【キラキラ/aiko】コード進行と分析

aikoさんのメジャー通算18作目のシングルであり、フジテレビ系ドラマ「がんばっていきましょい」主題歌/トヨタ「ポルテ」CMソング。

ひとりの時に聴きたくなる名曲、「キラキラ」を分析していきます!

ここからの内容は、er-music編集部の独自の見解になります。 読者様との解釈に相違がある場合も、考え方の一例、娯楽の一環としてご覧ください。 また、ダイアトニックコードの理解があるとより楽しめるかと思います。 ダイアトニックコードとは?

全体を通して

aikoさんの天才的なメロディセンスと、キーボーディストでもある島田さんのアレンジによって生まれた珠玉の名曲。

アコースティックピアノを中心としたバンドサウンドで、そこに厚みを加えるような形でオルガン、リズムを埋めるような役割でタンバリンとコンガが入っています。

バンドならではの印象的なキメやブレイクなどが随所に登場し、ポップでありながら飽きの来ないアレンジになっています。

イントロ

1小節目

E→G♭→Ebm→A♭(♭Ⅵ→♭Ⅶ→Ⅴm→Ⅰ)

曲の冒頭から8分音符分空けて始まる特徴的なセクション。この後もサビ前に度々登場するので、この曲を象徴する部分といえます。

E→G♭→Em♭の部分は、モーダルインターチェンジが使われています。
モーダルインターチェンジとは、ざっくり言えばこの楽曲のキー(A♭メジャー)の同主調であるA♭マイナーキーからコードを借りてきているという考え方です。
そしてA♭(Ⅰ)→イントロのD♭(Ⅳ)に繋がります。

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「セカンダリードミナントでも転調しているわけでもない」のに出てくるノンダイアトニックコード。多くはモーダルインターチェン…

2小節目~

「ラ♭~ソ~ミ♭~ドシ♭~ラ♭ラ♭~」というフレーズが印象的なイントロ。
ここではギターとピアノがユニゾンしています。また厚みを加えるような役割でオルガンでも一部同じメロディを鳴らしています。

この部分の解釈
歌や楽器同士をユニゾンさせると、そのメロディを強調する効果が生まれるので、基本的な編曲手法としてよく使われます。

Aメロ

キラキラ/Aメロ楽譜

1小節目と3小節目の一拍目で、楽器全体を止めるブレイクが入る印象的なパート。
バンドサウンドでこういったリズムアプローチを用いると、一体感が出て効果的です。

1小節目

A♭→C7→D♭→D♭m/E(Ⅰ→Ⅲ7→Ⅳ→Ⅳm/♭Ⅵ)

ここでは早速、C7(Ⅲ7)というセカンダリードミナントが出てきています。
Ⅲ7はポップスにおいてはよく使われるもので、通常のⅢと比べて感情的で切ない響きがあります。

er-theory

ダイアトニックコードを知っていると以前よりも簡単に作曲を行うことができますが、そればかりに頼ると単調な曲になってしまうこ…

この部分の解釈
Ⅲ7は、Ⅵに向かうセカンダリードミナントであるがゆえに、短調への移行を思わせる効果が強く働きます。
そのため、メジャーキーでこのコードが現れると切なさや暗さ、泥臭さといった感情的な響きを感じさせます。

2小節目

D♭m/Eの部分ではオンコードが使われています。これはD♭m(Ⅳm)の5度の音、ミをベースに持ってきた転回系のコードです。
ベースがEに行っていることで、サブドミナントマイナーの機能を持ちながらも、次のコード(Fm)へ半音で滑らかにつながるベースラインとなっています。

この部分の解釈
サブドミナントマイナーとは、文字通りサブドミナント(Ⅳ)がマイナーとなったものです。この楽曲で言えば、同主調であるA♭マイナーキーからD♭mを借用してきた、と説明することができます。
サブドミナントとしての役割を保持しながらも、切ないような響きをもっているのが特徴。

7・8小節目

Fm→D♭→A♭/C→B♭m7→D♭/E♭(Ⅵm→Ⅳ→Ⅰ/Ⅲ→Ⅱm7→Ⅳ/Ⅴ)

ここで登場するD♭/E♭(Ⅳ/Ⅴ)はV7(ドミナント)の代理としてよく使われるコードです。サブドミナントの機能を持つⅣに、Ⅴのベース音が付加されています。

通常のV7と比べると緊張感が弱く、ドミナントの役割を持ちながらも浮遊感があります。

また、Ⅱm7とほぼ同じ構成音を持っているため、この曲のBメロようにツーファイブ(Ⅱm7→Ⅳ/Ⅴ)の形で使うことで滑らかな進行が可能です。

この部分の解釈
Ⅳ/ⅤはⅡm7/Ⅴという形でもよく登場します。(構成音もほぼ同じであるため、役割は全く変わりません)
また、Ⅳ/Ⅴ・Ⅱm7/Ⅴ共に、Ⅱm7とほぼ同じ構成音を持っているため、この曲のBメロようにツーファイブ(Ⅱm7→Ⅳ/Ⅴ(Ⅱm7/Ⅴ))の形で使うことで滑らかで美しい進行が可能です。

Bメロ

キラキラ/Bメロ楽譜

1~5小節目

Cm→Fm→Bbm7→Db/Eb(Ⅲ→Ⅵ→Ⅱ→Ⅳ/Ⅴ)

定番の3645進行。
Cm→Fm(Ⅲ→Ⅵ)B♭m7→D♭/E♭(Ⅱ→Ⅳ/Ⅴ)、どちらともルートが完全4度進行となっているため、スムーズで非常に進行感の強いコード進行となっています。

6・7小節目

Cm→Fm→Ebm→Ab7(Ⅲ→Ⅵ→Vm→Ⅰ7)

Ⅰ7はセカンダリードミナントであり、ⅤmⅠ7に向かうリレイテッドⅡmとなっています。

8小節目

D♭M7→Ab/C→Bbm7→Db/Eb(Ⅳ→Ⅰ/Ⅲ→Ⅱ→Ⅳ/Ⅴ)

A♭/C♭(Ⅰ/Ⅲ)は、単純にA♭(Ⅰ)の転回系であるため、構成音は変わりません。
これによってⅣ→Ⅲ→Ⅱと滑らかに下降していくベースラインを作り出しています。

サビ

キラキラ/サビ楽譜

1~4小節目

D♭→A♭/C♭→B♭m7→A♭(Ⅳ→Ⅰ/Ⅲ→Ⅱm7→Ⅰ)

Bメロと同様、A♭/C♭(Ⅰ/Ⅲ)を使うことによってⅣ→Ⅲ→Ⅱ→Ⅰと滑らかに下降していくベースラインを作り出しています。

5~8小節目

D♭→A♭/C♭→B♭m7→C→Fm→E♭m→A♭7(Ⅳ→Ⅰ/Ⅲ→Ⅱm7→Ⅲmaj→Ⅵ→Ⅴm→Ⅰ7)

C(Ⅲmaj)は、Aメロに登場したC7(Ⅲ7)と同様にセカンダリードミナントです。

13~16小節目

D♭→A♭/C→C/E→Fm→B♭(Ⅳ→Ⅰ/Ⅲ→Ⅲ/♭Ⅵ→Ⅵ→Ⅱmaj)

C/E(Ⅲ/♭Ⅵ)はⅢの3度の音がルートにきている転回系のコードです。
Ⅵへと半音で繋がるベースラインが滑らかで、ドラマチックな響きです。

間奏

キラキラ/間奏楽譜

1~4小節目

A♭→G♭→E→D♭→E♭sus4→E♭(Ⅰ→♭Ⅶ→♭Ⅵ→Ⅳ→Ⅴsus4→Ⅴ)

シンバルを4分で鳴らす重めなドラムと、他楽器の一体感がカッコいいロックなパート。
モーダルインターチェンジを用いてほぼメジャーコードのみで展開されているところが、よりロック感を演出しています。

5~8小節目

ほとんどがオクターブ奏法で構成されたギターソロ。
オクターブ奏法はシンプルながら力強さがあるので、ポップスやロックのソロでもよく使われる奏法です。
イントロ、アウトロでもこの奏法が使われています。

Cメロ

キラキラ/Cメロ楽譜

6・7小節目

Fm→FmM7/E→A♭/E♭→Dm(♭5)(Ⅵ→ⅥmM7/♭Ⅵ→Ⅰ/Ⅴ→♭Ⅳm7(♭5))

この部分では半音でベース音が下降していく進行をとっています。
クリシェとは言えませんが、似たコード進行ですね。

クリシェ進行とは、「構成音のひとつを半音・全音ずつ変化させていくコード進行」です。

ポップスではクリシェはもちろん、クリシェに似たこうした半音階進行もよく使われます。

er-theory

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落ちサビ~ラスサビ・アウトロ

落ちサビ~ラスサビ

冒頭4小節はピアノ、アコギ、パーカッションのみになり、5小節目からキックが4分でなり始め、段々と盛り上がっていきます。
このラスサビ直前の「静かなサビ」を落ちサビと言います。

落ちサビがあることによって、最後のサビの盛り上がりをより際立たせることができます。

アウトロ

アウトロは基本的にイントロと同様のコード進行、メロディです。

最後はモーダルインターチェンジを用いた、定番のE→G♭→A♭(♭Ⅶ→♭Ⅵ→Ⅰ)で締め括られます。

まとめ:歌詞の解釈も深めていこう!

切なくも前向きなメロディ・歌詩と、一体感のあるリズムアプローチやコードワークによって最大限に生かされたバンドサウンドが、健気さと純粋さを感じさせる名曲。

この曲についてaikoさんは、「ひとりで聴いたときに「がんばろう!」と思う曲にしたかった」と話しているそうです。
恋愛のみならず、いろんな人にとっての応援歌になっていると感じます。

 

今回は、コード進行を中心に分析を行ってきましたが、aikoさんのすばらしさはその作詞能力にもあります。

以下にご紹介させていただく、『言葉を読みたい』様では歌詞のきらきらを歌詞の観点から分析・解釈をされています。
非常に納得できる内容となっていますので、ぜひご覧ください。

言葉を読みたい

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