全体を通して
イントロのない楽曲で、いきなりAメロから始まります。
BPM76のテンポが、ゆったりと歩いている様な速度感となっています。
たんたんとした歩きではなく、何かを考えながら歩いている様にも感じます。物思いに耽る感じでしょうか。
優里の楽曲の多くに共通することですが、IV(この楽曲ではBコード)から始まるコード進行が多く、憂いがふんだんに感じられます。
Aメロ
1~2小節目【Badd9→C#sus4→F#→D#m7】
Aメロは『Badd9→C#sus4→F#→D#m7(IV→V→I→VI)』の進行が土台で作られています。
『Badd9(IVadd9)』は、優里の楽曲ではよく登場するコードです。
ギターでは、ローコードで抑えやすく、解放弦と9thの響きが美しく弾き語りをする方に好まれます。
『C#sus4』は、Badd9の5thの音を持続するために、sus4が付けられています。
コード進行の中で持続している音のことを、ペダルポイントと言います。
コード | 構成音 |
---|---|
Badd9 | B,D#,F#,C# |
C#sus4 | C#,F#,G#, |
4小節目【F#→C#/E#→Badd9/D#→F#/C#】
オンコードだらけで、一見わかりにくい進行ですが、分数上のコードだけ見てみると単純です。
『F#→C#→Badd9→F#(I→V→IV→I)』の単純な進行で、ベースがいる場合は、ギターは何もオンコードを引く必要はなさそうです。
オンコードとなっているのは、ベース音をスケールに沿って下行させるためです。
ちなにみ、『C#/E#』は、C#の第一転回系。
『Badd9→D#』は、Badd9の第一転回系。
『F#/C#』は、F#の第二転回系です。
Bメロ
1~2小節目【Badd9→F#/A#→D#m7】
これまで、1小節に二つのコードが基本でしたが、『Badd9』は1小節をまるまる使っています。
加えて、Aメロに比べてメロディー一つ一つが長めの音符になっているため、立ち止まった様な失速感を感じます。
また、トニックである『F#/A#』へ進むことで、さらに大きく落ち着きを感じる歌い出しとなっています。
3小節目【G#7】
キーはF#ですので、本来ドミナントと呼ばれるコードは『C#(またはC#7)』です。
『G#7』は、C#を一時的なトニックと見立てた際にできるドミナントコードで、セカンダリードミナント(あるいは、ダブルドミナント)と言います。
- チェック:「トニック」とかってなに?
- 音階の一番目の音をトニック、四番目の音をサブドミナント、五番目の音をドミナントと言います。 また、ダイアトニックコードの一番目のコードをトニックコード、四番目のコードをサブドミナント、五番目のコードをドミナントコードと言い、それぞれをコードの機能といいます。 簡単に言うと、トニックコードは安定的。ドミナントコードは非常に不安定。サブドミナントはその中間的なイメージです。 ▷トニック・サブドミナント・ドミナントについて詳しくはこちら
- チェック:セカンダリードミナントとは?
- セカンダリードミナントは、ダイアトニックコード一番目のコードであるトニック(『I』あるいは『Im』)以外のダイアトニックコードを一時的なトニックと見立てて、その5度上のコードをドミナントコードに変化させたものです。 ▷セカンダリードミナントについて詳しくはこちら
4小節目【C#sus4→C#】
Bメロは、C#(ドミナント)で終わっています。
こうしたコード進行の形を、半終止と言います。
半終止は、中途半端な雰囲気があり、次への展開を期待させます。
サビでの盛り上がりが楽しみになりますね。
サビ
1~2小節目【Badd9→F#→C#→D#m7】
『Badd9→F#→C#→D#m7(IV→I→V→VIm)』の進行は、ポップパンク進行と呼ばれる定番コード進行です。
爽やかさや、憂いを感じるコード進行です。
ポップパンク進行が使われた楽曲
4小節目【C#→Ddim7→D#m7】
『C#』と『D#m7』の間にあるディミニッシュコードは、パッシングディミニッシュと呼ばれるコードです。
2つのコードの進行を滑らかにします。
また、パッシングディミニッシュである『Ddim7』は、『D#m7』に対するドミナントとしての力も有します。
D#m7への進行を強く予感させるため、『D#m7』が持つ暗い雰囲気を一時的に高めます。
この部分の解釈
4小節目の歌詞を見てみると「恋心に気づけなかった」とされています。
メロディーも「気づけなかった⤵︎」と力無く下がっていくフレーズ。
コードと歌詞とメロディーが、主人公の落ち込んでいる様子をイメージさせます。
5~6小節目【Badd9→C#→A#m7→D#m7】
『Badd9→C#→A#m7→D#m7』は、王道進行と呼ばれるコード進行です。
1〜2小節目のポップパンク進行に比べて、落ち着き感が少なく、切ない雰囲気まで感じます。
この部分の解釈
1〜4小節に比べて音域の高いメロディーが、王道進行の切なさと混じり、何か訴えている様な感覚やもどかしい気持ちを連想させています。
7小節目【G#7】
『G#7』は、Bメロにも出てきたダブルドミナントです。
とても緊張感のある響きですが、明るくはつらつとした感じもあって、なんだか希望的な雰囲気に包まれます。
まとめ
今回は、『おにごっこ/優里』のワンコーラスを分析しました。
優里の楽曲は、どれも憂いがあって、じんわりと感情が溢れ出す様な温かい気持ちにさせてくれます。
この楽曲は、静か目な楽曲で、切なさ要素もふんだんにありました。
それでも、希望感を感じさせる部分も見られ、一曲を通して穏やかな気持ちで聞き入ることができました。
この部分の解釈
ここまでゆったりとした曲調でしたが、ここでコードに動きがでて、物語が展開していくきっかけであることがわかります。
歌詞を見ると、ちょうどここから、『君を追いかけようとする主人公のリアルな行動』がうかがえる様になります。
Aメロの中では、最も聴かせたい部分で、演奏でも動きを出したい部分なのです。
5小節目もAメロが繰り返されますが、半分の尺でBメロへと展開していきます。