【もう少しだけ/YOASOBI】コード進行と分析

「もう少しだけ」は、『めざましテレビ』のテーマソングとして起用された楽曲です。

あさの情報番組にピッタリな、陽気であたたかな印象を感じました。
「さあ今日も楽しんでいこう」と元気が出る楽曲ですね!

この楽曲の細やかな工夫を紐解いていきましょう。

ここからの内容は、er-music編集部の独自の見解になります。 読者様との解釈に相違がある場合も、考え方の一例、娯楽の一環としてご覧ください。 また、ダイアトニックコードの理解があるとより楽しめるかと思います。 >>ダイアトニックコードについて

全体を通して

緩やかなテンポにハネたリズムが、ステップしているような雰囲気を感じさせますね。

コード進行は、Bメロ以外『カノン進行』の形をとっていますが、原型とは違ったアレンジが聞いています。

  • アレンジ1:オンコードを駆使して、ベース音を下行する進行に
  • アレンジ2:E♭(トニック)を多めに取り入れている

注目すべきは、2つ目のほうでしょうか。
オンコードの形にはなりますが、E♭が頻繁に現れることがわかります。

えるるん
メジャーキーのトニックは落ち着きがあってとても明るいコード。
この曲の表現する、「弾む気持ちや」「希望的で明るい様子」がコードアレンジから感じ取れるね!

イントロ

イントロ1の楽譜

しっとりと、こもった音のピアノインで楽曲が始まります。
5小節目はコードなしの1小節で、電子ドラムの音がギャップとなり、ここからの展開を期待させます。

全体的な進行

イントロの時点ですでにカノン進行が意識されていることがわかります。

カノン進行は『Ⅰ→Ⅴ→Ⅵm→Ⅴ→Ⅳ→Ⅰ→Ⅳ→Ⅴ』といった進行です。
(この表記がわからない方はダイアトニックコードの記事をご覧ください。)

まず4つ目のコードが違いますね。E♭がのっかているためⅠと表記していますが、Ⅴが意識されています。
次に4小節目が大きく異なりますが、ここもコードが細分化されていますが、大きく分けると『Fm →B♭』の動きです。
Fm はA♭の代理コードにあたるので、ほぼ『Ⅳ→Ⅴ』といったカノン進行通りの動きとなっています。

4小節目(Fm→Gm→A♭→A#m7-5→B♭)

先ほども触れましたが、ここのコード進行は大きく見ると『Fm→B♭』という単純な進行です。

この部分は、ベースの動きに着目したコードワークとなっています。
『Ⅱ→Ⅲ→Ⅳ→#Ⅳ→Ⅴ』とスケールを上がっていくスムーズな進行になっていますね。

この中で『Am7-5』だけがノンダイアトニックコードとなりますが、このコードはA♭M7のルートだけが半音上がった形と表現できます。
要は、ベース音に半音の動きを作るために用いられた経過音的なコードです。

この部分の解釈
このイントロ1以外を聞いてみるとわかりますが、本来この動きはベースパートが担っているので、コードとしては単純に『Fm→B♭』とみても問題ないでしょう。
この動きは1曲を通して頻繁に現れます。
スムーズで軽やかな様子が感じ取れます。

冒頭サビ

冒頭サビの楽譜

先ほどのイントロ1と大きくは変わらず、「その続き」といった進行です。
同様のカノン進行アレンジです。

6小節目(Bdim→Cm)

前半4小節と明らかに違う点がまず5小節目の『Bdim→Cm』でしょう。

『Bdim』は、Cmに対するセカンダリードミナント、『G7』の代理として使われているコードです。
それぞれの、構成音を見比べてみるとほとんど同じで、G7のルート省略型であることがわかります。

コード構成音
G7G,B,D,F
BdimB,D,F
この部分の解釈
Cmへ半音下からアプローチする形となっています。
Bdimの時点でCmが来ることが予見でき、より『Cm』の響きを際立たせています。

7小節目(Am7-5)

イントロでも出てきたコードで、A♭M7のルートが半音上がった形です。
B♭への流れをスムーズにする目的で使われていると考えられます。

イントロ2

イントロ2の楽譜

冒頭のサビと大きく変わらない進行です。
3~4小節目では、シンコペーションにより動きが大きくなっていきます。

2小節目(E♭/B♭→E♭)

ここまで、E♭/B♭に加えて、E♭に進行するようになっています。

次のA♭ですので、ベースラインが『B♭→E♭→A♭』と進行するようになっています。
これにより、ベースラインが4度上へと進行する強進行になり、推進力が生まれています。

この部分の解釈
4小節目のシンコペーションしかりですが、強進行によってさらに躍動感のあるコード進行になりました。
冒頭サビの落ち着きから解放され、体が軽くなったようにも感じます。

7小節目(A♭→B♭→Gm→Cm7)

『A♭→B♭→Gm→Cm7』(ディグリー表記で『Ⅳ→Ⅴ→Ⅲm→Ⅵm7』)は王道進行と呼ばれるコード進行です。
カノン進行の中に現れた、これまた鉄板のコード進行です。

王道進行はメジャー系なのかマイナー系の進行なのか判別しにくいところがありますが、それだからこそ5小節目の『Fm7 →B♭』のツーファイブと呼ばれる動きの先の、解決感がきわだちます。

Aメロ

Aメロの楽譜

曲の中で、もっともリズミカルなセクションでシンコペーションも多めです。

えるるん
サビのほうが落ち着いた演奏なんだね。
この部分の解釈
こうしたリズムの違いで、「主人公の様子」を表現しているように感じます。
Aメロのリズミカルな雰囲気からは「ウキウキした様子で、軽快なステップで歩いている様」。
サビはもっと『心の余裕が増え、穏やかで落ち付きが生まれ、緩やかに歩いている様』に感じました。
こうした『リズム』は、人の運動的な感覚にリンクするところがあり、BPMやリズムパターンで主人公の様子や物語の状況をイメージさせることができます。

2小節目(Cm7→Bm7→B♭m7)

Cm7から、コードが並行移動しています。勢いを感じるコード進行ですね。

B♭m7はノンダイアトニックコードですが、A♭を一時的なトニックととらえるとⅡm7にあたるコード進行です。
そのため、スムーズにA♭へと進行することができています。

3小節目(Gm7→Cm7)

Aメロは最もリズミカルで、勢いのあるセクションです。
『Gm7→Cm7→Fm7』は強進行ですので、イントロ2でも説明したように推進力の強い進行となります。

この部分の解釈
7小節目はあえて強進行の形をとっていません。
3小節目は勢いを出すための進行。
Bメロへ近づく7小節目は、あえてブレーキをかけるように強進行でないものを採用しているのだと感じました。

Bメロ

Bメロの楽譜

1~2小節目

ここも若干違いますが、王道進行の型をとっています。
気になるのは2小節目頭のコードですね。

2小節目(Bdim)

『Bdim』といえば、冒頭サビでも出てきましたね。

おおむね役割として似ていますが、このBdimは若干違う解釈をすることができます。
このコードはパッシングディミニッシュと呼ばれるもので、コードとコードの間に挿入し、動き滑らかにすることができるコードです。

ここでは、B♭とCmの間をつないでいます。

この部分の解釈
とはいえ、王道進行が想定されるので、2小節目頭にくるのはGmコード。
それをセカンダリードミナント(G7)として変化させて、その代理として扱っていたといえば、冒頭サビと同じBdimであるとも言えます。
ただ今回は、事実としてB♭とCmに挟まれているdimコードですので、「パッシングディミニッシュ」と言うべきでしょう。
えるるん
サビは、冒頭サビと同じ進行になるので割愛!

まとめ

スキップしたくなるような、明るくて柔らかい楽曲でしたね。

コード進行の土台は、一貫して『カノン進行』ですが、こまやかなコードアレンジが随所に見られました。
それぞれのセクション、小節で雰囲気を作り出すために最適なコードとなるよう、一つ一つ書き換えていってるようです。

強進行のアイデアや、カノン進行のアレンジ例としてなど、大いに勉強になる楽曲でした。

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