【プラスティック・ラブ/竹内まりや】コード進行と分析

大人的、都会的なサウンドで、現在もリバイバルを起こす日本のシティポップ
昨今のシティポップブームの中心ともいえるのが、竹内まりやのプラスティック・ラブです。
コード進行を中心に楽曲分析していきましょう。
ここからの内容は、er-music編集部の独自の見解になります。 読者様との解釈に相違がある場合も、考え方の一例、また娯楽の一環としてご覧ください。 また、ダイアトニックコードの理解があるとより楽しめるかと思います。 >>ダイアトニックコードについて

全体を通して

浮遊感のあるコードに、エレクトリックピアノの音色が目立つイントロの時点で、すでに都会的な雰囲気を感じます。

Dmのダイアトニックコードから外れた音も多く、大きな緊張感や不安定感のあるコード達が楽曲に奥行を作ります。

えるるん
終止どことない緊張感があふれていて、素直に明るくなく、それでも煌びやかで洗練された雰囲気に都会っぽさを感じる。
都会の喧騒、不安、夢、希望。こういうのが絡み合って混沌としている様子が、複雑なコード進行を生んでいるのかもしれないね。
平行長調である『F』に解決することはなく、Dmあるいは、Dメジャー系コードに解決しています。
その暗さがまた、『夜』の雰囲気を感じさせます。
ファンクにグルーヴィーなリズムも、この楽曲のクールさ、そして都会らしさの演出となっています。
※キーはDmとしていますが、分析記号は並行短調をⅠ(トニック)としています。

イントロ1

イントロ1楽譜

1小節目【B♭M7→F/A→Gm9】

『B♭M7』からベースが下行していく進行です。
トップノートがA固定されているため、統一感があります。

  • B♭M7のM7th(A)
  • F/AのM3rd(A)
  • Gm9の9th(A)

2小節目【Gm7/F→E♭9,13】

『Gm7/F』はGm7の第三展開系で、1小節目に引き続きベース音下行の流れを保っています。

『E♭9,13』は、2通りの解釈ができます。
一方は、♭Ⅶ(サブドミナントマイナー)という解釈。
もう一方は、Dmに対する裏コードです。

ここで解決してもいい雰囲気があるので、1小節飛ばした4小節目のDに対する裏コードだと考えられます
Bメロで『E♭9,13』が再度現れますが、そこではDmへ進行しているのも理由の一つです。

3~4小節目【B♭M7→Am7→Dadd9】

先ほどまでは、裏コードで偽終止だったこともあり緊張感強い状態です。

3~4小節目は、各コードトーンをなぞり下っていくメロディーが特徴的で、DのM3の音に行きつきます。
メロディーの下行は落ち着きを感じさせるので、これまでの緊張を徐々に緩和し解決します。

『Dadd9』は、Dmのm3rdが半音上がりメジャーコードになったものです。(9th音も付加されている)

この部分の解釈
マイナーキーの終止で、マイナートニック(Dm)の3度が半音あがったメジャーコードに解決することをピカルディー終止と言います。
先日紹介した、back numberの高嶺の花子さんでも使われていました。
メロディーの下行は、落ち着きに加え、暗さも感じさせます。
暗く落ち込んだところでDメジャーへの解決がされると、非常に希望的になります。
さらに、add9で綺麗な響きのコードとなり、暗い夜のなかの都会の煌びやかさまで感じました。

イントロ2

イントロ2楽譜

ここでの4小節は、この楽曲の土台となるコード進行です。
4小節で1周し、繰り返されます。

2小節目【C7♭9】

『C7』は、F(トニック)に対するドミナントコードです。
しかし、実際にはFへ進行せず、Am7へ偽終止します。

Am7もトニックの機能があると分類されるため、Fの代理コードに進んだと思えば違和感のあるコード進行ではありません。

ただ、そのままでは接続が滑らかではないので、♭9が付加されています。

通常、C7からFへ解決する際は、C7のトライトーン(M3rdとm7thの音程関係)がFの構成音へ半音解決することで解決感が得られます。
Am7への進行では、半音解決が1か所のみなので解決感は弱まりますが、♭9がAm7のm3rdに半音で進行します。

Aメロ

Aメロ楽譜

Aメロの進行はイントロと変わりません。
ここではメロディーを見ていきましょう。

1小節目:うきうきと弾むメロディー

音符をみても、跳躍したメロディーが上に下に行ったり来たりとしています。
体が自然と弾む、ウキウキとしたメロディーになっています。

えるるん
恋愛の高揚感を表現しているのだろうか。
この後の歌詞を見ると切なさを感じる部分が多いけど、切ない感情の中で一喜一憂する主人公がイメージできたよ!

3〜4小節目:下行で落ち着く

1小節目でも見たモチーフが、3〜4小節目にかけては下行するメロディーで終わります。

ウキウキとした気持ちを沈める、抑え込むように、下行メロディーで落ち着かせています。

主人公が恋に楽しみきれずに、悲しさも抱えている状況がイメージできました。

8小節目:Bメロへの緊張感の演出

Aメロ最期は、Bメロのメロディーがアウフタクトしています。

この上行メロディーからは緊張感を感じ、BメロGm9の9th音に行き着きます。

Bメロ

Bメロ楽譜

2〜3小節目【E♭9,13→Dm7】

イントロ1でも出現した『E♭9,13』です。

このコードは、Dm7に対するドミナントのA7コードの代理として使われている裏コードです。

A7と同じトライトーンを含むため代理として機能しています。

マイナートニックへの裏コード解決は、Jpopで頻繁に見られる進行ではありません。

KIRINJIのエイリアンズなど、ジャジーで都会的な楽曲でよく使われている印象です。

4小節目【G9】

『G9』は一小節飛ばした6小節目のC7♭9,13へのセカンダリードミナントです。

5小節目のGm7が間に入りますが、Cを一時的なトニックに見立てドミナントコードにしたものです。

メロディー

Bメロ2段目では『♩♫』のモチーフが頻繁に使われます。

4小節目のコード『G9』とメロディーの緊張感を、緩やかなリズムで徐々に緩和していきBメロを終えます。

えるるん
この頃の楽曲はメロディーを詰め込みすぎないイメージがある。もちろん歌詞もだけど、メロディー含めた演奏をじっくりと楽しむことができる!昭和のスローで平和な雰囲気にマッチしているのかもしれない。反対に、近代の世話しなく刺激のある世界には、言葉が詰め込まれた細かいメロディーが響くのかもしれない。

Cメロ前半

Cメロ楽譜

青く塗りつぶされたいる部分はBメロです。

1〜2小節目【B♭M7→C6】

『C6』は、Am7(Ⅲm7)と同じ構成のコードです。

C7よりは安定していて、ここからさらなる緊張感が訪れそうです。

5〜6小節目【Em7→A7♭9→Dm7】

『Em7→A7♭9』がツーファイブのモーションとなりDm7に解決します。

マイナートニック(Dm)へのツーファイブは通常、Em7-5が使われますが、ここではEm7を利用しています。

ノンダイアトニックトーンのBが含まれ、より緊張感が増しています。このツーファイブパターンも『エイリアンズ/KIRINJI』見られました。

7〜8小節目【B♭M7→C7→Am7→Dm7】

ディグリー表記でコードを見てみると『Ⅳ→Ⅴ→Ⅲm→Ⅵm』の王道進行の形となっています。

Cメロの中でもっともコード遷移する部分で、勢いがあります。

Cメロ後半

Cメロ後半楽譜

Cメロ前半の進行、メロディーを繰り返していますが、最後の解決するコード進行だけ異なります。

7〜8小節目【B♭M7→Am7→Dadd9】

イントロ1の終わりと同じ進行です。

メロディーもた高いところ(A)から、低いところ(D)へと下がり、落ち着きが生まれています。

えるるん
一気に下降するメロディでなく、ヒラヒラと下降し、Dに落ち着くところがまたおしゃれ!

まとめ

都会の夜の雰囲気を感じる洗練された一曲でした。

70〜80年代のシティ・ポップと言えば、おしゃれで複雑なコード進行の楽曲が多く、演出する世界観のクオリティも非常にたかい。そんな印象があります。

深みがあって情緒的な世界観に、ノスタルジーな感覚さえ覚えます。

楽曲、演奏、コードワーク、メロディー。どれをとっても現代のJpopとは異なり新鮮です。

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