【チェリー/スピッツ】コード進行と分析

スピッツの代表曲『チェリー』。
現代の若年層でも一度は聞いたことがあるでろう超名曲ですね。
コード進行やメロディーからヒットの秘訣を紐解いていきましょう。
ここからの内容は、er-music編集部の独自の見解になります。 読者様との解釈に相違がある場合も、考え方の一例、また娯楽の一環としてご覧ください。 また、ダイアトニックコードの理解があるとより楽しめるかと思います。 >>ダイアトニックコードについて

イントロ

イントロ楽譜

イントロはドラムのフィルインから開始します。

コード進行は『C→G→Am→F』の単純な繰り返しです。
4つのコードで構成されるコンパクトな進行ですが、トニック(C)から始まりサブドミナント(F)で終わる進行のため、明るさがあるが少し盛り上がりに欠ける進行です。
そこに、穏やかさがあり優しい雰囲気が漂います。

えるるん
この進行に、丸い音色のキーボードが奏でるメロディーが重なり、穏やかさを高めてる!
チェック:「トニック」とかってなに?
音階の一番目の音をトニック、四番目の音をサブドミナント、五番目の音をドミナントと言います。 また、ダイアトニックコードの一番目のコードをトニックコード、四番目のコードをサブドミナント、五番目のコードをドミナントコードと言い、それぞれをコードの機能といいます。 簡単に言うと、トニックコードは安定的。ドミナントコードは非常に不安定。サブドミナントはその中間的なイメージです。 ▷トニック・サブドミナント・ドミナントについて詳しくはこちら

ちなみに

このコード進行は、ビートルズ『Let it be』のAメロにも使われている進行です。
『Let it be』も非常に穏やかで、少し切なすら感じます。
「どのコードで始まり、どのコードで終わるか」を考えることで、シンプルで少ないコードでも色々な表現ができますね。

Aメロ

Aメロ楽譜

コード進行

Aメロとは違い、8小節が一塊のコード進行です。
このコード進行は、おなじみ「カノン進行」と呼ばれるものです。

加えて、1小節1コードとして、それぞれのコードが十分な尺を持っています。
明るく感じるCコードや暗く感じるAmなど、コードごとの雰囲気がしっかりと感じ取れて、明暗のあるドラマチックなコード進行となっています。

メロディー

メロディーは、最初4小節が上行意識、後半4小節が下行意識でつくられています。

Aメロディーの特徴

そのため、序盤は、気持ちが明るくなる様な前向きな雰囲気がを感じます。
Cメジャーキーの中で『Am』は暗く響きますが、メロディーが明るい雰囲気を支えています。
コードの持つ暗さと、メロディーの持つ前向きさが、豊かな感情の様子を演出しています。

一方、後半は落ち着きを感じさせるメロディーです。
この曲に「優しく穏やかな印象」を感じましたが、8小節の中でみる前半の明るさと、それを落ち着かせる後半の工夫が効いている様に思います。

サビ

サビ楽譜

コード進行

コード進行は『Am→Em→F→C』の2小節一塊で構成されています。

暗さを感じる『Am』から始まりますが、その暗さは『F』で緩和され、明るい『C』へと到達します。
「暗いところから明るいところへ」進んでいく様に、力強さ希望感があります。

ちなみに

この進行も『Let it be/ビートルズ』と似ています。
Let it beのサビの2小節です。
Let it beにも、「Aメロの穏やかさとサビの力強さ」を感じましたが、コードが似ているためかチェリーにも似た印象を感じました。
チェリーを作曲する際のテーマや、土台としてLet it beの存在があったのかもしれません。

メロディー

音価の長さ

Aメロに比べて、音価の長い4分音符が目立ちます。
Aメロの様なリズミカルさが目減りする印象ですが、その分一音一音の重みが増した様に感じます。
自然に耳が歌詞にいき、よりメッセージが伝わります。

コードとのシンクロ

コードに合わせ、「力強さ」と「穏やかさ」を調整している様に感じます。
2小節一区切りとして、前半1小節と後半1小節を見ていきましょう。

前半は、暗いコード進行ですが3度の跳躍が目立つ上行メロディーで、暗さを打ち破る様な「力強さ」「ポジティブさ」を感じます。

後半は、明るいコード進行ですが緩やかな下行メロディーで、盛り上がりはなく落ち着きがあり「穏やかさ」を感じます。

サビメロディーの特徴

そのため、奇数小節は印象・インパクトが強く、偶数小節がそれを落ち着かせる役割となっています。

えるるん
Let it beのメロディーも、前半の暗い進行で最高音をつけているよ!
前半で力強く、徐々に落ち着かせていく流れは同じだね!

間奏

間奏楽譜

Cメロの前に3小節の間奏が入ります。

特徴的なのは『B♭M7』というノンダイアトニックコードです。
このコードは、モーダルインターチェンジによるコードで、ミクソリディアンモードの『♭VIIM7』を使っています。

チェック:モーダルインターチェンジとは
モーダルインターチェンジは、長調(メジャーキー)の楽曲の中に、同主短調(マイナーキー)など、別の場所からメロディーやコードを借りてくるような手法です。 厳密に言うと、長調・短調の考え方とは異なる「モード」という概念を使います。「Aメロはハ長調(Cメジャーキー)、Bメロはハ短調(Cマイナーキー)」など、異なる調性を感じさせてしまう場合は転調といいます。 ▷モーダルインターチェンジについて詳しくはこちら

モーダルインターチェンジによって、Cメジャーキーの世界観から外れ、一瞬別の世界に迷い込んだ様な雰囲気が漂います。

これまで穏やかで優しさ溢れる雰囲気があったからこそ、この一瞬に感じる「違和感」「不安定感」「いい意味での気持ち悪さ」は、たった3小節でも流れを断ち切り、雰囲気を大きく変えます。

Cメロ

Cメロ楽譜

コード進行

『FM7→Am7』だけの暗めで単調なコード進行です。
特徴はセブンスコードが使われていること。

セブンスコードはこれまでのトライアドのコードに比べて、不協和音を含むため安定感に欠けます。
Aメロやサビに比べると、血に足つかない様な、少しふわふわした印象があります。

間奏の『B♭M7』でつけた、これまでとは決定的に違う違和感や不安定感を、この曲のポップさを保ちながら受け継いでいるイメージです。

メロディー

暗めのコード進行に呼応して、メロディーも明るさを感じません。

音符を見てみると、上行があっても、必ず最後は落ちる様にできています。

これまでのAメロやサビとくらべて、メロディーの方向性がはっきりせず、ここも不安定さを感じるポイントです。もちろんコードの兼ね合いがあってのことですが。

Cメロディーの特徴

この後、イントロと同じ構成の間奏が流れ、またAメロへと進行します。
Cメロの不安定感は、次の間奏・Aメロでゆっくり解消されていき、最後のサビへと進みます。

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