ドラマ「彼女はキレイだった」の主題歌に起用されたSexyZoneのニューシングル『夏のハイドレンジア』。
秦基博さんが作詞作曲を担当されていることでも話題となっている楽曲です。
今回もコード進行や演奏から分析をしていき、作曲者の意図を探ってみましょう。
全体を通して
ミドルテンポでバラードチックな楽曲です。
全体を通して見てみると、オンコードが多用されているのが特徴的です。
ここには、コードやベース音をスムーズにしたり、響き豊かにする意図が感じられます。
物語のストーリー性や展開が重要となるバラードやJpopといったジャンルで、長く結果を残してきた秦基博さんの表現力が光ります。
イントロ
イントロ部分では、サビのメロディが使われていますね。
この部分のコード進行の解説は、『4章:サビ』で解説いたします。
お先にAメロをご覧ください。
Aメロ
1〜2小節目(G/F→C/E)
G/F(V/Ⅳ)→C/E(Ⅰ/Ⅲ)の進行が特徴的ですね。
上のコードだけ見ると、不安定なドミナント(G)からスタートし、安定のCトニック(C)へと解決します。
ここの4小節は、ベースラインが4→3→5→6となっているため、その部分だけ見るとよく見る進行にみえますね。
5〜6小節目(F→F/G)
分数コードが使われていますがまず上のコードだけ見てみましょう。
Fコードが2小節間続いています。
ただこの先、トニックであるCに解決したいので、セオリーとしてはF→Gと進んだ方が自然です。
音の響きをあまり変えずに、F→G→(C)の動きを作るためにF/Gとしていると考えられます。
Bメロ
1〜4小節目(Dm→G→Em→Am)
分数コードも上の音だけをみれば、ここまで単純で滑らかな進行をしていました。
Bメロは変化が強く、ⅡmであるDmから始まります。
4小節の進行の中でも、「安定感」と「変化」が感じられます。
Dm→Gは強進行で滑らかさがあり、このままCへと解決するような安定感のある動きと言えます。
次にCへと解決せず、Em→Amとまた強進行で進みます。
Emに飛ぶことで変化を感じられますね。
5小節目(B♭)
ここにきてノンダイアトニックコードが現れました。
キーであるCからみて♭ⅦであるB♭ですが、「ハツ」とするような強烈な違和感を感じます。
ここは、モーダルインターチェンジが使われていて、Cmスケールの♭ⅦであるB♭を一時的に借りてきたと解釈できます。
サビ
3~4小節目(G#dim→Am)
サビでは所どころ『G#dim』が出てきます。
これは次のAmへと解決するためのセカンダリードミナントである『E』の代理コードであると考えられます。
5小節目(F→G/F)
この部分を上のコードだけで見ると、『F→G→Em→Am』と、JPOPでもよく見られる王道進行の形をとっています。
ベース音だけをFで留まらせるためにオンコードとしています。
前半4小節でdimを使ったりと比較的重たい印象のある進行だったので、ここで落ち着きを生み出しているように感じたよ!
8小節目(G/B)
ここもオンコードが使われていますね。
このコードは、9小節目のAmへスムーズに接続するためにGコードの第2音である『B』をルートとしています。
第1転回系と呼ばれるものです。
9~10小節目(Am→E7)
8小節目では『C』に解決しているため、キーはCメジャーであると考えられます。
しかしここは、非常にマイナーな雰囲気が強く、Aマイナーキーに一時転調しているように思えます。
次のE7は、AメロディックマイナースケールのⅤ7にあたります。
13~14小節目(F→G→E7/B→Am)
ここも上のコードだけを見れば、『F→G→E7→Am』と王道進行をアレンジした進行をとっています。
5~6小節目と同じですね。
このうち『E7』はAmへの動きの強制力を高めるセカンダリードミナントです。
さらに、5~6小節目との差別化の意味合いでも、E7の第3音である『B』をベース音としています。
こうした全音上からのスケールアプローチもポップスではよく見られるアレンジングです。
まとめ
作詞作曲が秦基博さんということで、JPOPの要素がふんだんに感じられる曲でした。
オンコードを使ったアプローチや、「Aメロ」「Bメロ」「サビ」のそれぞれの展開の多様さとストーリー性に関して、非常に学びになる楽曲だと思います。
同じドラマのオープニング曲となった『夏の午後はコバルト/Awesome City Club』もご覧ください