コロナ禍で中止となった全国高等学校総合体育大会の運営担当だった学生からback number宛に送られた手紙。それをきっかけに作られた楽曲『水平線』。
イレギュラーな状況下で苦渋を味わうこととなった学生にむけられた楽曲はどう言ったものなのでしょう。
コード進行や演奏を軸に分析していきましょう。
全体を通して
演奏
BPM73とスローテンポなバラードソング。
ちょうど心臓の鼓動くらいの速さで、心地よく浸りながら聴くことができます。
演奏やコード進行は非常にシンプルで、サビではやっとストリングスが入ってきます。メロディーにも頭が出て、サビらしい迫力が感じられます。
作曲の意図
水平線とは、『海と空との境として見える平らな線』のこと。
歌詞を見てみると「自分にとっての正しさは、他の誰かの正しさではない」「自分が悲しんでいる裏では、喜びを感じている人もいる」といった様な意味合いを感じました。
こう言った表裏一体の様子を「水平線」というワードで表現しているのかと思います。
その点で見ると、演奏にも「明るさ」「暗さ」をさも表裏一体かのように取り入れていることに気付けます。
イントロやサビでは、セカンダリードミナントやディミニッシュを駆使して、明暗をきちんと区別しているので、注目したいポイントですね。
イントロ(メッセージ性を感じる長尺)
ここまでシンプルで長尺なイントロは最近あまり聴きません。
さながらMr.children。シンプルであるが故に、なにか意図を感じるセクションですね。伝えたいなにか、表現したい何かがあるようです。
4小節目(D7/A)
その観点をもつと、まず4小節目のD7/Aが特徴的なコードです。
このコードはセカンダリードミナントと呼ばれるもので、次のGmをトニックと見立ててDmをドミナント(ドミナントセブンス)コードに変換したものです。
これにより一時的に、Gmがトニックと捉えられるので、Gマイナーキーの響きが強くなります。
Aメロ(明暗が分けられた進行)
Aメロもイントロ同様、明るさと暗さが混在していて、2小節ごとにぐるぐる切り替わる様になっています。
コードにダイアトニックの度数、機能を当てはめてみると以下の様になります。
前半(明るい)
『Ⅰ(トニック)→Ⅴ(ドミナント)→Ⅳ(サブドミナント)』
後半(暗い)
『Ⅵ(トニック)→Ⅲ(ドミナント)→Ⅳ(サブドミナント)』
対極的な動きをとっていることがわかりますね。
Bメロ(サビへと向かう希望的な進行)
最初Cmはサブドミナントの機能をもつコードです。
今までの「明」「暗」で区別すると、中間的で境界の役割を持つ様に感じます。
ただし、前半2小節の着地はGmとなっているので、暗い要素をより強く感じます。
サビ(水平線を意識させるdimコード)
サビでは、ストリングスが入りいっそうドラマチックでキラキラとしたセクションになっています。
ここでも『明るさ』『暗さ』の対比が行われております。楽譜青線がその部分で、黄色線は境界線、切り替わりのきっかけとなるコードです。
1〜2小節目(B♭→E♭→F)
ここは明るい進行。
2小節目(F#dim)
コードとコード(ここでいうFとGm)を繋ぐディミニッシュコードをパッシングディミニッシュと言ったりします。
3〜4小節目(Gm→Dm→E♭→F)
Aメロの3〜4小節目とほとんど同じ進行をとっています。
暗さを感じる進行ですが、明るい5小節目にスムーズに解決します。
歌詞の解釈も楽しもう
歌詞と連動し、コード進行にも明暗を作り出していることがわかりました。
実際、本人は感覚的に作ったものかもしれませんし、もっと深い思いを細部に取り入れていたかもしれません。
それを知るためにも、今度は歌詞に目を向けて曲を見ていきましょう。
『なるさんの考察日記:【歌詞の意味】back numberの「水平線」のここがすごい!「あなた」の悲しみが、誰かの幸せを支えている』では、この観点での解釈に突出しており、非常に納得させられる解釈を得ることができました。
是非一度ご覧になったうえで、水平線を聞き直してみましょう。
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