非常に頻繁に使われる定番コード進行の一つにカノン進行があります。
今回は、カノン進行がどのようなコード進行で、どのように使われているのかを解説していきます。
「コード進行」を詳しく理解したい方は、コード進行とは?をご覧ください。
カノン進行とはどんな進行?
カノン進行とは、クラシック音楽に由来する有名なコード進行で、JPOPのヒットソングにも数多く取り入れられている定番のコード進行です。
中世ヨーロッパの作曲家、ヨハン・パッヘルベルの楽曲のカノン部分のコード進行が元となっています。結婚式の
原曲はDメジャーキーで構成されており、『C→G→Am→Em→F→C→F→G』となります。
他のキーでも応用できるようディグリー表記に直すと『Ⅰ→Ⅴ→Ⅵm→Ⅲm→Ⅳ→Ⅰ→Ⅳ→Ⅴ』となります。
例えば、山下達郎さんの『クリスマス・イブ』にもカノン進行が取り入れられており、間奏部分にはカノン進行の元となっている、カノンの一部分が挿入されています。
カノン進行の特徴
まず、トニックコード(T)から始まることと、サブドミナント(SD)→ドミナント(D)の進行で終わるため次のトニックが予想できることから、全体的に明るい進行になります。
「明るく始まり、不安定なところからまた明るいところへと回帰するような希望的な印象」を感じます。
原曲は、コードの最高音が緩やかに下り、2小節2拍目から緩やかに上がるようになっています。
Iのトニックからなるコード進行でもあるので明るく、その上で穏やかさが感じられます。
ただし、カノン進行を採用している楽曲がコード最高音の動きを同じようにしているとも限らないので、原曲ほど穏やかに感じないこともあるでしょう。
コードだけで見れば、前半はT→Dの動きが激しく、後半はSD→D→(T)と落ち着きを取り戻す進行となっています。
緩急があってドラマチックな印象があります。
カノン進行が使われた楽曲
カノン進行は令和の楽曲でも日常的に使われています。
ただ、最近は、カノン進行をそのまま使用するというよりは、カノン進行に少しづつアレンジを加えた進行が流行であるように感じます。
例えば、official髭男dismやking gnu、星野源などなど,,,
少しおしゃれなアレンジが施されたカノン進行を使った楽曲がたくさん確認できました。
ですので、以下では2つのパターンに分けて使用例を紹介していきます。
- カノン進行がそのまま(そのままに近い形)使われている楽曲
- カノン進行をアレンジしている楽曲
それぞれの良さを感じつつ、アイデアとして吸収していきましょう。
カノン進行がそのまま(そのままに近い形)で使われている楽曲
クリスマス・イブ/山下達郎
イントロからカノン進行が使われています。
1章でもお伝えした通り、間奏部分はカノン原曲をイメージされていたセクションで、メロディがオマージュされています。
クリスマスのしとしととした静かできらびやかな雰囲気とよくマッチしており、洗練されたカノン進行とハーモニーからは教会のような神聖さまで感じます。
さくらんぼ/大塚愛
ポップなはじける明るさが魅力の一曲です。
サビにカノン進行が使われています。(カノン進行後半部分は王道進行の形にアレンジされていますが。)
カノン進行前半のT→Dの動きと、裏打ちのビートが相まって、躍動感を感じる軽快で明るいサウンドとなっています。
恋するフォーチュンクッキー/AKB48
こちらもサクランボに引き続き裏打ちですが、ディスコらしさを感じる楽曲です。
BPMが122で、歩くよりは少し早く、終止リズミカルな高揚感があります。
サビでカノン進行が使われていますが、進行が1周するまでに8小節かかることもあって、AメロBメロに比べ穏やかさが感じられます。
そのため、サビ5小節目で現れるG(IV)の印象も強く、叙情的な様が濃く感じられます。
カノン進行が使われている他の楽曲
- にじいろ/絢香
- さくら(独唱)/森山直太朗
- 優しいあの子/スピッツ
- HOWEVER/GLAY
- マリーゴールド/あいみょん
カノン進行をアレンジしている楽曲
カノン進行を大幅にアレンジされた楽曲を紹介します。
ハナミズキ/一青窈
はじめワンコーラスは伴奏はピアノがメインで、穏やかで落ち着いた雰囲気にあふれています。
Aメロは純粋にカノン進行が使われていますが、サビではアレンジがされ区別されています。
サビの進行は以下の通りで、一見全く異なる進行に見えますが、赤くマークしたコードを一時的なトニックととらえドミナントモーションを作り出したものです。
こうした、『I→VIIm7-5→III7→IVm→Vm7→I7→IV・・・』の進行は土台にはカノン進行をがありながらも、セカンダリードミナント等で動きが増しドラマチックさが増します。
チャーリーパーカーの楽曲コンファメーション(ジャズ)でこの進行が使われているんだ!
BOY/King Gnu
クラシカルな上品さと、ロックな荒々しさを感じる一曲。
冒頭が複雑なコード進行になっていますが、土台にカノン進行を感じます。
いずれのノンダイアトニックコードも、次のコードへ進行するためのセカンダリードミナントや裏コードとなっています。
オリジナルのカノン進行からは遠く離れたようにも見えますが、それぞれの機能は大きく変わっていません。
まとめ
カノン進行は、JPOPだけで見ても頻繁に使われるコード進行です。
元はパッヘルベルのカノン(厳密には、パッヘルベル『3つのヴァイオリンと通奏低音のためのカノンとジーグ ニ長調』のカノン部分に使われている進行)から来ており、穏やかさや神聖みを感じられます。
カノン進行を知っているだけで、明るくドラマチックな楽曲を簡単に作れますが、よくも悪くも定番になりすぎてしまった節があります。
そのため、進行をアレンジして使う方も多くいます。
カノン進行らしきコード進行をした楽曲を見つけたら、どんな工夫がされているか考えてると、アイデアがより自分のものになるでしょう。