2020年、紅白歌合戦にも出場し、一躍人気アーティストへと変貌を遂げた瑛人。
そのきっかけになった曲『香水』。
キャッチーなメロディーと単純なコード進行。マネしやすさもあり、歌詞の内容が多くの共感を呼びましたね。
SNSでの拡散度合いに基づいて作成されるSpotifi バイラルチャートでは、メディアで取り出らされる前に、すでにランキング1位を獲得していました。
SNSの影響力は規模なムーブメントを作り出す時代なんだなと、そう感じざる負えません。
今回はそんな『香水』を分析していきしょう。
この曲のヒットの鍵を探っていきます。
全体を通して
アコースティックギターと瑛人さんのボーカルのみで作られている曲で、演奏自体はとてもシンプル。
コード進行も8小節の繰り返し。
この曲自体、ストーリーの進行というのはあまり感じられず、主人公の回想や願望が主となる曲に感じます。
実際感情の起伏こそあれど、決して何も変わらない。何もすすまない、もどかしさや虚しさのようなものを感じます。
ストーリーに大きな時間軸が存在しないように、コードも変化のないループするような形をとっているのかもしれません。
実際本人がここまで計算して作ってるのかは定かではありませんが、この曲のテンポとループするコードは、変化のない停滞している様を感じさせます。
コード進行:一瞬の緊張とキラーフレーズ
8小節のコード進行が延々と繰り返されます。
基本定番かつきわめてシンプルなコード進行ですが、6小節目はD#のダイアトニックコードから外れたコードが入っています。
これはCmにドミナントモーション(4度上のコードに行きたくなる強制力の強い動き)するためのセカンダリードミナントとしてG7が入っています。
難しい言葉の意味は今回置いておくとして、要は、キーD#の世界では普通入らない音が意図的に入れられているのです。
このG7によって、適度な緊張感がありキーD#であるけど明るすぎない、絶妙な暗さ・虚しさがある曲に仕上がっています。
6小節目の部分以外は非常にシンプルな進行になっています。
この進行を使う曲はいくらでもあり、ある意味では凡庸でありふれたコード進行といえます。
ただ、そこまでシンプルだからこそ6小節目のイレギュラーさが引き立つのだと思います。
この部分が、この曲のミソになるわけで、キラーフレーズ「ドルチェ&ガッパーナの」はここに入ります。
この歌詞が強烈に印象づくのは、そのタイミングでコードも緊張が走るように設定されているからでしょう。
おそらくではありますが、瑛人さんはこれを計算しているのではなく、感覚的にやられているのではないでしょうか。
いわゆる、センスというやつですか…
この曲が繰り返されるわけ
この曲が何度もカラオケやSNSで繰り返し利用される理由をまとめてみました。
SNSが重視される時代では、『繰り返される』ことは大きな売れる指標になります。
- メロディーのわかりやすさ・歌いやすさ
- 女々しい歌詞
- シンプルな曲
- ドルチェ&ガッパーナ
メロディーのわかりやすさ・歌いやすさ
無理のない音域で非常に歌いやすく、馴染みやすいペンタトニックスケールで構成されています。
最高音は『mid2G#』。一般的な男性がギリギリでるくらいの高音で、トレーニングをしていない男性でも、発生できる人がおおいのでしょう。
ビブラートや裏声などのテクニックもあまり使われておらず、だれが歌ってもそれなりに気持ちよく歌えるのです。
サビのメロディーがちびまる子ちゃんの「踊るぽんぽこりん」に聞こえた方も少なくないでしょう。(”ぴーひゃらぴーひゃら”の部分)
ペンタトニックスケールはJPOPのヒットソングでもよく使われており、歌いやすく、印象に残りやすいのが特徴です。
女々しい歌詞
最近の恋愛ヒットソングを見てみると、『女々しさ』が目立つように感じます。
この曲もしかりです。
およそ恋人と別れたあとの未練をうたった曲で、幸せだったころに戻れない切なさや虚しさを感じます。
比較的同時期の似た傾向のヒットソングとしては、『たばこ/コレサワ』や『別の人の彼女になったよ/wacci』など。
どれも別れた後の話で、元恋人への未練が読み取れます。
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昔に比べ、恋愛への抵抗感は極めて少なく、1人あたりが行う恋愛の回数も増えています。
数が増えていくと、どれが本当に求めていた愛なのかわかりにくくなってしまいますよね。
それを『未練』として認めたくない人はたくさんいて、そんなこころの奥底にしまった気持ちを代弁してくれるのが『未練』をうたった曲なのかもしれません。
シンプルな曲
香水は最近のはやりの曲に比べ非常にシンプルな作りをしています。
逆に、アニメソングやアイドルソングなどは作りこまれているといえます。
様々な楽器がいりまじり、ジャズで使われるような複雑なコード、高度な転調を繰り返すのが特徴的です。
香水のシンプルな雰囲気は、素朴でオーガニックな印象を与えますね。
コード進行もメロディーも楽器もすべてがシンプル。
そこにこの曲の美学があるのかもしれません。
ドルチェ&ガッパーナ
実際に現地の人は「どーるちぇ あーんど がっぱーなーの」と発音はしませんよね。
日本人らしいカタカナ英語。
それが逆にインパンクととなり、多くの人の耳に残ったと考えられます。
濁音があり語呂がよく、口ずさむだけで気持ちよく感じますね。
ドルチェ&ガッパーナの日本での認知度もある意味効果があったのかなと思います。
知っている人は知っている、知らない人は知らない。
共感だけでなく、ドルチェ&ガッパーナって何だろう。どんな香水なんだろうと思わせるのがうまかった。
「香りで昔の記憶を思い出す」という経験はだれしもが一度は経験しているでしょう。
「彼女を思い返してしまその香りとは。」
そうした興味を引けたのもこの曲がヒットした要因なのかもしれません。
まとめ
SNS内の民意が、よもや世界規模の影響力を与えてしまう時代。
こんな時代だからこそこの曲は日の目を浴びたのかもしれません。
もともと事務所に所属してなく無名だった瑛人さんの楽曲は、レーベルでなくSNSでの民意を獲得しリリースから若干遅れて代ヒットする形になりました。
今回の私たちが行った曲の解釈は独自の見解であるため、決して本人の意図と一致しているわけではありません。
ただ、こうして曲を分析していくことで、その曲の奥深さや、作曲者の意図を体感することができます。
これらは音楽の楽しみ方を今よりももっと増幅させますし、曲を作る場面なんかにも力を発揮します。
あなたが好きと感じている曲も、実はその表面部分しか味わえていないのかもしれません。
現在楽曲数が少なくご期待に沿えないかとは思いますが、是非知っているきょく がありましたらお立ち寄りください。