【ハッピーエンド/back number】コード進行と分析

back number16枚目のシングル曲『ハッピーエンド』。
暗い雰囲気が漂う楽曲ですが、主人公の強い感情がヒシヒシと伝わってくるのではないでしょうか。
今回は、『ハッピーエンド』をコード進行の観点から分析し、魅力を深ぼっていきます。
ここからの内容は、er-music編集部の独自の見解になります。 読者様との解釈に相違がある場合も、考え方の一例、また娯楽の一環としてご覧ください。 また、ダイアトニックコードの理解があるとより楽しめるかと思います。 >>ダイアトニックコードについて

全体を通して

スローテンポでどっしりとした曲調です。
全体的に暗い様な、不安になる様な雰囲気が漂っていますが、サビの終わりをみると『A』をトニックとするAメジャーキーの楽曲であることが分かります。

そのため、暗いながらも希望的な様子も感じられます。
「明るい中の暗さ」や「暗い中の明るさ」に切なさを感じ、エモーショナルな気持ちになります。

イントロ

イントロ楽譜

ストリングスの活躍もあり、奥行きがあって壮大さを感じます。
前半3小節は、暗い雰囲気を感じますが、4小節目のB7を境に雰囲気が切り替わり、Aメジャーキーらしい明るさを取り戻していきます。

イントロ一つとっても、ドラマチックなストーリー性を感じます。

2~3小節目【C#7→C#7/F→F#m7】

『C#7』は、Dメジャーキーのダイアトニックコードに含まれないノンダイアトニックコードです。
F#m7を一時的なトニックと見立てて、ドミナントコードに変化させたコードで、セカンダリードミナントと言います。

『C#7/F』は、C#7の第一転回系で、C#7の構成音Fをベースに据えた形です。
F#m7に半音したからアプローチできるため、進行がスムーズで、F#m7がより強調されます。

チェック:転回系とは
コード構成音のいずれかをベース音にし、分数の形で表記されたコードを「○コードの転回系」と言います。(例えば、Cコードの構成音Gをベース音にした『C/G』)

コードの3度がベースになったものを第一転回系、5度がベースになったものを第二転回系、7度がベースになったものを第3転回系と言います。
9th等のテンションノートは転回系になりません。
▷転回系について詳しくはこちら

この部分の解釈

イントロ前半に感じる暗さは『C#7(セカンダリードミナント)→F#m7』の動きが作り出しています。
セカンダリードミナントによって、一瞬F#mキーの様な暗い雰囲気が漂うためです。

4小節目【B7】

『B7』もセカンダリードミナントで、6小節目の『E』を想定したコードです。

Eは、Dメジャーキーの純粋なドミナント(プライマリードミナント)ですから、B7は「ドミナントに対するドミナント(ダブルドミナント」と言えます。

この部分の解釈

2小節目の『C#7』は、F#m7をトニックと見立てるため暗い雰囲気を感じさせました。
反対に『B7』は、トニック(D)を想定したドミナント(E)をトニックに見立てるため、明るい雰囲気を感じさせます。

『C#7→F#m7』のネガティブな雰囲気を跳ね除けるポジティブさ、力強さがあり、ここを起点に明るさを感じる進行へと変化していきます。

Aメロ

Aメロ楽譜

1~2小節目【Dadd9→Aadd9】

9thが加わった『add9』コードの響きが煌びやかで、少しフワッとした脱力感も感じます。

イントロが壮大で力強かったこともあり、力みが抜け、穏やかな印象でAメロが始まっています。

3~4小節目【Bm7→F#m7】

1〜2小節目の明るさとは一転、3〜4小節目は暗く、F#mに落ち着いています。

この部分の解釈

Aメロでもところどころで暗い雰囲気を感じます。
こうした全体的な暗さが、主人公のネガティブな感情を表現されている様に思います。

Bメロ

Bメロ楽譜

1〜2小節目【D→C#7→F#m→A】

ここでも『C#7→F#m』の動きが見られます。
『C#7』はセカンダリードミナントで、『F#m7』が一時的なトニックとして強調されています。

ただ、このあとすぐにトニックの『A』に進むため、サビで感じた様な暗さよりは軽い印象です。

4小節目【C#sus4→C#】

Bメロの最後のコードですが、ここもF#mを想定したセカンダリードミナント『C#』が使われています。

また、C#sus4を挿入することで、C#への進行を遅らせて「溜め感」を作り出しています。
ここまでC#が強調されると、次はF#mに進むことを予感させます。

実際には、サビ頭の『DM7』に進行しますが、F#mキーよりの世界観が強まります。

サビ

サビ楽譜

1~2小節目【DM7→E/D】

『DM7→E/D』は、D→Eの進行のベース音をDに留まらせた形です。
そのため、前に進んでいる感覚は弱まりますが、バンドインのタイミングと重なるため壮大で、どっしりとした印象が感じられます。

3〜4小節目【C#7→Fdim→F#m7】

『C#7』は、ここまで何度も出てきたセカンダリードミナントです。

『Fdim』はC#7と構成音が近しく、C#7の代理コードとして機能しています。

コード構成音
C#7C#,F,A#,B
FdimF,A#,B

C#7同様に、F#m7への進行を予感させます。

15小節目【A】

ここまでの暗い雰囲気は、『A』で終わることで払われます。

ただこのコード一つで、これまでの暗さが全て吹き飛ぶかと行ったらそうでもありません。
この部分の歌詞「なんてね嘘だよごめんね」と照らし合わせてみれば、絞り出した明るさや、空元気の様に感じます。
こうした歌詞と演奏の連動性も、名曲には大切な要素です。

16小節目【Dm】

『Dm』はサブドミナントDがマイナーになった形でサブドミナントマイナーと言います。

Amキーのダイアトニックコードとも言えますが、Aメジャーキーの上では切なさや哀愁を感じられるコードです。

まとめ

歌詞まで見てみると、「失恋」や「引き裂かれた恋」の様なテーマ性がある様です。
暗くも、ほのかに明るさがあり、それがまた切なさを感じます。

暗いと明るさの塩梅も計算されている様に思えます。

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