モーダルインターチェンジとは?使用例を交えた使い方と注意点

コード譜を見ていて、よく理解できないノンダイアトニックコードが出てきたら、それはモーダルインターチェンジが使われているかもしれません。

下の譜面はキーCの楽曲ですが、2・4小節目のA♭やB♭はモーダルインターチェンジによるコードです。
定番ともいえる進行なので、見たことがある方も多いかもしれません。

モーダルインターチェンジの一例

上の例で言えば、Cメジャーキーの楽曲にCマイナーキーのコード(A♭,B♭)を借りてきただけです。
単に、「同じルートのマイナーキーのコードなら借りてこれる」と覚えても問題ありませんが、モーダルインターチェンジを正しく理解し、さらに幅を広げていくにはモードといった概念の理解が必要になります。

できるだけ理解しやすいよう、順を追って解説していきます。

モーダルインターチェンジを含めたノンダイアトニックコードについての詳しい記事は『ノンダイアトニックコードってどんなもの』をご覧ください。

モーダルインターチェンジとは

モーダルインターチェンジとは、同じルートを持つモードから一時的にコードを借りてくる技法です。
モーダルインターチェンジにより、借りてきたコードのことを借用和音と言います。

モードとは?
モード(旋法)とは、調(メジャーキーやマイナーキー)という概念ができる前からある旋律のルールようなものです。
のちにメジャーキーと言われるものは、モードでいう『イオニアンモード』。マイナーキーは『エオリアンモード』に相対します。
モードは7種類ありますが、メジャースケールの主音を順番に変えていくことで簡単に作り出せます。

例えば、Cメジャスケールで『C,D,E,F,G,A,B,C』とすれば、Cイオニアンモード。
『D,E,F,G,A,B,C,D』とすればDドリアンモード。
『E,F,G,A,B,C,D,E』とすればEフリジアンモード…。といった具合です。
 

それぞれ7つのモードから別々のダイアトニックコードを考えることができるため、モーダルインターチェンジの幅は相当に多くなります。

以下の表は、Cメジャースケールの中心音をそれぞれ変えていって生まれるモード7つのモードです。
メジャースケールから生まれる7つのモードをチャーチモード(教会旋法)とも言います。

中心音名称音階(スケール)
1度(ド)Cアイオニアンモードドレミファソラシド
(全・全・・全・全・全・
2度(レ)Dドリアンモードレミファソラシドレ
(全・・全・全・全・・全)
3度(ミ)Eフリジアンモードミファソラシドレミ
・全・全・全・・全・全)
4度(ファ)Fリディアンモードファソラシドレミファ
(全・全・全・・全・全・
5度(ソ)Gミクソリディアンモードソラシドレミファソ
(全・全・・全・全・・全)
6度(ラ)Aエオリアンモードラシドレミファソラ
(全・・全・全・・全・全)
7度(シ)Bロクリアンモードシドレミファソラシ
・全・全・・全・全・全)
音階はCメジャースケールを基軸と考える場合のもの

モーダルインターチェンジで使えるのは『パラレルなモード』

お気づきの方も多い方とは思いますが、上記の例はすべてCメジャースケールと同じ音になります。
こうした関係性を「レラティブ」と言います。

 
えるるん
「Cイオニアンは、Dドリアンのレラティブモード」
「Dドリアンは、Eフリジアンのレラティブモード」なんて言い方ができるよ!

反対に、それぞれのモードを、同じ主音に固定した関係性を「パラレル」と言いますが、モーダルインターチェンジはパラレルモードで行います

Cイオニアンのパラレルモード以下7つです。

  • Cドリアン
  • Cフリジアン
  • Cリディアン
  • Cミクソリディアン
  • Cエオリアン(≒Cマイナーキー)
  • Cロクリアン
ちなみに…
ハーモニックマイナーやメロディックマイナーから考えられるモードも取り入れるとさらに幅が広がります。
それらのモードと、モードごとのダイアトニックコードは『モーダルインターチェンジ一覧表』で一覧にまとめております。
 

モーダルインターチェンジの使われ方

モーダルインターチェンジを利用する際、先にどのモードからコードを借用してくるかを決めておけば簡単に使うことができますが、それでは「したい表現」にそった作曲や「前後の流れに則さない」不自然なコード進行になったりします。

そのため、どういったシーンでモーダルインターチェンジが使われるのかを知っておくと、自身の作曲により生かしやすくなります。

今回はよく使われる3つのシーンで、モーダルインターチェンジのアイデアを紹介していきます。

  • マイナーキーの雰囲気を取り入れるモーダルインターチェンジ
  • ベースの動きを滑らかにするためのモーダルインターチェンジ
  • コードの並行移動を作り出すためのモーダルインターチェンジ

マイナーコードの雰囲気を取り入れるためのモーダルインターチェンジ

最も多いモーダルインターチェンジのパターンで、メジャーキーの曲にマイナーキーのくらい要素を取り入れるためにモーダルインターチェンジを利用します。

マイナーキーは、モードでいうところのエオリアンモードなので、エオリアンモーダルインターチェンジがよく行われます。。

実際に、キーCを想定してコード進行を見ていきましょう。

例1:エオリアンモードからⅣm借用

モーダルインターチェンジの例1

通常のⅣ(F)を、エオリアンスケールのⅣmにモーダルインターチェンジしています。
なんとも、哀愁のある響きに感じます。

サブドミナントをマイナーにしていますので、サブドミナントマイナーと呼ばれることが多いです。

例2:エオリアンモードから♭Ⅵ,♭Ⅶを借用

モーダルインターチェンジの例1

マリオのステージクリア時の音源にも使われているコード進行で、エオリアンモードの『Ⅵ→Ⅶ』で解決することで、全音づつあがっていく進行になります。
エオリアンは同主短調。短調のコードから上昇してトニックに解決することで希望感が感じられます。

ベースの動きを滑らかにするモーダルインターチェンジ

ベースの動きを滑らかにするために、モーダルインターチェンジを利用することもよくあります。

例えば、半音づつ下降していくベースラインを作りたいときなどによく使われています。

モーダルインターチェンジの例3

この進行では、メジャーダイアトニックの穴埋め的にモーダルインターチェンジを利用しています。
ここでも、エオリアンスケールから♭Ⅶと♭Ⅵを借用することでこの進行を実現しています。

コードの並行移動を作り出すモーダルインターチェンジ

ノンダイアトニックコードを用いたコードの並行移動は、聴きなれずふわふわとした安定感のない響きを感じさせます。
ジャズやAORなどおしゃれな楽曲でもよく利用されます。

例1:ミクソリディアンスケールから♭Ⅶ

モーダルインターチェンジの例4

ミクソリディアンモードの♭ⅦM7を借用することで、全音したのM7に並行移動することができています。
他にエオリアンモードから、♭Ⅶ7(セブンス)を借用することがとても多いので、混同しないよう注意が必要です。

例2:エオリアンから♭Ⅵ

モーダルインターチェンジの例5

エオリアンモードの♭Ⅵを利用することで、長3度したのコードに並行移動することができています。
こうした3度した、または上に並行移動するコード進行は、クロマティックミディアント進行と呼ばれたりもします。

例3:フリジアンスケールから♭Ⅱ

モーダルインターチェンジの例6

フリジアンモードの♭ⅡM7を利用することで、半音上のコードに並行移動しています。
ただし、♭ⅡM7はサブドミナントマイナーの代理コードとしてとらえられることができますので、そうした解釈の方が変に複雑化させずにスマートに読み解くことができそうです。

モーダルインターチェンジ使用時の注意点

モーダルインターチェンジは簡単にノンダイアトニックコードを挿入することができる反面、てきとうに扱うのは危険です。
以下2点を考慮すると失敗が少なくなるしょう。

  • メロディーとの兼ね合い
  • 調性感が薄まることを覚悟する
 
えるるん
とはいっても、自分が気持ちいと思う進行であればそれで正解なんだから、ここからの注意点はあくまでも気休め程度のもの。モーダルインターチェンジでの一般常識といったところになるよ。

メロディーとの兼ね合い

結局、メロディーを崩壊させてしまったら意味がありません。
メロディーと不協和音やアボイドの関係になったり、不自然すぎるメロディーだと感じられるようではいけ本末転倒です。

決して不協和音やアボイド自体は問題ではないのですが、メロディー度外視でモーダルインターチェンジを利用するのは控えましょう。

調性感が薄まることを覚悟する

モーダルインターチェンジは、もともとの調性から外れたコードを借用してくるので、もちろん調性感が損なわれます。
調性外のコードを総じてノンダイアトニックコードと言いますが、別理論のセカンダリードミナントやパッシングディミニッシュなどよりも、調性感が薄まりますので、ちょうどいい塩梅で利用するようにしましょう。

モーダルインターチェンジによるコードが連続してしまうと、部分的に転調したようにも思われてしまうので、本来の意図からそれてしまうことも考えられます。

モーダルインターチェンジが使用された楽曲例

実際に、モーダルインターチェンジが使用された楽曲からアイデアを見てみましょう。


エルエミュージックでは、ヒットソングのコード分析を行っております。
モーダルインターチェンジが使われている楽曲も多く掲載していますので、アイデア探しにぜひご利用ください。

Universe/official髭男dism

Bメロ後半部分、サビ直前の不安定になる部分を見てみましょう。
(7小節目『わかるはずもなく探した』の部分です。))


キーDbメジャーに対してbⅥM7(AM7)が使われています。
これは、DbエオリアンスケールのbⅥM7のコードを借りてきていると考えられます。

このように、同主調のマイナー(エオリアン)スケールから借用するパターは邦楽・洋楽問わずよく見られます。

 
えるるん
マイナーキーからbⅥやbⅦを借りてくることは本当によくあるから、定番のモーダルインターチェンジとして覚えておこう!
エルエミュージック-コード分析

今回は、official髭男dismの『Universe』をコード進行を中心に分析していきます。ミドルテンポの曲で、主人…

ドライフラワー/優里

サビの後半を見てみましょう。

Cm6(9)となっている部分がモーダルインターチェンジでGマイナー(エオリアン)スケールから借用しているコードです。
このようなメジャーキーのⅣのコードがマイナーとなる場合はサブドミナントマイナーと呼ばれたりします。

エルエミュージック-コード分析

今回は、優里の『ドライフラワー』をコード進行という軸で分析していきます。弾き語り映えのするシンプルなローコード中心の楽曲…

何度でも/DREAMS COME TRUE

Bメロのコード進行を見てみましょう。
(『誰かに期待されても』の部分です)
キーはEメジャーになります。

DM7   |C#m7 |DM7 |Bsus  B|(サビ~)

キーであるEからみてbⅦ7M7が出てきています。
このコードは、EミクソリディアンスケールのbⅦM7コードを借用しています。

前述した2曲のようなエオリアンスケールからのモーダルインターチェンジよりは使われませんが、明るい転調感が得られ好んで使う人も多いので覚えておきましょう。

モーダルインターチェンジを一覧表から作ろう(キーCバージョン)

モーダルインターチェンジは、使えるコードが決まっているため、一覧表で見ると簡単に利用することができます。

モード名ダイアトニックコード
CアイオニアンCM7Dm7Em7FM7G7Am7Bm7-5
CドリアンCm7Dm7E♭M7F7Gm7Am7-5B♭M7
CフリジアンCm7D♭M7E♭7Fm7Gm7-5A♭M7B♭m7
CリディアンCM7D7Em7F#m7-5GM7Am7Bm7
CミクソリディアンC7Dm7Em7-5FM7Gm7Am7B♭M7
CエオリアンCm7Dm7-5E♭M7Fm7Gm7A♭M7B♭7
CロクリアンCm7-5D♭M7E♭m7Fm7G♭M7A♭7B♭m7

まとめ

モーダルインタチェンジを思うがままに扱うことはなかなかに難しいことですが、『定番』を覚えることで簡単に使用できます

モーダルインターチェンジもまた代表的なノンダイアトニックコード(ダイアトニックコード以外のコード)ですが、他にもさまざまな面白いコードがあるのでまだ覚えてない人は是非ご覧ください。

【参考記事】ノンダイアトニックコードについて

ここまでの内容をQ&A形式でまとめていきます。

モーダルインターチェンジってなに?

モーダルインターチェンジ(借用和音)とは、同主調のモードスケールからコードを借りてくることです。
詳しくは「モーダルインターチェンジとは」をご覧ください。

モードってなに?

通常のスケールの主音(中心音)を変えそれぞれ別の旋法として扱うことです。
『アイオニアン』『ドリアン』『フリジアン』『リディアン』『ミクソリディアン』『エオリアン』『ロクリアン』の7つのモードに分けられます。
詳しくは「モーダルインターチェンジで使われるモードについて」をご覧ください。

モーダルインターチェンジが使われている楽曲は?

ジャズやポップスなど、幅広く使われています。
今回は、『Universe』『ドライフラワー』『何度でも』の実例を交えて紹介しました。
詳しくは「モーダルインターチェンジが使用された楽曲例」をご覧ください。