【夏の午後はコバルト/Awesome City Club】コード進行と分析

夏の午後はコバルトは、テレビドラマ『彼女はキレイだった』のために書き下ろされた一曲です。
楽しげで爽やかさな一曲で、夏を強く感じる一曲ですね。

コード進行から、作曲の意図を考えていきましょう。

ここからの内容は、er-music編集部の独自の見解になります。 読者様との解釈に相違がある場合も、考え方の一例、娯楽の一環としてご覧ください。 また、ダイアトニックコードの理解があるとより楽しめるかと思います。 ダイアトニックコードとは?

全体を通して

スタッカートやシンコペーションが目立つ、リズミカルな伴奏です。
16分の4つ打ちも相まって程よい疾走感があり、軽快に歩いているイメージが付きます。

奥行のある複雑なコードも多く、おしゃれな雰囲気も漂っています。
ブルージーなコードもあったいりと、大人視点の夏模様を表現しているように。

Aメロにおいては、マイナーコードが一つもない明るく爽快感のあるコード進行です。
Bメロでは下属調(サブドミナントの調)に転調していたりと、見どころ満載です。

イントロのコード進行

楽譜イントロ

1小節目【A7→A7/C#】

通常のメジャースケールであれば、『A』か『AM7』が使われそうですが『A7』となっています。

『A7』はブルージーな表現をしたいときによく使われます。
Aミクソリディアンモードからのモーダルインターチェンジと考えることもできます。

モーダルインターチェンジとは、普段扱う長調や短調とは違う『モード』という世界からコードを借用してくる技法です。
詳しくは、モーダルインターチェンジとはをご覧ください。

『A7/C#』は、A7の第1転回系で、分数コードやオンコードと言われるコードです。

えるるん
ブルージーなコード感から陽気で楽し気な雰囲気を感じるね!

2小節目【D#9-5omit3】

『D#9-5omit3』(#Ⅳ7)は、一般的に見れば裏コードとして登場することが多いですが、今回でいえばサブドミナントマイナー的に使われているようです。

サブドミナントマイナーは、その名の通り『サブドミナントがマイナー』になったものです。
Aメジャーキーで言えばDm(Dm7)が該当します。

このコードをサブドミナントマイナーたらしめるポイントは、Aから見て短6度(F)の音が入っているかどうかです。
そのため、Fを含むコードをサブドミナントマイナーの代理と考えることができます。

『D#9-5omit3』はDm7と共通する音が2つもあるね!

コード構成音
Dm7D,F,A,C
D#9-5omit3D#,,A,C#,E#(F)
えるるん
Aメロ4小節目では、『D#9-5omit3』が『G9』に代わっているね。
G9も同じくサブドミナントマイナーと解釈できるから、やはりサブドミナントマイナーが意識されているね。

4小節目【D/E】

『D/E』は、上に乗るコードがDとなっていますが、『Esus4(9)』と言い換えることができます。

E7系のコードなので、ドミナントとしての役割があり、Aへと自然に進行します。

通常のE7ほど解決感はありませんが、少しふわっとしたニュアンスでおしゃれな楽曲によく合います。

Aメロのコード進行

楽譜Aメロ

4小節目【G9】

『G9』はG7に9の音が乗っかった形です。
イントロ4小節目でも解説しましたが、Aから見て短6度の音を含むG7はサブドミナントマイナーと解釈できます。

8小節目【F#7(♭13)】

キーAの上での『F#7(♭13)』は、Ⅱm7である Bm7を一時的なトニックと見立てたセカンダリードミナント解釈することが多いですが、ここでは例外のようです。

というのも、次のBメロ1小節目からは、キーDへと転調しています。
であれば、「このコードが転調のきっかけとなっている」と考えるのが自然です。

キーD上での『F#7(♭13)』は、Dの並行短調『Bm』に対するドミナントコードです。
実際には、Bmに進まないため偽終止と呼ばれる進行ですが、キーBm(D)の色を強めて転調のきっかけとしているようです。

Bメロのコード進行

楽譜B

ここからキーDへ転調しています。
転調のきっかけである「Aメロ8小節目」と「Bメロ5小節目までの進行」を見るとBmキー(Dの並行短調)にも感じますが、最終的にDへ向かう動きとなっているのでキーはDとします。

1~2小節目【GM7→F#7(♭13)→Bm7】

『GM7→F#7(♭13)→Bm7』は、丸の内サディスティックやjust the two of usで有名な『Ⅳ→Ⅲ7→Ⅵm』進行です。
詳しくは、『just the two of us進行とは?』で解説いたします。

F#がBmに対するセカンダリードミナントですので、Bmキーとしての雰囲気が強い暗い進行です。

3小節目【E7/G#】

『E7/G#』は、E7の第一転回系で、コードトーンのうち長3度のG#がルートとなっています。

要はE7 のコードなのですが、E7(Ⅱ7)はダブルドミナント(ドッペルドミナント)と呼ばれたします。
キーDのドミナント(A)に対するドミナントのことを指します。

実際にはAへと進行せずに、GM7(Ⅳ)へと進行します。
第1転回系となり、ベースがG#となることで、GM7への進行もスムーズになります。

えるるん
加えて、E7とGM7の構成音って似てるよね。
それもあって以外にスムーズに進行してくよ!
コード構成音
E7E,G#,B,D
GM7G,B,D,F

サビのコード進行

楽譜サビ

1~2小節目【D→Daug/A#→D6/B→D7omit5/C】

一見複雑な進行ですが、Dコードの完全5度(A)の音を半音づつ上げていく進行です。
こうしたコード構成音の一部を半音、または全音づつ動かしていくことをクリシェと言います。

ここでは、変化させた5度をベース音において、ベースラインもクリシェしています。

2小節目3拍目で到達する『D7omit5/C』は、次のGM7に対するセカンダリードミナントとして機能しています。

3~4小節目【GM7→F#/A#→Bm7】

『GM7→F#/A#→Bm7』を切り取ると、Bメロ1~2小節目でも解説したjust two of us進行をしているため、暗い雰囲気があります。

6小節目【Am7→D7】

『Am7→D7』は、7小節目のGM7を一時的なトニックとみたててツーファイブワンのモーションをとっていると考えることができます。
キーGからみたⅡm7が『Am7』、V7が『D7』です。

D7をセカンダリードミナント
そこへ向かうAm7をリレイテッドⅡmとよびます。

7小節目~8小節目【G#m7-5→GM7→F#m7→F7(13)】

ルート音が半音づつ下行していく進行です。

『G#m7-5』は、GM7のベース音を半音上げたコードです。
トニックの代理コードとされることがありますが、ここで言えばGM7のルートが半音で変化しているだけなので、ベースラインクリシェと考えることができます。

『F7(13)』は、次のEm7を一時てきなトニックとみたてた場合の裏コードです。
裏コードは、あるコードに対する本来のドミナントコードの代理となるコードです。

えるるん
Em7に対するセカンダリードミナントはB7。
B7の代理となるのが、F7。
これが裏コード

#IVから半音づつ下行していく進行といえば、aikoの楽曲が有名です。
例えば、カブトムシのサビでも#Ⅳからの下行が使われています。
ここでは、少し変わったアプローチもされていますので、ぜひ参考までにご覧ください。

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10小節目【F#→Em7→C/D→B6(9)】

このコード進行は、間奏のキーAへと転調するためのアプローチです。

この進行をすべてAを主軸に考えるならば、以下2つのパターンで解釈できます。

  1. Aフリジアンモードを想定したコード進行
  2. Aメジャーキーの上で、ノンダイアトニックコードをつかった進行

フリジアンモードの並びに関しては『モーダルインターチェンジ一覧表』をご覧ください。

このコード上でのメロディーがAメジャースケールで収まっているので、『2』の解釈で進めていきます。

F#|(♭Ⅵ)

『F#』は、キーAから見た♭Ⅵに該当するので、サブドミナントマイナーと考えることができます。

えるるん
この曲には何度もサブドミナントマイナーが表れているので、この楽曲の雰囲気づくりのポイントとなっているのかもしれないね!

Em7|(Ⅴm)

Eはドミナントですが、Emへと変わるとドミナントマイナーといいます。
実は、サブドミナントマイナーは、Aの同主短調(Aマイナー)から借用されているコードですが、ドミナントマイナーも同様にAマイナーからの借用和音です。

間奏(イントロと同じ)1小節目はA7ですので、Em7を加えると、Dへと進むツーファイブワンにも考えられます。
キーDの名残をのこし、転調の違和感を緩和しているのかもしれません。

C/D|(♭Ⅲ)

『C/D』は、単に『C(厳密にはCadd9)』と捉えることも、『Dsus4(9)』と捉えることもできます。
Cとすれば、Aから見た♭Ⅲのコードですので、前2つのコードと同様に、Aマイナーキーからの借用和音です。

こちらの考えのほうが、流れにあっているように思います。

B♭6(9)|(♭Ⅱ)

Aへと半音上からアプローチするコードですが、6thコードでかつ9thが加わっています。

♭Ⅱは裏コードとして使われるパターンと、サブドミナントマイナーとして使われるパターンをよく目にします。
これまでの進行をみても、まずはサブドミナントマイナーの線を考えるべきでしょう。

『B♭6(9)』の構成音と、Dm7(サブドミナントマイナー)の構成音を見比べてみると、ほとんど同じであることがわかります。
ここではサブドミナントマイナー兼、Aへと半音アプローチするコードして使われているようです。

コード構成音
Dm7D,F,A,C
B♭6(9)B♭,D,F,G,,C
この部分の解釈
解決先のA7は、ミクソリディアンのコードで♭7(G)が特徴の、ブルージーなコードです。
こうしたマイナーキーからの借用もブルージーな表現の一つとして使われます。
あらためて考えてみると、この部分のほとんどのコードがGの音を含んでいますね。
  • Em7の♭3=G
  • C/Dの 5th=G
  • B6(9)の6th=G

Aマイナーから借用したコードが多かったですが、6thを入れたりするなど共通する音をキープし、A7への進行を滑らかにしています。

まとめ

出だしからノンダイアトニックなコードが登場しましたが、非常に親しみやすいサビメロに心が躍る一曲でした。

加えて、JPOPではあまり使われないようなコードが頻出しましたね。
コードを複雑にしても、楽曲が破綻せず、軽やなコード進行となっていました。
音楽力、表現力の高さに、非常に勉強になる一曲でした。

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