ドラマ『ミステリと言う勿れ』主題歌、king gnuのカメレオン。
原作を知らない身ではありますが、ドラマの演出が作り出す雰囲気にマッチした楽曲でした。
今回も、コード進行を中心に分析していきましょう。
全体を通して
透き通る優しい歌声から始まり(頭サビ)、それを打ち消すように暗い調に転調しています。
それもあってか、早い段階で優しさと切なさが入り混じった楽曲と感じました。
その点で言うと白日と近しいものがありますが、カメレオンは全体的に楽器にかけているモジュレーションが強く、幻想的で夢の中ような心地よさを感じます。
エレクトロな要素も強く、重厚感のあるシンセベースや、主のメロディー背後に聴こえるボコーダーを通したようかコーラスが特徴的です。
ラスサビでは、コーラスが前面に出くる壮大なサウンドで、ゴスペルのように力強く感動的な演出となっています。
頭サビ
1~2小節目【CM7 – FM7 | F/G – E7/G#】
『CM7 – FM7 | F/G』の動きを見てみると、意図的にGコードを使わっていません。
『F/G』として、ドミナント感を弱めて、落ち着いた進行にしています。
『E7/G#』はセカンダリードミナントで、次小節のAmを一時的なトニックと見立てドミナントコード化しています。
そっちでは、体が動いてしまうほどの激しい感情が読み取れたよ!
3小節目【Am – G – D/F#】
先ほどのセカンダリードミナント(E7/G#)によって暗さが際立っていますが、『Am』から下っていく進行で、落ち着きを感じます。
冒頭のメロディーのインパクトが強かったために、この下行する進行が「落ち着かせる」「熱を冷ます」ような役割として機能しているようです。
『D/F#』はGに対するセカンダリードミナントです。
キーCのドミナントであるGに対するセカンダリードミナントなので、ダブルドミナントと言われることもあります。
4小節目【Gsus4 – G】
ここでは、『Gsus4 – G』としましたが、 以降のCへと解決する同じような小節では、Gsus4一発としています。
(ここも本来Gsus4だけで表記するべきだったかもしれません…)
要は、この楽曲では解決力の弱いsus4コードでCに進む動きを頻繁に使っています。
GやG7を使う場合よりも、解決力はありませんが緊張感も薄まり、落ち着いた進行になります。
最初1~2小節でもそうでしたが、動きの強い進行を極力使わないようにしているようです。
間奏
このセクションは、キーがDm(F)へと転調しています。(分析記号はFをⅠとしています。)
Dmから下っていく暗い進行で、4小節目の『A7』はDmに対するセカンダリードミナントです。
『A7 – G/B – A7/C#』としていますが、フレーズ的に音が変化しているだけで、いずれも表現しているのはA7です。
Aメロ
1~2小節目【Dm – C – G/B】
『Dm – C – G/B』は、キーDmからキーにCに転調するポイントです。
キーCから見ると、『Dm』はⅡmなので、Dmキーのマイナートニックとも、キーCのⅡmとも考えることができます。
こうした、転調前と転調後のキーで共通するコードをピボットコードと言います。
ピボットコードを利用するとスムーズな転調をすることができますが、ここでは2小節まるまるピボットコードともいえるので、極めてスムーズな転調となっています。
落ちサビ
2コーラス目、落ちサビとなるセクションの楽譜です。
ほとんど、冒頭のサビと変わりはありませんが、ラスサビへの転調のきっかけとなるため、最後2小節だけが変化しています。
9~10小節目【Dm – C/E – Fm】
上行の進行で盛り上がっていくのを感じます。
『Fm』はサブドミナントがマイナーコードになったもので、サブドミナントマイナーと言います。
「寂しさとか」「恋しさとか」…
ラスサビ
ラスサビは、完全4度上のキーへと転調します。
キーCから見た完全4度の調は、下属調といってキーCと非常近しい調です。
楽譜の調合をみても、♭が一つ増えるだけですね。
演奏も激しく躍動感があり、クライマックスにふさわしい盛り上がりを見せています。