パッシングディミニッシュとは?使い方と使用例

下のコード進行の様に、コードとコードの間にあり、進行をスムーズにするディミニッシュコード(下例ではG#dim7)をパッシングディミニッシュと言います。

パッシングディミニッシュの例

この記事では、パッシングディミニッシュの詳しい解説と使い方、ヒット曲での使用例を解説します。

パッシングディミニッシュ含め、ノンダイアトニックコードについての詳しい記事は『ノンダイアトニックコードってどんなもの』をご覧ください。

この記事では、ディミニッシュ(3和音)、ディミニッシュセブンス(4和音)、ハーフディミニッシュ(m7♭5)の『ディミニッシュ』という単語が出てきます。
記事中間で解説を入れていますが、混同しないようにご注意ください。

パッシングディミニッシュとは

パッシングディミニッシュとは、コード進行のなかで全音間隔で隣り合う2つのコードの間に経過音的に差し入れることができるディミニッシュコードです。例えば『G→Am』のコード進行を『G→G#dim7→Am』のように変化させることができます。dim7でなく三和音のdimコードでも可能です。

パッシングディミニッシュの図解

 
えるるん
パッシングには「経過する」といった意味があるよ!
全音間隔のコードの間にパッシングディミニッシュが入ることで、ベースラインが半音ずつ上がっていく進行になったね。

パッシングディミニッシュの効果

パッシングディミニッシュを利用すると、非常に滑らかで強制力がある自然なコード進行が生まれます。

パッシングディミニッシュの響きが滑らかさを生む理由は以下4つです。

  • ベース音が半音ずつ変化するようになる
  • 前のコードの5度とパッシングディミニッシュコードの減5度の音が同じ
  • 前のコードがメジャーコードであれば、パッシングディミニッシュコードの短3度と同じ音
  • 前のコードが短7度を使うコードであれば、パッシングディミニッシュコードの減5度と同じ音

パッシングディミニッシュの前のコードとの親和性が高いからこそ、より滑らかな響きに聞こえるのです。

さらに、非常に緊張感のある響きのディミニッシュコードなので、半音の動きを保ったまま次のコードに落ちつきたいという表情が現れ、より自然にコードが進んでいくのです。

ハーフディミニッシュは使えない

結論、コードとコードの間にハーフディミニッシュを使うことはありますが、パッシングディミニッシュとはまた別の解釈になります。

3和音のディミニッシュコードはさらに音が一つ重なると、ハーフディミニッシュディミニッシュセブンスに分かれます。

パッシングディミニッシュと言えるのは、ディミニッシュ(三和音)かディミニッシュセブンス(四和音)になります。

コード構成音
ディミニッシュルート,短3度,減5度
ハーフディミニッシュルート,短3度,減5度,7度
ディミニッシュセブンスルート,短3度,減5度,7度

パッシングディミニッシュではない例

よく、Ⅵmのコードに着地する際に半音下のdimコードを経由することがあります。
例えば、以下のような進行です。

パッシングディミニッシュでない進行

この例でも、Emへのアプローチをスムーズになっていますが、この場合はパッシングディミニッシュとは言いません。

 
えるるん
あくまでもコードとコードを繋ぐ、経過和音がパッシングディミニッシュ!

パッシングディミニッシュの上行と下行

1章で解説した例の様に、上行の進行で使われるパッシングディミニッシュもあれば、下行の進行で使われる場合もあります。

主に、上行のパッシングディミニッシュの方が多く使われます。
これは、上行と下行では聞こえ方が異なるためです。

この章では、上行と下行のパッシングディミニッシュそれぞれの特徴を解説いたします。

 
えるるん
ちなみに、パッシングディミニッシュのうち、上行のものを『アセンディングディミニッシュ』、下行のものを『ディセンディングディミニッシュ』と言うよ!

上行するパッシングディミニッシュ

上行のパッシングディミニッシュは、次に進むコードに対するセカンダリードミナントの代理コードとしても考えられます。

 
えるるん
セカンダリードミナントとは、ダイアトニックコード上のあるコードを一時的なトニックと見立てた際のドミナントのことだよ!
『G→G#dim→Am』というコード進行で考えてみましょう。
パッシングディミニッシュが進む『Am』のセカンダリードミナントは、『E7』です。
パッシングディミニッシュが、E7の代理として機能しているか、サウンドを聴き比べてみましょう。
まずは冒頭でも用いた、パッシングディミニッシュを用いたコード進行dエス
パッシングディミニッシュの例
 
E7に置き換えた譜例

もちろん違いはありますが、どちらも『Am』に進みたくなる響きで、『Am』へ辿り着いた時には緊張がほぐれた様な安心感があります。

二つのコードが同じ機能を持っているのは、ほとんど同じ構成音を持っているからです。

コード構成音
G#dim7G#,B,D,F
E7E,G#,B,D

三つの音が共通しています。
『G#dim7』の構成音を見てみると、一致しない音(F)が含まれています。

ここも考慮するならば、パッシングディミニッシュG#dim7は、セカンダリードミナントE7(♭9)のルート省略形だと言えるのです。

コード構成音
G#dim7G#,B,D,F
E7(♭9)E,G#,B,D,F

上行パッシングディミニッシュは、セカンダリードミナントとしても機能も持つからこそ、よりスムーズな進行となるのです。

そのため、上行パッシングディミニッシュの方が下行に比べて頻繁に使われます。

下行するパッシングディミニッシュ

1章の譜例では、上行(音が上に上がっていく)のパッシングディミニッシュを解説してきました。
パッシングディミニッシュは経過和音なので、下行のコード進行でも使えます。

 

上行のパッシングディミニッシュは、次のコードへのドミナント的な役割がありましたが、下行のパッシングディミニッシュにはそれがありません

そのため、上行よりはスムーズではなく、使用頻度も少なめです。

下行のパッシングディミニッシュが、最も効果的なシーンは『Ⅲm→♭Ⅲdim7→Ⅱm』のような『Ⅲ→Ⅱ』の下降進行に限られます。

♭IIIdim7は、II7(♭9)と構成音がほとんど同じなため、II7と同じような機能を持ちます。

II7は、ダイアトニックコード本来のドミナントに対するドミナントなので、ダブルドミナントと呼ばれています。

コード構成音
D7(♭9)D,F#,A,C,E♭
E♭dim7E♭,G♭A,C

 

ヒットソングでみるパッシングディミニッシュ使用例

今回はパッシングディミニッシュが使われている有名な2曲を紹介します。
実際にその部分を聴いてみて、パッシングディミニッシュの聞こえ方を感じてみましょう。

紅蓮華 / Lisa

サビでは頻繁にディミニッシュコードが使われています。
ここまでの解説に照らし合わせるならば、サビ10小節目のD#dimの部分がパッシングディミニッシュになります。

紅蓮華コード譜

DとEmは全音の関係にあるので、その間のディミニッシュはパッシングディミニッシュと解釈することができます。

この曲はキーはEmなので、ダイアトニックコードに置き換えるとDはⅦ、EmはⅠ(トニック)になります。

このように、マイナーダイアトニック上の『Ⅶ→Ⅰ』の間、メジャーダイアトニックの『Ⅴ→Ⅵm』の間には頻繁にパッシングディミニッシュが使われます。

マル・マル・モリ・モリ! / 薫と友樹、たまにムック。

紅蓮華のようなロック調の曲以外にも、よく耳にするポップスでもパッシングディミニッシュは使われています。

この曲では、Aメロの2小節目『Fdim』がパッシングディミニッシュになります。

コード譜

曲中のコード進行にはよく『トニック→サブドミナント』の動きがよく見られます。
Eはトニック、F#m7はサブドミナント(代理コード)になり、そこへの動きを滑らかにする意味でもパッシングディミニッシュが使われることがよくあります。

まとめ

パッシングディミニッシュは全音間隔のコードの間であれば挿入することが可能です。
簡単に扱えるノンダイアトニックコードなので、作曲やアレンジにすぐに活かすことができそうですね。

ノンダイアトニックコードを上手く利用するには、感覚だけでなく、こうした知識が必要になってきます。

難しそうに感じますが、以外にも理解することはとても簡単なので、是非学習していきましょう。

次は「裏コード」を理解していきましょう。

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ここまでの内容をQ&A形式でまとめていきます。

Q.パッシングディミニッシュってなに?

A.経過音的に扱うディミニッシュコードのことで、全音間隔で動くのコードの間に挿入することができます。

Q.パッシングディミニッシュは3和音、4和音?

A.ディミニッシュにはR、短3度、減5の3和音のものと、減7度を付加した4和音のディミニッシュセブンスコードがありますが、パッシングディミニッシュにはその両方を使うことができます。

Q.ハーフディミニッシュはパッシングディミニッシュに使える?

A.ハーフディミニッシュは似たような意味合いで使うことがありますが、パッシングディミニッシュとは言えません。別の解釈になります。