フジテレビ『めざましどようび』テーマソングであり、星野源さんの4枚目のアルバム『YELLOW DANCER』に収録されているダンスナンバー。
週末の朝、踊りたくなってしまうような感覚を70年代ディスコミュージック的なアプローチで表現した名曲、「Week End」を分析していきます!
全体を通して
程よい静けさがあって、何か切なさと、その中の充実感を感じる一曲です。
四つ打ちのリズムで、70年代ディスコ・ファンクを感じさせるサウンド。ホーンセクションのアレンジも相まってEarth, Wind & Fireへのリスペクトを感じます。
冒頭サビ
1・2小節目
コード | Aadd9→Eadd9/G#→Adim→C#m7→Bm7 |
ディグリ ー表記 | Ⅳadd9→Ⅰadd9/Ⅲ→Ⅳdim→Ⅵm7→Ⅴm7 |
「さよなら目が覚めたら~」と、歌のアウフタクトで始まります。
Aadd9のあとにきているEadd9/G♯は、Eadd9の3度の音をルートに持ってきた転回系のコードです。
この楽曲中ではⅠやⅣのコードにadd9を多く使っています。単なるトライアドではなく、9thの音だけを入れることによって煌びやかでディスコファンクに相応しい響きを表現しています。
Adim(Ⅳdim)は、G♯7(Ⅲ7)の代理として使われていると考えることができます。
Adimの構成音が(ラ.ファ♯.ド.レ♯)なのに対して、G♯7は(ソ♯.レ♯.ファ♯.ド)となっており、構成音がほぼ全く同じであることがわかります。
Ⅲ7はⅥに向かうセカンダリードミナントであり、切ない響きをもっています。Adim(Ⅳdim)も同様です。
7・9小節目
コード | Dmaj7(9)→F#m7→Bsus4 |
ディグリ ー表記 | ♭Ⅶmaj7(9)→Ⅱm7→Ⅴsus4 |
Dmaj7(9)は、トニックから見ると♭ⅦM7にあたるので、ノンダイアトニックコードです。
このコードは、モーダルインターチェンジのコードです。
モーダルインターチェンジは、この楽曲のキーEメジャーの同主の調(正しくはモードという概念)から、コードを借りてくる技法です。
♭ⅦM7はEミクソリディアンモードからのモーダルインターチェンジになります。
9小節3拍目のBsus4(Ⅴsus4)は通常のⅤ7よりも緊張感が薄く、浮遊感のあるコードです。解決感を和らげたい場合によく使われます。
冒頭サビ2
ドラムが入ってくるこのパート。歌と同時にピアノやベースが小節の頭でシンコペーションしていることによって、四つ打ちのリズムと相まって、ファンキーで踊れるノリが生まれています。
8・9小節目
コード | F♯m7→A/B |
ディグリ ー表記 | Ⅱm7→Ⅳ/Ⅴ |
ここのA/B(Ⅳ/Ⅴ)は、冒頭サビの1・2小節目に登場したⅤsus4と同様に、Ⅴ7の代理として使われています。
通常のV7(B)に比べると、やはり緊張感が薄く、どことなく浮遊感のあるサウンドとなっています。
イントロ
1・2、5・6小節目
コード | E→G♯aug→C♯m7→Bm7→E7→Amaj7 |
ディグリ ー表記 | Ⅰ→Ⅲaug→Ⅵm7→Ⅴm7→Ⅰ7→Ⅳmaj7 |
1小節目3拍目に出てきているG♯augというコード。
オーギュメントコードではありますが、これはセカンダリードミナントであるⅢ7の代理として使われているコードです。
2小節目2拍目裏のBm7→E7。E7(Ⅰ7)はセカンダリードミナントであり、それに向かうBm7(Ⅴm7)はリレイテッドIIm7の役割を持っています。
E7(I7)をVと考え、Bm7(Vm7)をIIm7として使うことでツーファイブの動きをしているというわけです。
Aメロ
1~5小節目
コード | Cdim→C♯m7 |
ディグリ ー表記 | ♭Ⅵdim→Ⅵm7 |
このCdimはC♯m7へとルートが半音で繋がる経過的なコードとして使われています。これをパッシングディミニッシュといいます。
Bメロ
5~8小節目
コード | C♯m7→Cm7 →Bm7→D/E |
ディグリ ー表記 | Ⅵm7→♭Ⅵm7→Ⅴm7→♭Ⅶ/Ⅰ |
『C♯m7→Cm7 →Bm7(Ⅵm7→♭Ⅵm7→Ⅴm7)』はポップスにおいてもよく使われる進行で、半音ずつ平行に下降移動するm7コードの響きが非常にお洒落です。
D/E(♭Ⅶ/Ⅰ)はセカンダリードミナントのⅠ7の代理として使われていると解釈できます。
「冒頭サビ2」の9小節2拍目裏で登場したA/B(Ⅳ/Ⅴ)と全く同じことをⅠ7でやっているということですね。
Ⅳmaj→Ⅰadd9/Ⅲ→Ⅱm7→Ⅳ/Ⅴという進行を経てサビへ。
間奏
曲を通して四つ打ちで続いてきた今までのリズムとは打って変わって、16分のノリが畳み掛ける非常に盛り上がるパート。
細かいハイハットやうねるようなベースラインがより疾走感を際立たせます。
ラスサビ
1~19小節目
基本的には今までのサビとほとんど同様のコード進行で進んでいきます。
15~17小節のAadd9→Amaj7やEadd9/G♯→E/G♯などの部分では、ピアノやストリングスなどの動きが少し賑やかになっていることで、エンディングへの盛り上がりを演出しています。
最後は「ラララ」でフェードアウトするという、王道の締め方。
こういった楽しげなダンスナンバーでフェードアウトを用いるのはかなり効果的で、はっきりと終わりを描かないことで、まだまだ続いていくような感覚を聴き手に与えることができます。