今や日本で知らない人はいないであろう国民的人気バンド、ヒゲダンことOfficial髭男dism。
そんな彼らが初めてリリースした1stミニアルバム『ラブとピースは君の中』の1曲目に収録されているこの楽曲。
今回はポップで踊れる隠れた名曲『SWEET TWEET』を分析していきます!
全体について
誰しもが経験したことのあるような、甘酸っぱい青春のラブソング。
ポップでダンサブルな曲調でありながら、ファンキーなベースにギター、時にブルージーなメロディーが抑えきれない恋心を感じさせます。
楽器全体はそんなに難しいことをやっているわけではありませんが、それ故に全体のリズムがポイント。
16分のノリを感じるこの楽曲ですが、ドラムはほとんど16分音符を出しておらず、
ピアノやギターのカッティング、ベースのスタッカートなど、アンサンブルによってファンキーなノリが生まれています。
イントロ
1~6小節
コード | B♭M7→Am7→Gm7→Am7→Dm7 |
ディグリ ー表記 | ⅣM7→Ⅲm7→Ⅱm7→Ⅲm7→Ⅵm7 |
イントロからEarth, Wind & Fireを彷彿とさせるような、印象的なピアノのフレーズからスタートします。
ところどころスタッカートで演奏されており、出だしから聴き手にファンキーな雰囲気を感じさせます。
7・8小節
コード | D♭M7→E♭M7 |
ディグリ ー表記 | ♯VM7→♯ⅥM7 |
♯VM7→♯ⅥM7という進行を経て冒頭のサビへ繋がります。
♯VM7と♯ⅥM7はモーダルインターチェンジによって同主調から借用してきたコード。
サビ
1・2小節
コード | Gm7→C7→C7(♭9) |
ディグリ ー表記 | Ⅱm7→Ⅴ7→Ⅴ7(♭9) |
Ⅱm7→Ⅴ7→Ⅴ7(♭9)のツーファイブ。
Ⅴ7(♭9)の部分ではメロディがレbに行っています。
V7上でb9のオルタードテンションの音を使うのはジャズではよくあることで、メロディにこれを取り入れるだけでもジャジーな雰囲気を醸し出すことができます。
7・8小節
コード | Dm7→Cm7→F7 |
ディグリ ー表記 | Ⅵm7→Ⅴm7→Ⅰ7 |
I7はセカンダリードミナントであり、それに向かうⅤm7はリレイテッドIIm7の役割を持っています。
F7(I7)をVと考え、Cm7(Vm7)をIIm7として使うことでツーファイブの動きをしているというわけです。
Aメロ
1~8小節目
コード | Gm7→C7→C7(♭9)→Am7→Am7/D→Dm7→Gm7→C7→C7(♭9)→Am7→Am7/D→Dm7 |
ディグリ ー表記 | Ⅱm7→Ⅴ7→Ⅴ7(♭9)→Ⅲm7→Ⅲm7/Ⅵ→Ⅵm7→Ⅱm7→Ⅴ7→Ⅴ7(♭9)→Ⅲm7→Ⅲm7/Ⅵ→Ⅵm7 |
Aメロでは、C7以外のコード上でもレbの音が頻繁に使われています。
この楽曲に度々登場するレbについては、ブルーノートスケールが使われているという解釈ができます。
ところどころブルーノートが入ることによって、憂いを帯びた雰囲気を醸し出しています。
Bメロ
1~8小節目
コード | Gm7→C7→C7(♭9)→Am7→Am7/D→Dm7→Gm7→C7(♭9)→Am7→Dm7 |
ディグリ ー表記 | Ⅱm7→Ⅴ7→Ⅴ7(♭9)→Ⅲm7→Ⅲm7/Ⅵ→Ⅵm7→Ⅱm7→Ⅴ7(♭9)→Ⅲm7→Ⅵm7 |
楽器全体のアクセントが一拍目ではなく二拍目にくるシンコペーションが繰り返される印象的なBメロ。
四つ打ちの流れから唐突にリズムが変わるので、聴き手側は意表を突かれます。
ハンドクラップも効果的に使われていて、キャッチーでクセになる要素が満載。この曲のフックになっているパートといえます。
間奏
間奏は1分近いギターソロのパートとなっています。
G7とD7(#9)の2コードで展開され、ドラムはシンプルな四つ打ちをキープしていたところから、ここではファンキーな16ビートを叩いています。
ラスサビ
1~8小節目
コード | B♭M7→A7→Dm7→G7→Gm7→C7→C7(♭9)→Am7→Dm7 |
ディグリ ー表記 | ⅣM7→Ⅲ7→Ⅵm7→Ⅱ7→Ⅱm7→Ⅴ7→Ⅴ7(♭9)→Ⅲm7→Ⅵm7 |
レとレbを繰り返すメロディがソウルフル。半音を行き来するような、歌メロというよりもフェイク的なフレーズが感情の高まりを演出しています。
「愛する君の声はメロディ 恋する僕刻むメモリー」の歌詞が繰り返されアウトロへ。
アウトロ
1~5小節目
コード | DbM7→EbM7→EM7→GbM7→Ab7(#9) |
ディグリ ー表記 | ♯ⅤM7→EbM7→EM7→GbM7→Ab7(#9) |
DbM7→EbM7→EM7→GbM7→Ab7(#9)
Fメジャーキーで進行してきたこの曲ですが、最終的にはAb7(#9)で終わります。
イントロでも登場したモーダルインターチェンジによる転調によって、あふれる思いを感じさせるような浮遊感とともに上昇、
最後はブルージーにAb7(#9)で締めくくるという粋な終わり方。
まとめ
信じがたいことに、この曲は「インディーズデビューで発売した1stミニアルバムに収録されている楽曲」です。
藤原聡さんの表現力、他メンバーの巧みな音使いと演奏・アレンジ、ポップに聴かせるバランス感など、細部まで考え抜かれた名曲だと思います。
デビュー時からこれほどまでの実力とセンスを持ち合わせていたことを考えると、売れてるべくして売れたバンドだったと言えるでしょう。
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