールで言えば、『C,E,G』を重ねたCメジャーコード、『D,F,A』を重ねたDマイナーコードなどがあげられます。
スケールの音だけで作られるため、ダイアトニックコードだけを並べると、とても自然なコード進行を簡単に作れます。
ダイアトニックコードは、楽曲のコード進行を形づくる基礎になりますが、それだけだと「凡庸だ」と感じる方もいます。
これをディグリー表記と言うよ。
コードの基本は、三和音(トライアド)と四和音(セブンス)であるため、ダイアトニックコードにおいても、それぞれを把握しておく必要があります。
以下では、三和音と四和音のダイアトニックコードをそれぞれ解説します。
三和音のダイアトニックコード
ダイアトニックスケールの音を一つ飛ばしで三つ重ねるとコード(三和音)ができます。
三つの音からなるので、トライアドコードとも言います。
Cメジャーキーで考えてみましょう。
ダイアトニックスケールはCメジャースケールです。
(コード上のローマ数字は、キーの主音からみて何番目のコード判別するために使います。)
四和音のダイアトニックコード
先ほどは三つの音を重ねてコードを作りましたが、四つの音を重ねたコード(四和音)も頻繁に使われます。
コードのルートから見て7度の音が加わるため、セブンスコードとも言います。
同じく、Cメジャーキーで考えていきましょう。
上図の要領で、それぞれの音をルートとするコードを作ると以下の様になります。
一方の四和音のコードは、奥深い響きになる反面、不協和音程が含まれて少し不安定な響きになるよ!
この記事をご覧の方は、すでにダイアトニックコードを何となく理解している方でしょうか。 ダイアトニックコードの解説は、まず『3和音』を前提に話されることが多く、その後『4和音』を覚えていく流れとなります。 今回は、4和音のダイアト[…]
ダイアトニックコード以外のコード
ダイアトニックコードは、キーを形作るダイアトニックスケールから生まれます。
ダイアトニックスケールの音のみで構成されているダイアトニックコードは、そのキーの中で自然に響き、違和感なく扱えます。
一方、ダイアトニックコードの対義となるのが、ノンダイアトニックコード。
ダイアトニックコード以外のコードは、全てノンダイアトニックコードといい、そのキーの中では違和感や緊張感を持った響きをします。
マイナーキーのダイアトニックコード
ここまでメジャーキーのダイアトニックコードを解説してきましたが、マイナーキーの場合のダイアトニックコードはどのようになるでしょうか。
メジャーキーの6番目から始めるとマイナーダイアトニックコードになる
CメジャーキーとAマイナーキーは、並行調と呼ばれる関係にあり、スケールの構成音が全く同じになります。
要は、『Cメジャースケール=Aマイナースケール』となり、『Cメジャーキーのダイアトニックコード=Aマイナーのダイアトニックコード』と言えます。
メジャーダイアトニックコードの6番目のコードから並べると、並行短調のダイアトニックコードとなるのです。
Cメジャーキーのダイアトニックコード
Ⅰ・Ⅱm・Ⅲm・Ⅳ・Ⅴ・Ⅵm・Ⅶm♭5
C・Dm・Em・F・G・Am・Bm♭5
Aマイナーキーのダイアトニックコード
Ⅰm・Ⅱm♭5・Ⅲ・Ⅳm・Ⅴm・Ⅵ・Ⅶ
Am・Bm♭5・C・Dm・Em・F・G
ただし、あるメジャーキーと平行調の関係にあるマイナーキーが同じコードを持つとは言え、コードの機能が異なる点には注意が必要です。
また、ダイアトニックコードの機能はこちらの一覧表でも確認できます。
詳しくは、3種類のマイナースケールとはをご覧下さい。
楽曲にダイアトニックコードは必要不可欠
記事冒頭で、『ダイアトニックコードの理解は重要』と言いましたが、なぜそこまで重要なのでしょうか?
ダイアトニックコードの重要性を考えていきましょう。
調性を作り出せる
普段私たちが耳にする音楽にはキー(調)がある、調性音楽と呼ばれるものです。
この調性とは、中心となっている音を感じられている状態を言います。
例えば、Cメジャースケールを単純に『ド→レ→ミ→ファ→ソ→ラ→シ→ド』と弾いてみると、ドの音で最も「落ち着き」や「終わった感」を感じられるかと思います。
これは、ド(C)が中心の音として感じられているからです。
調性を生み出す最も簡単な方法は、ダイアトニックスケールの音だけを使うことです。
ダイアトニックコード内の音をいくらか無作為に弾いても、最後に主音を鳴らせば、ほとんどその音を中心として認知できます。
同様にコードでも、ダイアトニックスケールから作られるダイアトニックコードだけを使っていれば、素人でも調性を容易に得られるでしょう。
違和感ないコード進行になる
今の時代、聴者の耳は皆肥えていますから、「なんか変な音」「変なコードだ」と無意識的に違和感を察知されます。
ダイアトニックコードは、キーをなすダイアトニックスケールの音だけを用いるため、大きく違和感を感じることはありません
逆に言うと、ダイアトニックスケール外の音をメロディーやコードに組み込むと、途端に違和感が生まれます。
▼ダイアトニックコードだけのコード進行
こちらはとても自然な進行です。
ちなみに、ビートルズのLet it beにも使われる有名なコード進行です。
▼ノンダイアトニックコード使ったコード進行
こちらは、聞き慣れないと違和感たっぷりな進行。
ダイアトニックコードにまとめるだけで、簡単に違和感なく安定感があるコードになることがわかるかと思います。
前項の調性に通ずる部分でもありますが、基本はダイアトニックコードで構築してみるとまとまりある楽曲を作りやすくなります。
ただし、ノンダイアトニックコードの持つ緊張感や不安定さは、使い方によっては素晴らしいスパイスとなります。
先ほどのコード進行も、よいメロディーが乗ればたちまち奥行きあるストーリーが広がっていくでしょう。
ノンダイアトニックコードについて詳しくは『ノンダイアトニックコードってどんなもの』をご覧ください。
各コードの役割(機能)
当然ですが、7つのダイアトニックコードはどれも違った響きを持っています。
これは音の高さだけの問題ではありません。
キーの主音からの音程差によって、コードごとに「安定してる」「落ち着いている」「不安定」「緊張感がある」などの性格を持つのです。
そうした性格から、ダイアトニックコードはそれぞれが曲の雰囲気を作る役割を持っているのです。
この役割をコードの機能といい、以下3つに分けられます。
- トニック
- サブドミナント
- ドミナント
それぞれの機能の解説と、どのダイアトニックコードが該当するのか解説します。
トニック
トニック(Tonic)は最も安定感があり、落ち着きを感じるコードです。
『T』と表したりします。
トニックに該当するのは『I』です。
『I』と構成音の近しい『IIIm』『VIm』もトニックの機能を持ちます。
サブドミナント
サブドミナント(subdominant)は、やや不安定だが、穏やかなコードです。
『SD』と表したりします。
サブドミナントに該当するのは『IV』です。
『IV』と構成音の近しい『IIm』サブドミナントの機能を持ちます。
ドミナント
ドミナント(dominant)は、不安定なコードで、緊張感があるコードです。この緊張感が、安定したトニックへと進みたい力を生み出します。
『D』と表したりします。
ドミナントに該当するのは『V』です。
『V』と構成音の近しい『VIIm-5』もドミナントの機能を持ちます。
実は『IIIm』は、その時々でトニックと捉えられたり、ドミナントと捉えられたりするんだ!
全キー対応のダイアトニックコード一覧表
3和音と4和音のダイアトニックコードを一覧表にしました。
緑がトニック、青がサブドミナント、赤がドミナントに色分けされています。
●・・・サブドミナント
●・・・ドミナント
【3和音】のダイアトニックコード一覧
コードの順番
I・IIm・IIIm・IV・V・VIm・VIIm-5
【4和音】のダイアトニックコード一覧
コードの順番
IM7・IIm7・IIIm7・IVM7・V7・VIm7・VIIm7-5
マイナーキーのダイアトニックコードは、平行長調のダイアトニックコードと同じです。(キーAmはキーCメジャーと同じ。)
ただし、コードの機能に違いがあります。
マイナーキーのダイアトニックコードも一覧で知りたい方は『ダイアトニックコード一覧』をご覧ください。
まとめ
ダイアトニックコードを理解すると、作曲の効率や精度だけではなく、演奏にもいい影響を及ぼします。
それぞれのキーで7つもコードがあると、面倒にも感じてしまいますが、
『メジャー・マイナー・マイナー・メジャー・メジャー・マイナー・マイナー♭5』
の並びさえ覚えてしまえば、どのキーでも簡単に導きだすことができます。
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