星野源4枚目のアルバム『イエローダンサー』より「Friendship」を分析していきましょう。
Youtubeでも閲覧できる大阪上ホールの「friendship」のライブ映像は鳥肌ものでした!
最後3分近く続くアウトロは必見です。
今回の「friendship」の楽曲分析をつまみにしながら、是非映像を見てみてください!(記事最後にリンクを載せておきます。)
全体を通して
二つのギターの異なるカッティングは、片方が1つの弦を的確にピッキングする短音カッティング。
もう一つが、ダブルストップを多用したカッティングですね。
ベースは、ルート、オクターブ、5度の音が中心となるシンプルなもの。
コードが移り変わる際は、経過音を使った半音のアプローチなども加えています。
楽曲中に多用されているスタッカート、ゴーストノートのタイミングやスライドのニュアンスなど、グルーヴィーに演奏するのはなかなか難しいベースライン。
しっかりと音価をコントロールし、止めるべきところ、伸ばすべきところ、メリハリをつけて休符を演奏するような気持ちで弾いてみよう!
ドラムは4つ打ち。全体的にディスコファンク的でダンサブルなアレンジでありながら、切ない雰囲気のコード進行とメロディで構成されています。
オルガンのサウンドが切なくも懐かしいようなノスタルジーな雰囲気を醸し出しています。
基本的にそうですがこの曲は特に、「ドラムのビートを土台としてその中でベースに少し遊んでもらう。」そんな感じの演奏に感じます。
ドラマーは大活躍レジェンド河村カースケさん。シンプルかつグルーヴィーなビート、派手じゃないのにめちゃくちゃかっこいいフィル。憧れます。
実はこの曲はツインドラムで作られています。
それを意識してよく聞いてみると、二つのドラムの違いを感じることができます。
Aメロの情景表現
Aメロはコードこそ次々変わりますが、トップノートが固定されているため大きな変化を感じず緩やかに、静かにコードが移り変わる。そんな印象を受けます。
GM7(長7度=F#)→F#m7(ルート=F#)→Bm7(5度=F#)
Em7 (短7度=D)→F#7♭13(短6度=D)→GM7(5度=D)
といった形で、それぞれのコードトーン、テンションで来るトップの音を固定しています。
トライアドのコードより安定感のないセブンスコードが多用されていて、どことなく切なさを感じます。
イントロの雰囲気をそのまま引き継いでいるところも強く、Aメロの序盤にかすかに残るオルガンの音色もまた気持ちがいいですね。
緩やかなコードの移り変わりが、主人公が遠くを見つめながら思いにふける様子を表現しているのではないでしょか。
サビへのアプローチ
ここまで少し悲し気な雰囲気で曲が進行してきましたが、サビは歌詞も演奏も明るく変化します。
明るい曲への変化を与える、サビ前のアプローチが重要になってきますね。
サビ前の5小節を見てみましょう。
3小節目E7は、Aに向かうセカンダリードミナントとして。
CはDミクソリディアンからの借用コードと考えることが一般的でしょうか。
モーダルインターチェンジとかいいますね。
難しい言葉がいろいろと出てきましたが、要はちょっと難しいコードをここぞって時に入れてきたわけです。
A#7は難しく考えず、A7の半音上コードからのアプローチととらえて問題ないでしょう。
ここまで単調だった曲にノンダイアトニックコードを加えることで聴者にいい意味の裏切り、驚きを与えることができます。
そこからのサビは明るい雰囲気にシフトしていきます。
主人公は下向きで暗い感情ではなく、何か吹っ切れて明るく生きていこうとする前向きな感情なんだと、感じます。
Cメロの希望感
Cメロ「どこまでも どこまでも 続く旅の隅で」の部分は歌詞に合わせ、明るく上昇を続けるコード進行になっています。
最初のコードはDコードですが、ベース音をF#に変えることでベースがスケールに沿って上昇をしていくようになります。
JPOPでもよく使われる鉄板の分数コードで、明るく希望感のある進行になります。
ベースの緩やかなつながり・上昇が可視にもある「どこまでも続く道」のような奥行を表現しているように感じます。
ここでもトップノートはDに固定されています。
コードの進行と相まってさわやかさを増していますね。
希望感のあふれる、青空の下の長い長い道のような情景が思い浮かびます。
まとめ
儚げで、でも力強さも感じる一曲でした。
演奏には随所にファンキーかつR&B的な要素なんかも感じることができます。
そこに乗っかるピアノのバッキングやオルガンの音色がなんともノスタルジックな世界へと連れていってくれます。
一見シンプルな曲ですが、こういう曲こそ演奏が難しく、粗が目立つ。
是非楽器の一音一音まで聞きこんでほしい一曲です。