【接吻/ORIGINAL LOVE】コード進行と分析

今回はORIGINAL LOVEの「接吻」の楽曲分析をしていきます。

日本テレビドラマ「大人のキス」の主題歌として作られた楽曲で、1990年代を彩った珠玉のラブソングです。

ここからの内容は、er-music編集部の独自の見解になります。 読者様との解釈に相違がある場合も、考え方の一例、娯楽の一環としてご覧ください。 また、ダイアトニックコードの理解があるとより楽しめるかと思います。 ダイアトニックコードとは?

全体を通して

スウィングのリズムでグルーヴィーな楽曲です。
スタッカートが多くノリのいいベースと、カッティング中心のギターといいファンキーな要素が感じられます。

それでいて、ジャジーなコードが多用されていて、都会的で大人な恋愛模様を感じさせられます。
実際歌詞も、若さある純粋な恋愛といわけでもなさそうです。

イントロ

接吻イントロ楽譜

* 『C#7-5』のコード位置が適切ではありません。C#7-5は2小節目2拍目のコードです。失礼いたしました。

たった2小節だけですがイントロが挿入されています。
キーGの曲なので、Am7/D→D7のツーファイブと呼ばれる動きが、最も安定していて明るい『G』コードが来ることを予感させます。

そのため、この2コードだけでも明るく希望的な印象を持ちます。

『C#7-5』に関しては、この次の冒頭サビでも出現するので、あえてその際に解説させていただきます。

イントロはさらっと終わりにして、次のセクションへ進んでいきましょう。

冒頭サビ

接吻冒頭サビ

 

1~3小節目【CM9→Baug7→Em9】

サビ冒頭は丸の内サディスティックでおなじみ、Ⅳ-Ⅲ7-Ⅵmの進行から始まります。

『Baug7』はオーギュメントコードですが、ドミナントコードの代わりとして用いられています。
このコードは、次のEmを一時的なトニックとみたててドミナントコード化したもので、セカンダリードミナントと呼ばれます。

えるるん
キーG上でのドミナントはD(あるいはD7)と決まっている。
それ以外のドミナント機能を持つコード(ここでいうA7)はセカンダリードミナントと言うんだ。

4小節目【A7(13)】

『A7(13)』は、6小節目のルートD音を一時的なトニックとみたててドミナントコード化したものです。
テンションの13thが、前のコード『Em9』の9th(F)音を保っています。

この部分の解釈

このサイトでも紹介した、『エイリアンズ/KIRINJI』でもキーは半音違いますが同じ動きが見られました。

いずれもジャジーな進行ですが、「明るさはあるが、調整を外れた不安定感も強く」感じます。
単に明朗なだけでなく、ある種の深みを感じ、大人な雰囲気を醸しだします。
また、13thで音を固定することで、違和感が少ないスムーズな進行となります。
「大人なスマートさ」なんかを感じました。
なお、ダイアトニックコード上のドミナント(ここでいうD)に対するセカンダリードミナントをダブルドミナント(ドッペルドミナント)とも言います。

5~6小節目【Am7→Am7/D】

『Am7→Am7/D』は、Gを想定したツーファイブの動きをとっています。

『Am7/D』は、D7sus4(9)と言い換えることもできるため、一定ドミナントとしての力がありGへと自然に進行します。

7~8小節目【F/G→G7】

まず先に『G7』から考えてみると、次の小節頭の『CM7』に対するセカンダリードミナントであることがわかります。

CM7へのドミナントモーションが想定されているのならば、『F/G』はCM7をトニックと捉えたときにサブドミナント(Ⅳ)にあたるコードとなります。

えるるん
F/G(サブドミナント)→G7(ドミナント)→CM7(トニック)という動きになっているんだね!

8小節2拍目【C#7-5】

イントロでも出てきたサビへ進むきっかけとなっていたコードですね。

『C#7-5』は、CM7へと進む裏コード的に使われているコードです。

裏コードとは、想定するトニック(ここでいうCM7)に対するドミナント(G7)の代理となるコードです。
進行先(CM7)の半音上のセブンスコードであることが特徴です。

ちなみに、C#7-5となっていますが、これはG7のベース音だけ単純にC#に持ってきたコードだからです。

コード構成音
G7(CM7に対するセカンダリードミナント)G,B,D,F
C#7-5C#,F,G,B

この部分の解釈

Cを一時的なトニックと見立てた2-5-1により、9小節目Cへ向けての期待感が上がるイメージがあります。
裏コードもそうですが、これらはジャズでよく見られるアプローチですので、より大人らしくお洒落な雰囲気が感じられますね。

間奏~Aメロ

接吻(イントロ~Aメロ)

Aメロは間奏から同じコード進行が用いられており、演奏もほとんど変わりません。

特徴的なのは、2小節目のCmM7のコード。(楽譜上ではCm7とされていますが、CmM7が正しいです。失礼いたしました。)
これはサブドミナントマイナーといわれるもので、同主調のGマイナースケールからの借りてきたコードと捉えることができます。

通常この部分はCmあるいはCm7となる場合が多いですが(GマイナーキーのⅣmコードのため)、この部分はCmM7が使用されています。

ここでメロディーを見てみるとCからみたM7()の音が使われています。
一つ前のAm9を見ても、Aからみた9th(シ)が使われています。

ここは純粋にメロディーにのっとってコードを変化させているようです。

この部分の解釈

B(シ)の音はキーであるGから見た3度の音であり、高揚感があり安定した音に感じます。(もちろん感じ方はそれぞれです。)
この曲はキーであるGメジャーのコードを、一度も鳴らさないので暗くなりすぎないメロディーのチョイスがされているのかもしれません。
喜びや悲しみが入り混じる、明るすぎず暗すぎない、少し冷たいイメージはこう言った工夫のおかげとも言えます。

Bメロ

接吻(Bメロ楽譜)

Bメロからは転調感のあるコードワークが特徴的です。

1〜3小節はCをトニックと捉えてそこへのツーファイブワン進行をとっています。

単純にG7はセカンダリードミナント、Dm7は2-5-1を形成するためのリレイテッドⅡm7と捉えられるでしょう。

4小節目F7はAメロにも出てきたサブドミナントマイナーの代理コードとしてよくつかわれます。
(代理コードは、あるコードと構成音が似ていて同じような役割を持つコードです。サブドミナントマイナーの場合は、キーのGから見た♭6が含まれていることが重要になります。)

5小説目からは通常のキーGのダイアトニックコードですね。

この部分の解釈

Aメロのどこか物憂げな様子から一転、雲間から抜けたような印象を感じさせます。
C(仮想のトニック)に向かうツーファイブワンで一時的に明るさを取り戻します。
4小節目F7は、ジャジーで落ち着いた雰囲気に戻され、サビへとつながっていく。
少しうつむきがちなAメロ。明るく幸せな一瞬を感じるBメロと、ディープで切ない恋愛模様が想像できました。

まとめ

タイトルから見ても少し大人に恋愛感が、漂い、それに合わせた雰囲気づくりのために、高度でお洒落なコードがたくさん使われていました。

いなたい雰囲気ではなく、都会の情景が思い浮かびます。

おしゃれで複雑なコード進行を多用するジャンルにシティーポップがありますが、風景の描写にもコード進行は大きく関わっているのですね。

音楽サブスク徹底比較!無料期間でたのしもう!

CTA-button