【何なんw/藤井風】コード進行と分析

今でも伸びるYoutubeの再生回数が、とうとう2,000万回に近づく「何なんw」

タイトルのかわいらしさとは裏腹に、グルーヴィーでごりごりの音楽的アプローチに強いギャップ感を覚える楽曲ですね。

この曲のすごさを、コード進行を軸にひも解いていきましょう。

ここからの内容は、er-music編集部の独自の見解になります。 読者様との解釈に相違がある場合も、考え方の一例、娯楽の一環としてご覧ください。 また、ダイアトニックコードの理解があるとより楽しめるかと思います。 ダイアトニックコードとは?

全体を通して

複雑でジャジーなコード進行と、強めのスウィングビートが特徴的で、非常にグルーヴィーなR&B的な楽曲です。
MVがニューヨークで撮影されていることもあり、ブラックミュージックへのリスペクトが感じられますね。

テンションコードが多用されていますが、響きやトップノートが常に意識されていてころころとコードが変わっています。
今回ワンコーラスを分析していきますが、4小節単位で見てみると同じ進行がありません。
全体的にⅣからの下降という土台があるので、コードが細かく変わっていても統一感があり、おしゃれで知的な楽曲に聞こえますね。

イントロ1

楽譜イントロa

5~8小節目

コードGM7→F#m7→Fm7→Em7(9)→F#7A/BAm7D7(9 )
ディグリ ー表記ⅣM7→Ⅲm7→♭Ⅲm7→Ⅱm7→Ⅲ7Ⅵm7Ⅱm7/ⅣⅤ7/Ⅳ

Fm7(♭Ⅲm7)

『Fm7』は、F#m7を半音したに並行移動した形で、次のEm7(9)への経過音として挿入されているコードです。
次のEm7(9)に早く進みたい力があり、ベース音も半音で下降していることから、よりスムーズな進行になっています。

F#7(Ⅲ7)

F#7は、次の『A/B』へのセカンダリードミナントです。
『A/B』を一時的にトニックとみたてて、F#m7をドミナントコードに変換しています。

A/B(Ⅵm7)

先ほどのセカンダリードミナント『F#7』は、このベースBに向けたものだということがわかります。
楽譜の上では、『A/B』と表記しましたが、B(Ⅵ)の役割が強いので、Ⅵm7(9,11)ととらえることもでき、単にテンションを付加したコードだということがわかります。

Am7→D7(9)(Ⅱm7/Ⅳ→Ⅴ7/Ⅳ)

通常ドミナントである『A』が『Am7』に変化しています。
トニック『D』も、ドミナントセブンス『D7』に変化しています。

次の9小節目GM7も合わせて考えると、『Am7→D7→GM7』という進行で、ツーファイブワンの進行をとていることがわかります。

GM7(Ⅳ)を一時的にトニックとみたてて、ツーファイブワンのモーションをとっているのです。

D7は、先ほども出てきたセカンダリードミナント
Am7は、それに対するⅡm7の役割があるので、リレイテッドⅡm7と呼ばれています。

9~12小節目

コードGM7→F#m7→B7(11)F7→Em7→B♭7(+5)Am7(11)D7/G#
ディグリ ー表記ⅣM7→Ⅲm7→Ⅴ7/ⅡsubⅤ7/Ⅱ→Ⅱm7→subⅤ7/ⅤⅡm7/ⅣⅤ7/Ⅳ

B7(11)→F7→Em7(Ⅴ7/Ⅱ→subⅤ7/Ⅱ→Ⅱm7)

『B7(11)』はEm7への向かうセカンダリードミナントです。

『F7』はB7の裏コードと呼ばれるもので、同様にEm7へとつよく進行する力を持っています。
F7は、B7の構成音のうち3度と7度を共通して持っているので、代理として使うことができるのです。

えるるん
解決感は通常のドミナントの方が強いけど、裏コードにすると半音上からのアプローチができるからよりスムーズに聞こえるよ。

B♭7(+5)(subⅤ7/Ⅴ)

『B♭7(+5)』は次のAm7(11)への裏コードです。
裏コードは、特徴として進むコードの半音上のドミナントコードになっています。

Am7(11)→D7/G#(Ⅱm7/Ⅳ→Ⅴ7/Ⅳ)

8小節目と近しいコード進行をしていますが、D7のベース音がG#となり、半音で下降していく進行になります。

 

イントロ2

楽譜イントロb

5~6小節目

コードG#(♭5)→C7(9)→F#m7→Bm7(9)→F7→Em7
ディグリ ー表記#Ⅳ-5→♭Ⅶ7→Ⅲm7→Ⅵm7→subⅤ/Ⅱm→Ⅱm7

G#7-5(#Ⅳ-5)

GM7のベース音が半音上がると、『G#7-5』になります。
G#7-5(#Ⅳ-5)はトニックの代理コードされることが多いですが、前のコード(D7)がセカンダリードミナントとなっているので、サブドミナントGM7の代わりに使われているようです。

C7(9)(♭Ⅶ7)

『C7(9)』はサブドミナントマイナーの代理コードです。

サブドミナントGが、マイナーコードのGm(あるいはGm7)となったものが本来のサブドミナントマイナーで、サビでも使用されています。
『C7(9)』と共通の音が多く、変わりとなるコードとしてよく利用されるのです。

この部分の解釈
この部分の進行は、G#(♭5)→C7(9)→F#m7となっています。
それぞれ上述した働きがあることを鑑みると、原型としては以下のようなコードだったと考えられます。
『G(サブドミナント)→Gm(サブドミナントマイナー)→F#m 』
これをベースアレンジした形が、5~6小節目の進行となっているようです。
今までの進行と比べると明らかな違いがあり、セクションが展開していき(イントロの)終わりが近づいているように感じられます。

Aメロ

楽譜Aメロ

5~6小節目

コードGM7→C7(9,13)→Fm7→B7(♭9,♭13)
ディグリ ー表記ⅣM7→♭Ⅶ7→Ⅲm7→subⅤ7/Ⅱm

GM7→C7(9,13)(ⅣM7→♭Ⅶ7)

サブドミナントである『GM7』、サブドミナントマイナーの代理である『C7(9.13)』と進行しています。

イントロ2の5~6小節目で出てきた進行ににていますね。
大きな意図としては同じ進行で、このAメロ部分の方がより素直に進行している形となります。

B7(♭9,♭13)

『B7(♭9,♭13)』は次のEm7に向けたセカンダリードミナントです。

9小節目~

Aメロは8小節でひと段落し、9小節目はちょうど折り返し部分。単純にいけばそのまま8小節をもう一度繰り返す形ですが、若干の違いがありますね。

8小節目は最後Em7へのセカンダリードミナントである『B7(♭9,♭13)』で終わっています。
そのため、9小節目は自然にEm7から開始しています。

えるるん
前半(8小節目)との若干の違いが飽きさせないテクニックでもあり、ストーリーが進行していることを感じさせるね!

Bメロ(キーF)

楽譜Bメロ

Bメロは、キーFへと転調しています。

Bメロの転調方法
BメロはキーFへと転調していますが、なんとも自然な転調で違和感を感じさせません。
Bメロ冒頭のコード『Gm7』は、Aメロでも出てきたコードで、そこではサブドミナントマイナーと呼ばれていました。
Bメロだけ切り分けてみると、『Gm7』はキーFのダイアトニックコードである、Ⅱm7です。
転調前と転調後のキーで、共通するコードを起点として転調を行うことで違和感なく調が変わっています。
こうした、前後で共通する部分をピボットセクションと言います。
藤井風さんでいうと、『きらり』でも同様の転調が行われていました。
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1~4小節目

コードGm7→Gm7/C→C7(♭9)→FM7→C/D→D7(9)→A♭7
ディグリ ー表記Ⅱm7→Ⅱm7→Ⅴ7→ⅠM7→Ⅴ→Ⅴ7→subⅤ7/Ⅱm7

Gm7→Gm7/C→C7(♭9)→FM7(Ⅱm7→Ⅱm7→Ⅴ7→ⅠM7)

キーFメジャーのツーファイブワンのモーションです。

D7(9)(Ⅴ7)

Gm7へのセカンダリードミナントです。

A♭7(subⅤ7/Ⅱm7)

Gm7 へのセカンダリードミナントであるD7を裏コード化したものです。
Gm7へとスムーズに進行することができます。

5~8小節目

コードGm7→Gm7/C→C7(♭9)→FM7→B♭M7(9)→Em7→F#7(#9,♭13)
ディグリ ー表記Ⅱm7→Ⅱm7→Ⅴ7→ⅠM7→ⅣM7→ⅣM7→【キーD】→Ⅱm7→Ⅲ7

FM7→B♭M7(9)(ⅠM7→ⅣM7)

キーFの、Ⅰ(トニック)→Ⅳ(サブドミナント)の動きをしてます。

この部分の解釈
この辺が、サビのキーDへの転調ポイントとなっています。
明確に転調をするのは次のEm7の部分ではありますが、この時点から転調に向けて走り出しているように感じます。
コードだけ一見すると、強引に転調しているようにも感じますが、キーDとキーF(キーDm)は同主短調の関係なので自然に戻ることができています。
モーダルインターチェンジを使えば、Dメジャーキーの中に同主短調(Dm)のコードを借用することができるので、FM7→B♭M7の流れがすでにキーDとしても考えられなくはありません。
さらに、Bメロに転調した際もキーDでのサブドミナントマイナーを起点としていました。
B♭M7もキーDでのサブドミナントマイナーの代理に当たるので、一貫性のある転調手法をしているともかんがえられます。

Em7→F#7(#9,♭13)(Ⅱm7→Ⅲ7)

ここは明確にキーDへと転調しているようなので、トニックDからみたⅡm7とセカンダリードミナントであるⅢ7ととらえられます。

サビ

楽譜

1~4小節目

コードGM7(9)→F#m7→Bm7→Am7→GM7(9)→F#m7→Am7/D→D7
ディグリ ー表記ⅣM7→Ⅲm7→Ⅵm7→Ⅴm7→ⅣM7→Ⅲm7→Ⅱm7/Ⅳ→Ⅴ7/Ⅳ

イントロの進行と近いし部分がありますが、やはりところどころ変化があります。

2小節目『F#m7→Bm7→Am7』では、今までのようなAm7→D7のツーファイブの形をとっていません。
Am7が入る位置は3拍目の裏ですので、経過音的にAを入れているように感じます。
これまでの流れに沿って、Aメジャーではなく、Am7とすることで違和感を感じることもありません。

4小節目『F#m7→Am7/D→D7』、あえてベース音をDで動かさないようにしています。

この部分の解釈
4小節目、『Am7/D』はドミナントに近い役割があります。
そのため、『Am7/DとD7』はどちらもⅣに進みたい力があるわけです。
いままでツーファイブの動きがあった個所が、Dで停滞していることで、「早くⅣに進みたい」気持ちが増し、なんだかもどかしさが湧いてくるように感じます。
歌詞も「なんでなんも言ってくれんかったん」と、もどかしい不満を述べているようです。
ワンコーラスのエンディングへの展開としても、『溜める』役割がここにはあるようです。

5~8小節目

コードGM7(9)→F#m7→Bm7→F7(9)→Em7→B♭7→Am7→D7
ディグリ ー表記ⅣM7→Ⅲm7→Ⅵm7→subⅤ7/Ⅱm→Ⅱm7→subⅤ7/Ⅴ→Ⅱm7/Ⅳ→Ⅴ7/Ⅳ

5~8小節では裏コードが2回も出てきます。

F7(9)(subⅤ7/Ⅱm)

イントロでも出てきました、Em7への裏コードです。

B♭7(subⅤ7/Ⅴ)

このコードもイントロで出てきました、次のAへの裏コードです。
(イントロではaug7の形で出てきました。)

まとめ

ふんだんに使われたジャズコードが魅力の楽曲でした。
コードに妥協せず、突き詰めるところまで突き詰めていることがわかります。

複雑すぎるコードの変化に耐えられるよう、Ⅳからの下降という一貫線は保っているようで、それがまたこの曲の世界感の表現の一つとなっているようです。

MVを見てもそうですが、クールで大人なカッコよさがあふれていますよね。
ロックな曲調でなく、R&B的でジャジーなアダルト気を感じる一曲でした。

 

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