サザンオールスターズの3作目のシングルとして1979年に発売された楽曲。
今回は、JPOP界屈指の名バラードである「いとしのエリー」を分析していきます!
全体を通して
構成
イントロ→Aメロ→サビ→間奏→Aメロ→サビ→ラスサビ→アウトロ
この楽曲にはBメロがなく、Aメロから滑らかにサビへ入っていきます。イントロも4小節と短めで、ラスサビからアウトロへの流れもスムーズ。
間奏では8小節使っているものの、ギターとオルガンの情緒あるソロが良い味を出していて、聴き手を飽きさせないパートになっています。
全体として、バラードの中では非常にコンパクトにまとまっているポップな楽曲といえます。
イントロ
1~4小節目
コード | D/A→G♯m7(♭5)→G→D/F♯→Em7→A7 |
ディグリ ー表記 | Ⅰ/Ⅴ→♯Ⅳm7(♭5)→Ⅳ→Ⅰ/Ⅲ→Ⅱm7→Ⅴ7 |
美しいコーラスとウインドチャイムの音色とともに、ギターのアルペジオがフェードインしてくる印象的なイントロ。
『D/A(Ⅰ/Ⅴ)』はⅠの5度がルートになっている、第二転回系のオンコードです。
『G♯m7(♭5)(♯Ⅳm7(♭5))』は、Ⅳmaj7のルートが半音上がっているコード。
一般的に、トニックの代理として扱われています。
先ほどのD/Aに若干の緊張感があったので、ここである程度落ち着いたようにも感じます。
同時にⅣへの経過和音として使われているとも考えられます。
Aメロ
1~4小節目
コード | D→Dmaj7/C♯→D7→G |
ディグリ ー表記 | Ⅰ→Ⅰmaj7/Ⅶ→Ⅰ7→Ⅳ |
2小節目ではⅠmaj7のコードを弾いている部分でベースはⅦの音を鳴らしています。
これは、Ⅰmaj7の長7度の音をルートに持ってきた第三転回系のオンコードと捉えることができます。
Ⅰ→Ⅰmaj7→Ⅰ7という元々のコードの流れがあり、Ⅰmaj7を転回させることでⅠ→Ⅶ→Ⅰという半音で動くベースラインを作り出していると解釈できます。
コード内の一部を上行・下行していくことをクリシェというよ!
3小節目のⅠ7はセカンダリードミナント。
セブンスコードは元々ブルージーな響きを持っていますが、1小節目のⅠとの対比がより哀愁を感じさせています。
4小節目はⅣへ。
Ⅰ7→Ⅳの進行は、セカンダリードミナントからサブドミナントへのドミナントモーションとなっています。
5~8小節目
コード | Em7→A7→D→E7→G→A7→D→B7 |
ディグリ ー表記 | Ⅱm7→Ⅴ7→Ⅰ→Ⅱ7→Ⅳ→Ⅴ7→Ⅰ→Ⅵ7 |
ツーファイブワンからのⅡ7。
Ⅱ7はセカンダリードミナントです。
Ⅳ→Ⅴ7→Ⅰと進み、サビ前でⅥ7へ。
Ⅵ7はセカンダリードミナントであり、これはサビ冒頭のⅡに対するドミナントコード。
サビ前にこれをもってくることで、緊張感が増すと同時にⅡへ進行することを示唆するような役割を持たせていると解釈できます。
サビ
1~4小節目
コード | Em7→A7→F♯m7→Bm→Em7→A7→F♯m7→Bm7 |
ディグリ ー表記 | Ⅱm7→Ⅴ7→Ⅲm7→Ⅵ→Ⅱm7→Ⅴ7→Ⅲm7→Ⅵm7 |
1~4小節目は、2-5-3-6の進行が使われています。
この進行はⅡm7→Ⅴ7、Ⅲm7→Ⅵ、どちらとも完全4度進行(ドミナントモーション)となっているため、スムーズで非常に進行感の強いコード進行となっています。
サビ冒頭のⅡm7上では、9thの音が多用されたメロディを歌っています。
5~8小節目
コード | G→A7→F♯m7→B7→G→A7→D→E7→G→A7→D |
ディグリ ー表記 | Ⅳ→Ⅴ→Ⅲm7→Ⅵ7→Ⅳ→Ⅴ7→Ⅰ→Ⅱ7→Ⅳ→Ⅴ7→Ⅰ |
5~6小節目は4-5-3-6進行のⅥがセブンスコードになった形。
7~8小節目はⅣ→Ⅴ→ⅠからⅡ7を挟んで、再びⅣ→Ⅴ→Ⅰに着地します。
ラスサビ
10~11小節目
コード | D→E7→G→A7 |
ディグリ ー表記 | Ⅰ→Ⅱ7→Ⅳ→Ⅴ7 |
10~11小節にかけてリットしていき、アウトロへ繋がります。
12~15小節目
コード | D→G♯m7(♭5)→G→D/F♯→Em7→A7 |
ディグリ ー表記 | Ⅰ→♯Ⅳm7(♭5)→Ⅳ→Ⅰ/Ⅲ→Ⅱm7→Ⅴ7 |
アウトロ部分である12~15小節目。
ここではイントロと同様の進行で進みますが、最後はA7で締めくくられています。