【エイリアンズ/KIRINJI】コード進行と分析

数々のアーティストからもカバーされる名曲エイリアンズ。ジャジーなコード進行も魅力的でハイレベル、ハイセンスな楽曲です。

どんな意図で作曲されているのか、コード進行から紐解いていきましょう!

ここからの内容は、er-music編集部の独自の見解になります。 読者様との解釈に相違がある場合も、考え方の一例、娯楽の一環としてご覧ください。 また、ダイアトニックコードの理解があるとより楽しめるかと思います。 >>ダイアトニックコードについて

全体を通して

この曲の基本情報

  • 作詞/作曲:堀込泰行
  • キー:F#
  • BPM:85
  • 発売:2000年10月12日

ジャジーなコード進行が多用されており、複雑な響きと深み、またアコースティックギターの音色もあってか、ノスタルジーな雰囲気を感じさせます。

さまざまな箇所でドミナントモーションが見られますが、マイナーコードへ向かうaug7や裏コードなどが多く怪しげな不安定さを生み出しています。

反対に、サビは比較的素直な進行で、地に足がついたような安心感があるセクションです。
そこの差分からも希望的な様子が感じられます。

イントロ

楽譜イントロ

1〜4小節目

この部分は、original loveの接吻でも使われていた進行です。
最初3小節は、丸の内進行や、just two of us進行と言われるⅣ→Ⅲ7→Ⅵmの進行です。

aug7は、ドミナントセブンスの代わりに使われているので、次のA#7と役割は同じです。
メジャーキーと仮定してディグリー分析しているので、ここはセカンダリードミナントとしています。

4小節目(G#7(13)→G#7)

このコードは、本来Ⅴ(C#)は進むはずのセカンダリードミナントです。

ただし、ここでは偽終止となっており、C#に進まず、Ⅳ(BM7)へ進行します。

えるるん
偽終止は、あるドミナントコードが想定するトニックに解決しない進行を指すよ!
ちなみに、ダイアトニックコード上のドミナント(ここでいうC#)に対するセカンダリードミナントをダブルドミナント(ドッペルドミナント)といったりします。

6小節目(C#sus4/A#→A#aug7)

C#sus4/A#は、ほとんどAm7(♭13)に近しいコードですが、構成音の5thと♭13thが半音でぶつかってしまうのでこの形になっています。

Am7omit5(♭13)でもいいわけです。

A#aug7はこれまで通り、セカンダリードミナントとして使われています。

7〜8小節目(D#m9→E9)

E9はD#m9へ向かう裏コードと呼ばれるものです。

裏コードは、トニックと見立ててるコード(ここでいうD#m9)に対するドミナントセブンス(A#7)の、代理となるコードです。

これはE9が、A#7の構成音3rd(D),7th(G#)を、含むセブンスコードであるから成立します。

セブンスコードの3rdと7thは、トライトーンという非常に不安定な響きの関係にあります。これがトニックへ解決したい力を生むわけですが、裏コードも同じトライトーンを含むので、同じトニックに自然に解決することができるのです。

この部分の解釈

Jpopでもさりげなく裏コードが使われることはありますが、ここでは非常に強調されて使われています。

裏コードのルートとなる♭Ⅱ(E)は、ノンダイアトニックなトーンなので不自然な音で、半音下のルートへ早く戻ろうとする力が働きます。

全体的に、憂いややすらぎを感じる曲ですが、この部分では心の暗い部分が露見しているようにも感じます。不安定な響きが不安定な感情を表現しているのでしょうか。

 

Aメロ

楽譜Aメロ

3小節目(D#m7→F#7/C#→BM7)

ベース音は、D#→C#→Bとスムーズに全音づつの下行をとっています。

ここでのF#7/C#は、次のBM7を一時的なトニックと見立てドミナントの形に変換させたものです。

いわゆるセカンダリードミナントです。

4小節目(A#m7→A7→G#m7)

ルートは半音づつの下行をとっています。

A#m7とG#m7を繋ぐA7は裏コードです。

G#m7のドミナントであるD7の代理となるコードで、同じようにG#m7に進みたくなる不安定な響きのあるコードです。

この部分の解釈

D#mから始まる暗い雰囲気のある進行ですが、3小節目のF#7/C#→BM7は、明るいBメジャーへと解決するドミナントモーションなので、同様に明るい雰囲気があります。

Aメロから、暗さ・明るさ、不安定・安定がところどころ見られ、主人公の感情の暗い面明るい面が見え隠れしているように感じます。

個人的にこの曲に関しては、パーっと明るい気持ちがあるというよりは、不安ななかにある『やすらぎ』をこうしたコード進行で表現しているのかなと感じました。

11〜12小節目(A#m7/D#→D#7)

ここ二つのコードは、いずれも次にくるG#m7を想定したドミナント的な立ち位置にあります。要はセカンダリードミナントです。

『A#m7/D#』は、D#7sus4(9)と言い換えることができ、ドミナント的によく使われます。

えるるん
G#m7を一旦『Ⅰ』とすると、A#m7/D#は『Ⅱm7/Ⅴ』と表記できるね!
この形はsus4系オンコード(ハイブリッドコード)と言って、ドミナントの代わりとしてよく用いられているよ。
例えば、official髭男dismの楽曲には頻繁に用いられてる!

『D#7』は、G#m7に対するドミナントコードに値するので、そのままセカンダリードミナントです。

Bメロ

楽譜Bメロ

2小節目(BmM7→B/C#)

BmM7は一般的にサブドミナントマイナーと言われるコードで、ⅣがⅣmになった形です。
同主短調(Fマイナー)からのモーダルインターチェンジとも言えます。

mMとなっているので、Cハーモニックメジャーからの借用とも考えることができます。
そのままサブドミナントマイナーと表現されることが多いでしょう。

えるるん
モーダルインターチェンジは、同じ主音をもつスケールから、そのダイアトニックコードを一時的に借りてくること!
『B/C#』は、Aメロでも出てきたドミナントの代理となるsus4系のオンコードです。
このままトニックのF#へと進むと自然ですが、実際はA#m7へと進んでいきます。
A#m7は(Ⅲm7)はトニックの機能を持つコードなので、F#の代わりとなり、案外不自然な進行に感じません。

3~4小節目(A#m7→C#m7→C#/D#→D#7)

『C#m7』は、ドミナントがマイナーの形になっているので、ドミナントマイナーと呼ばれます。
このコードも、F#マイナーキーからの借りてきたコード(モーダルインターチェンジ的に)と考えることができます。

えるるん
1~2小節目の『G#m7→BmM7』と3~4小節目の『A#m7→C#m7』は、どっちも短3度上のマイナーセブンスに進むコードで、並行移動しているんだとわかるね。
『C#/D#』は、さきほども出てきたドミナントの代わりのコードです。
ルートと全音下のメジャーコードを合わせると、『7sus4』コードになるのです。
ここも、要は4度上のG#に対するセカンダリードミナントドミナントと考えられます。
『D#7』は、C#/D#よりも明確にセカンダリードミナントです。
ただし、ここからG#には進まず、次はCm7-5に進みます。
『Cm7-5』と、本来進行するはずの『G#(G#7とすると)』は似た構成音をしたコードですので、代理として機能することがわかります。
  • G#7:G#,B,#(C),D#,F#
  • Cm7-5:C,Eb(D#),G♭(F#),B♭(A#)
であれば、D#7がCm7-5に進行してもそこまで不自然ではありません。

5~7小節目(Cm7-5→F7→A#m7)

『Cm7→F7→A#m7』は、マイナーツーファイブワンの進行です。
A#m7を一時的なトニックとみたてて、マイナーの形のツーファイブワンをとっています。

そのためF7は、セカンダリードミナントになります。
F7がⅤ7であるならば、C#m7はⅡm7-5にあたるので、リレイテッドⅡmになります。

えるるん
セカンダリードミナントをⅤ7とした場合のⅡmにあたるコードのことをリレイテッドⅡm7というよ!

7~8小節目(A#m7→Adim7omit5(♭13)→G#m7→A#7)

『Adim7omit5(♭13)』と長ったらしく、回りくどいコードで表現させてもらったのは、このコードがパッシングディミニッシュの可能性があるからです。

パッシングディミニッシュは、全音間の2つのコードの間に差し込むことができるディミニッシュコードです。

今回の場合でいうとA#m7とG#m7をスムーズに繋げる役割として機能しています。

ただし減5度のサウンドが不必要なので、omitとして除外しています。

サビ

楽譜サビ

1〜4小節目(BM7→C#7/B→A#m7→D#m7)

前半4小節は、王道進行の形をとっています。

ディグリー表記で言えば、『Ⅳ→Ⅴ→Ⅲm→Ⅵm』の進行です。

ただし、ベース音がBで停滞しているのが特徴的です。

この部分の解釈

王道進行でベースだけⅣで立ち止まることは、Jpopでもよく見られます。

例えばMr.childrenの楽曲にもよく見られ、『HERO』や『HANABI』 などのサビがそういったアレンジになっています。

王道進行の前半は、Ⅳ→Ⅴの進行をとるので、次にI(トニック)に戻ることをイメージさせます。にもかかわらずⅢmに着地するので、いい意味で聴者が振り回される状態になります。

ベースをⅣで止めることでⅢmへの進行もスムーズになり、比較的演奏が落ち着きます。結果、メロディーに聴き入りやすくなるのが、この進行の長所だと考えます。

5〜7小節目(Fm7→A#7→D#m7)

『Fm7→A#7』は、次のD#m7へのメジャーツーファイブのアプローチです。

通常、Fm7-5としてマイナーツーファイブを取るべきところではありますが、あえてFm7を使用しています。

この部分の解釈

BPMも遅い中、Fm7が1小節にわたって響くので印象は強烈です。

Fm7(Ⅶm7)は、F#リディアンからのモーダルインターチェンジとも取れるので、Jpopでは聴き慣れない響きがします。

このFm7がもたらす効果は、このコードの響きだけでなく、次の進行にも影響します。

次のA#7は、F#からみる平行短調に解決するセカンダリードミナントですので、これまでも非常に暗い響きがありました。しかし、Fm7によってメジャーツーファイブとなったことで、暗さが半減し、その後の『D#m7→F#7』の進行も希望的に感じます。

8小節目(F#7)

『F#7』は、次のBM7へのセカンダリードミナントです。

14〜15小節目(A#7→BM7)

『A#7』はD#m7へ向かうセカンダリードミナントですが、BM7へと進行しています。

ですので、偽終止という進行になります。

この部分の解釈

ここではあえて解決させずに、ここまでのサビとは違うセクションとし次のBM7→F#M7が展開されているように思います。

ここを起点にコードは明確に明るく、演奏も穏やかになります。

一旦のやすらぎや、主人公の温かい感情を感じられます。

まとめ

緻密に作り上げられた世界観に、強い没入感を感じました。

コード進行それぞれに意図があるように感じ、感性だけで単純に作られた楽曲でないことがわかります。

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