【昼鳶/ヨルシカ】コード進行と分析

ヨルシカ3rdアルバム「盗作」に収録の「昼鳶」。
コードやメロディーから、楽曲の魅力を深ぼっていきましょう。
ここからの内容は、er-music編集部の独自の見解になります。 読者様との解釈に相違がある場合も、考え方の一例、また娯楽の一環としてご覧ください。 また、ダイアトニックコードの理解があるとより楽しめるかと思います。 >>ダイアトニックコードについて

全体を通して

ギタースラップが特徴的で、クールな楽曲です。
メロディーの跳躍も少なく、淡々と歌い上げている様子がマッチしています。

えるるん
裏声も使ってなくて、ヨルシカの他のヒット曲にある様な爽やかさは最低限に、ひたすらクール!
「ギタースラップといえば、MIYABI(ギタリスト)」という印象を持っている方は多く、昼鳶に見るキレキレでダークな印象のギタースラップも「MIYABI」っぽいと感じる方もいました。
曲の最後に入る舌打ちもあいまって、MIYABIの曲にも感じるアウトローな人間感が読み取れます。
『盗作』というアルバムネームからも、ある程度意図的に行なっているのかもしれません。

イントロ

イントロ楽譜

イントロは、スラップ強調部分。
4小節糸回しのイントロが3回(計12小節)も続きます。

十分にフレーズが耳に馴染み、イントロの雰囲気がこの曲の全体を支配している(中核にある)と理解できます。

コードは、ギタースラップのフレージングが生きるようシンプルな繰り返しです。

Aメロ

Aメロ楽譜

Aメロも、イントロと同じコードで、同じようなスラップフレーズが続いています。
この曲にはBメロがないので、サビに行くまでの間、ずっとこのノリが続くこととなります。

そのため、サビの変化によりインパクトを感じ、印象に残りやすくなります。

えるるん
この流れで、疾走感あって清々しいサビがやってくるとは考え付かないよね。

メロディーの特徴

出だしから1オクターブの跳躍が見られます。
前にメロディーがなく「変化」を感じないため、大きな跳躍の割にはインパクトは薄めです。それでも、歌詞の単語がよく耳につきます。

ここまで演奏でのインパクトが強かったので、メロディーに耳をグッと傾ける工夫とも考えられます。

えるるん
演奏の主張が強いから、メロディーに注目させられないとインストで十分になっちゃう!
4小節目ではブルーノート(A)が使われています。
この曲のちょっとスレた感じや、クールさを感じます。

サビ前(Aメロ)

サビ前楽譜

Bメロはなく、Aメロの後間奏を挟んで、もう一度Aメロを繰り返しています。
サビに進むセクションなので切り分けて紹介しています。

4小節目

ベース音を見てみると、『B→A#→F#→F→D#』と進行しています。
主音であるD#へと下行していくフレーズを、コード進行全体で表現しています。

1拍づつコードが変わるため、拍それぞれに重みができ、どしどしと重たく進行する感覚があります。

5小節目

ここでトニック(D#m)へ進み、一旦曲が落ち着きます。
セクションが終わった様な印象がありますね。

えるるん
ヨルシカの曲は、サビ前にトニックへ解決することが多い印象。
「花に亡霊」「春泥棒」「ただ君に晴れ」とか、どれもトニックへ解決して落ち着いてからサビへ進行しているよ!
3拍目からは、サビへのきっかけとなるフレーズが配置されています。

サビ前のフレーズ譜例

ここまでのタイトなギターの音色と違って、モジュレーションが深くかかったフワッとした音色です。
クールでアウトローな世界観を打ちこわし、爽やかさが生まれました。

メロディーの特徴

4小節目は、下行していくコードに合わせて、メロディーも下行しています。
下行で主音へ進むことで、強い落ち着きを感じます。

サビ前の”ひと段落感”はメロディーでも作られている様です。

サビ

サビ楽譜

1〜2小節目【D#m7→B→C#sus4→F#】

マイナートニック(D#m)から、メジャートニック(F#)へ進行しています。
このコード進行は、小室進行と呼ばれる定番進行です。

暗いところから、明るいところへ進んでいくことで、「暗い世界に光が差し込む様な」、切ないながらもどこか希望的な様子も感じます。

この部分の解釈

サビでは、2小節ひと塊のコード進行がループされています。
この進行は、『F#』に解決する上、2小節目と4小節目では、メロディーもF#音で終わっています。

コードがトニックへ終止し、その際メロディーも主音にあるものを完全正格終止と言います。
強い安定感と、メジャートニックの明るさが強く感じられます。

サビ以外は、D#mキーの世界観を強く感じますが、サビは程よく明るさを感じます。

7~8小節目【D#m7→C#/F→F#m→D#/G】

サビでは偶数小節は『F#』に解決していましたがここではそうさせません。
ぐるぐるとかき乱し、結局D#m7の世界に戻されます。

7小節目のコード進行は、『D#m7→C#/F→F#m→D#/G』はD#mから上行していくもの。
ギターで弾くと、ちょうど平行移動に近い形で弾ける様になっています。

このコードを都合のいい様に書き換えると『D#m→Fm#13(omit5)→F#m→Gm#13(omit5)』になります。マイナーコードがそのまま並行移動している様がわかります。

何か強引さも感じる進行なので、こうした解釈もありかと思います。
実際、ギターはパワーコードの並行移動で弾いています。

8小節目は、Aメロのサビ直前にあったD#mへと下行で落ち着く進行です。

まとめ

全体的に、タイトでクールな演奏であり、マイナーキーのダークさとスラップやブルーノートなどで感じるアウトローさに魅力を感じる一曲でした。

また、それと対比となるサビはキャッチーで、爽やかさを感じました。
ただ、ずっと爽やかに終わるわけでなく、サビの終わりは強引にも感じるコード進行でD#mの世界観に強制的にもどされます。
この強引さにも、前述しアウトロー感を感じられるのではないでしょうか。

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