【 真夜中のドア〜Stay With Me/松原みき】コード進行と分析

世界的に空前のシティポップムーブメントが起こりました。
密かに高まっていた日本のシティポップへの注目は、『真夜中のドア〜Stay With Me』の発掘により爆発的なものとなりました。
世界魅了する『真夜中のドア〜Stay With Me』の特徴をコード進行中心に分析していきましょう。
ここからの内容は、er-music編集部の独自の見解になります。 読者様との解釈に相違がある場合も、考え方の一例、また娯楽の一環としてご覧ください。 また、ダイアトニックコードの理解があるとより楽しめるかと思います。 >>ダイアトニックコードについて

全体を通して

この曲の基本情報

  • 作詞/作曲:三浦徳子/林哲司
  • キー:F
  • BPM:108
  • 発売:1979年11月5日

夜の都会に光るネオンの様に、優しく温かみのあるエレクトリックピアノの音色に、コーラス、しっとりとしたバンドイン。
心地よい静けさがあって、喧騒から解放されたような安らぎ感があります。

コード進行が基本サブドミナント(GM7やGm7)から始まることもあり、少し落ち着きがなく、哀愁も感じられます。

また松原みきさんの、伸びやかな歌声に奥行きを、後ろよりのリズムにもどかしさを感じます。

えるるん
個人的には、やっぱり松原正樹さんのアウトロまで続くギターソロがたまらない。
力強くはあるけどすごく切なくて…

イントロ

イントロ楽譜

1〜2小節目【B♭M7→A7】

『B♭M7』は、Fメジャーキーの中でサブドミナントの機能を持ちます。
少し不安定な響きで、そのぐらつきが叙情的に聞こえます。
もちろん後のコード進行によるところもありますが。

『A7』は、Dm7に対するセカンダリードミナントです。
非常に不安定に響くコードともあって、さらに感情が溢れ出す様な、気持ちが熱くなる様子が感じられます。

チェック:セカンダリードミナントとは?
セカンダリードミナントは、ダイアトニックコード一番目のコードであるトニック(『I』あるいは『Im』)以外のダイアトニックコードを一時的なトニックと見立てて、その5度上のコードをドミナントコードに変化させたものです。 ▷セカンダリードミナントについて詳しくはこちら

3〜4小節目【Am7→Dm7】

2小節目の『A7』は次にDmへ進むことを予感させますが、『Am7』を一旦経由しています。

『Am7』は、Fメジャーキーの純粋なダイアトニックコードです。
1〜2小節目の『B♭M7→A7』のコード進行は、緊張感のある響きでしたが、『Am7』を緩和されます。

これは、ノンダイアトニックコードがダイアトニックコードに戻ったこともそうですが、『Am7』がトニック機能も持つことも関係しているでしょう。

この部分の解釈

『Am7』のメロディーを見ると、ちょうどロングトーンの箇所で、音符の多い2章よりか落ち着きを感じます。

エレクトリックピアノにかかるモジュレーションの様に、1〜4小節の間で「緊張感と安定感」「不安感と落ち着き感」をゆらゆらと行ったり来たりしています。
これが、まさに感情の揺らぎとして感じられ、主人公の心情がよりリアルに想像できます。

この場合で言えば、サブドミナント(B♭M7)始まり、マイナートニック(Dm7)終わりですので、とても明るい感情ではありません。

主観ですが、「不安や切なさはあるが、でも幾分か落ち着いている様子」を感じました。
例えば、「別れてから、いくらかの月日が経って落ち着いているが、心が満たされない状態」の様な。

5〜6小節目【Gm7→Gm7/C】

『Gm7→Gm7/C』はツーファイブ進行で、『F』への進行を予感させます。
『F』へ進むため明るく、また『F』にある落ち着きを求めるため、前向きな印象のあるコード進行です。

『Gm7/C(IIm/V)』としていますが、ドミナントである『C7(V7)』の代わりとしてよく使われるコードです。

Gm7(IIm7)と音があまり変わらないため、ガツガツした響きでなく、スマートで爽やかな印象があります。
V7ほどの解決感はありませんが、ドミナントの機能は持っています。

えるるん
『Gm7/C』の構成音はC,G,B♭,D,F
言い換えれば、『C7sus4(9)』!
ドミナントとして機能するのもわかるね!
ちなみに、『C7sus4(9)』ということは、3度がないコードになります。
こうした分数コードをハイブリッドコードと言ったりします。

7~8小節目【F→B♭/F→F|→E♭/F→B♭/F】

ここから4小節間はつねにベースがFを鳴らしています。
こうした、コード進行の中で固定された音をペダルポイントと言います。

トニックをペダルポイントとして進行は、どっしりと安定的で、また安心感もあります。
『E♭』は♭VIIのコードですが、『F7sus4(9)』にも捉えられるでの、『B♭』の安定感が増します。

えるるん
1〜6小節と違って明るくて、耳馴染みのいいコード進行だね!!
ルートが停滞しているところにも、次の展開までの力を蓄えている様で、Aメロへの期待感が高まります。

Aメロ

 

Aメロ楽譜

Aメロは上の4小節を2回繰り返します。

1〜2小節目【Gm7】

『Gm7』もB♭M7同様にサブドミナントの機能を持つコードです。
やはり、どこか落ち着かない雰囲気で、なんだかそわそわしている様にも感じます。

この部分の解釈

コードは同じですが、1小節目は尻上がりなメロディーで、2小節目は尻下がりなメロディーです。
歌詞を見てみると、1小節目が「私は私」2小節目が「あなたはあなた」となっています。

同じコード、同じモチーフの中でも、対比したメッセージが感じられます。
相性が合わない元恋人同士でしょうか。

3〜4小節目【FM7】

『Gm7』のどこか落ち着かない雰囲気がここで解消されます。

『FM7』に解決し、ロングトーンを取ることで、非常に落ち着いた印象となっています。
1〜2小節目では、歌詞とメロディーで対比がありました。
ここでは、腑に落ちていた様な、主人公の落ち着きを感じます。

Bメロ

Bメロ楽譜

1~2小節目【Gm7→A7→Dm7】

『Dm7』に向けて『Gm7(サブドミナント)』→『A7(ドミナント)』と進みます。
これまでのコード進行よりも、暗く、不安感を感じます。

3~4小節目【B♭m7→F/A→Gm7→Gm7/C】

1〜2小節目と真逆に、『F』へ進むことを予感させるコード進行で、明るい雰囲気があります。

IVからの下行進行はよく使われますが、単純にAm(IIIm)に下がらず、F/Aとトニック(I)の第一展開としています。
より、明るく安定的な進行となり、1〜2小節目と明確に対比されています。

えるるん
『F/A』の部分に来る「はなれていった⤴︎」のメロディーが陽気にも聞こえる。

サビ

サビ楽譜

決して荒々しくはないのに、心が叫んでいる様な激しく、悲痛な感情が伝わってくきます。

1~2小節目【B♭M7】

『B♭M7』が2小節続くことと、1小節1拍目のロングトーンが特徴的です。

Bメロに比べてゆったりと聞こえる進行で、なかなか前に進んでいかない様なもどかしい気持ちにさせられます。

3〜4小節目【Am7→A7】

『A7』は、Dmに対するセカンダリードミナントですので、強い緊張感を感じるコードです。

ダイアトニックコードの『Am7』から『A7』に変化することで、一層ノンダイアトニック感に気付きやすく、緊張感が高まります。

この部分の解釈

1〜2小節目では、Bメロと比較してゆったりと感じ、それがもどかしくも感じました。
また、この部分のメロディーには4度跳躍があり、パワフルな歌唱と相まって力強くも感じます。
例えば、何かを掴み取ろうと手を伸ばしているけど、掴めない様な。

対して、3〜4小節は緊張感こそありますが、先ほどに比べて、メロディーの大きな跳躍もなく、歌唱からも力強さを感じません。
崩れ落ちる様な弱さ、不安感がイメージできます。

5~6小節目【Dm7→DmM7/C#→Dm7→Bm7-5】

『Dm7→DmM7/C#→Dm7』は、Dmのルートが半音で下行していく進行です。
こうしたコードの構成音の一部を半音や全音で変化させていく手法をクリシェと呼びます。

DmからDの音が半音で下がり続けると、最終的に『Bm7-5(#IVm7-5)』に行き着きつきます。

コード 構成音
Dm D,F,A
DmM7 C#,D,F,A
Dm7 C,D,F,A
Bm7-5 B,D,F,A

そもそも暗く響くDm。そこから、音が半音で変位していくため緊張感が強く、不安を煽る様な2小節間です。
『Bm7-5(#IVm7-5)』は、トニックの代理として使われることもあるため、一定の収まり感がありますが、下行の力はまだ強くまた響きも暗くあります。

参考:マイナーセブンフラットファイブ(ハーフディミニッシュ)とは

7~8小節目【Gm7→Gm7/C】

先ほどのクリシェにあった、どこまでもネガティブに落ちていくような下行の力は、『Gm7』を1小節の尺で取ることで打ち切られます。
メロディーも、サビの中で最も高低差のある上行メインなものなので、明るく前向きさを感じます。

えるるん
上行一辺倒のメロディーでもないので、陽気とまではいかないけど、しっとり前向きさが垣間見えていく様に感じたよ!

間奏(key=A♭)

間奏楽譜

上譜面の最初4小節は、Cメロの前の2サビ終わり部分です。
ここでは、説明のため左上からそのまま1小節目としてカウントします。

5小節目【B♭m7/E♭→E♭7】

『B♭m7』と『E♭7』はFメジャーキーでいうサブドミナントマイナーコードです。
同主短調から借用した和音ではありますが、よく頻繁に使われるため、コード一つ一つは聞き馴染みがある方も多いかと思います。

ただ、ここでは『B♭m7/E♭』という形をとっています。
このコードは要は『E♭7sus4(9)』と同じコードであり、ドミナントセブンスの3度が省略されたハイブリッドコードです。

これまでに出てきた『Gm7/C』と役割は同じ立ち位置です。

ここで転調しますが、『E♭7』は転調前のFメジャーキーに対する『♭VII7(サブドミナントマイナー)』ですが、転調後のキーの『V7』としても機能しています。

この部分の解釈

『B♭m7/E♭』の時点では、サブドミナントマイナー的でノンダイアトニックな緊張感ばかりが目立ちます。
次に『E♭7』に進むと、『○7sus4→○7』という動きが生まれます。
ドミナントのsus4は、サブドミナント的な印象も与えるので、ここでサブドミナント→ドミナントの動きが生まれます。

それもあって、このコードが別のキーの『V7』として聞こえやすくなります。
そもそも、『B♭m7/E♭→E♭7』でツーファイブモーションが見えてはいますが…

6小節目〜【D♭M7〜】

A♭メジャーキーに転調しています。
A♭メジャーの平行調はFマイナー。転調前がFメジャーですので、同主短調(Fm)の平行調(A♭)に転調した形です。

メジャーマイナー同一に考えるなら、単に、同主調へ転調したと解説する方もいるでしょう。

13小節目【Gm7/C】

これまでのサビ前同様に、『Gm7/C』がサビにつなげています。
A♭メジャーキーから見たら『VIIm』ですが、Fメジャーキーの『V7』としても機能しています。

サビ前同じみのキメが入ることで、より明確に元の世界に戻ってきた様に認識できます。

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