Official髭男dismメジャー2枚目アルバムに収録されている『BedroomTalk』
タイトルのからも想像できるように、優しさと愛しさにあふれていて、清らかな気持ちに戻してくれるような楽曲でした。
今回も、コード進行を分析していき、この曲の”良さ”を探っていきましょう。
全体を通して
スロウなバラードソングです。
基本的には8小節ひと塊で進行していきます。
譜割やリズム、演奏に急激な変化がなく、終始落ち着いた雰囲気が漂っています。
演奏の特徴
『ネオソウル感』がこの楽曲の最大の特徴といえるでしょう。
なんともおしゃれで心地がいいですね。
この雰囲気が生まれる最もな原因は、ギターのフレージングでしょう。
コードのテンションを上手く当てたり、ダブルストップといった技術が多用されていたり…
Bedroom Talkのギターアレンジは、ネオソウルギタリストの有賀教平さんが担当しています。
恐ろしく技術とセンスがあふれている方で、今音楽界でも大きく注目されています。
またプロデューサーはドラマーのmabanuaさん。
着飾らないシンプルなリズムパターンでありながら、拍を微妙に遅らせてたたいているため少し重たくも感じます。
ギターによる音の広がりと、ドラムのグルーブ感が優しくおしゃれな雰囲気を醸し出しています。
優しく聞こえる正体
ほとんどの人が「優しい楽曲だな」と感じるのではないでしょうか。
この曲が優しく感じるのにはいくつかの理由があります。
- テンポが遅い
- 音色が柔らかい
- ダブルストップなどでスライドやプリングが多用されている
- 音圧の低さ
- キーの主音であるBへの解決
まずテンポの遅さは、優しさや悲しさを感じさせます。「優しいような悲しいような」って混同しやすいですよね。
加えて、モジュレーションが深くかかった柔らかい音色からもやさしさを感じます。
ネオソウル系の演奏なので、ダブルストップのような奏法がよくつかわれますが、スライドやプリングといった音をスムーズにつなげる(レガート)動きが特徴的です。
音の滑らかで、角がない音になるので、これもやさしさを感じさせます。
イントロ
基本的に、イントロと同じようなコード進行を1曲通して、循環し続けています。(厳密には若干異なる)
そのため、コード進行においてはイントロを押さえておけばある程度理解できるでしょう。
1小節目(BM7→D#7→(G#m7))
この曲のキーはB。最初のコードも『BM7』から始まります。
その曲の根幹となる落ち着いたコードをトニックコードと言ったりします。
明るい曲であると、簡単に予想することができますね。
3拍目の『D#7』は次のG#m7に向かうセカンダリードミナントと呼ばれるものです。
G#m7を一時的なトニックとみたてて『D#m7』をドミナントセブンスコードに変化させた形になります。
この部分だけを切り取れば、G#mキーの響きがあり、暗い雰囲気が漂います。
2~3小節目(F#m7→B9→(EM7))
『F#m7』はドミナントマイナーとも呼ばれるコードですが、その後の動きを見るとEM7へツーファイブワンの動きをとっていることがわかります。
一時的にキーEメジャーととらえて、Eからみた2番目のコードである『F#m7』5番目のコードである『B7(B9はB7に9thの音が乗ったもの)』の動きをとっているのです。
EM7にスムーズに動くことができ、おしゃれな雰囲気も醸し出していますね。
4小節目
『C#m7』が1小節まるまる続いていますが、最後2拍はオンコードが使われていて、ベース音が『F#』に動いています。
おしゃれな系の曲ではよく使われるアレンジで、ドミナントコード(ここでいうF#コード)の代わりとしてこのようなコードにされています。
音の動きが少なく、なめらかにBM7へと進むことができています。
5~8小節目
これまでの4小節を繰り返します。
Aメロ
コード進行はイントロと変わりません。
しいて言えば、『D#7』に+9(#9)と-9(♭9)の動きが見えます。
G#m7へ半音の動きが増えるので、よりスムーズにコードが進行しているように見えます。
Bメロ
1小節目(BM9)
Bメロ冒頭が同じBコードであるのに、何かAメロと違う響きがして、「物語が進んでいるんだ」と感じさせます。
5小節目(C#9)
イントロ・Aメロと大きく異なるのが、この『C#9』です。
このコードは、次の小節のF#(正確にはC#m7/F#)に向けたセカンダリードミナントです。
サビ
サビはこれまでの決まり切ったコード進行から若干異なります。
4小節目(F#→Gdim7→(G#m))
『F#』は単純にキーBのドミナントにあたるコードです。
ここで次にBに解決せずに、『Gdim7』へ進みます。
Gdim7はパッシングディミニッシュと呼ばれるもので、コードとコードの間に差し込むことができるディミニッシュコードです。
前後を見てみると、『F#』と『G#m』に挟まれていますよね。
ちょうど『Gdim7』が入ることで半音の滑らかな動きが形成されています。
5~6小節目(G#m→G7aug→B/F#(→C#7))
一見複雑なコードですが、ここはベースラインクリシェが行われています。
『G#m』から、ルートのG#の音を半音づつ下げていくとこうしたコード進行になります。
このままクリシェを続けるなら、『B/F#』の次は『Fm7-5』になるかとは思いますが、構成音の近い『C#7』に進んでいます。
『C#7』は、次の『C#m7/F#』へのセカンダリードミナントともとれるため、Bメロで出てきたとき同様明るい雰囲気を感じさせます。
まとめ
とにかく「やさしさ」や「愛」を感じる曲でした。
歌詞も甘くて素敵な表現がよく見られます。
コード進行や歌詞を見ると、「悩みや不安のような苦悩はあるけれど、そんな自分を愛してくれる人を見つけ、自分を好きになっていく」といったストーリーなのかなと思います。
今回は、難しいコード進行はあまりなかったのですが、ネオソウルのような高度な演奏に魅了されました。
Official髭男dismの引き出しの多さ、新たな音楽への追及力が垣間見えたように思います。
ここまでの内容を一つの考え方ととらえて、ぜひもう一度『Bedroom Talk』深く聞きこんでみてください。