星野源の5thアルバム『Pop Virus』。
ドラマ主題歌としても起用されている「恋」や「アイデア」が収録されていて、とても充実感のある1枚となりましたね。
今回は、そんなアルバムの表題曲「Pop Virus」の分析をしていきましょう。
全体を通して
星野源さんの楽曲は、このあたりからブラックミュージックの要素が増えてきますね。
ラジオでは、星野源さん本人が様々な楽曲を自分のフィルターを通して楽曲に落とし込んだとおっしゃっていました。
楽器の特徴
様々な楽器が入り混じる同楽曲。徐々に楽器が増えていくさまにもクールさを感じます。
使用されている楽器
- ボーカル(+コーラス)
- ギター
- エレキギター
- ベース
- リズムマシン
- ストリングス
- アナログシンセサイザー
コード進行の特徴
ブラックミュージックでは、同じコードのループが基礎となる場合が多いですが、この曲でも全体を通して同じような進行が使われていることがわかります。
唯一、たった4小節ですがBメロの進行が大きく異なります。重点的に見ていきたいポイントですね。
メロディ
メロディは、ペンタトニック(5音)でほぼ形成されています。(唯一Bメロに例外あり)
比較的シンプルでなじみやすい『ペンタトニック』をメロディに使い、コード進行やグルーブに重きを置いているイメージがあります。
冒頭サビ
ギター+ボーカルのサビメロからスタートします。
冒頭サビから、16小節+2小節で始まるのが特徴的で、あまり日本のポップスでは見られない構成をしています。
ここにこれから解説する、ディミニッシュやセカンダリードミナントなどが加わっていくイメージ!
2小節目(Fdim7)
ここで現れる『Fdim7』はつぎの『F#m7』にスムーズに接続するためのコードです。
F#m7をトニックと見立てた場合のドミナントコードはC#7コードですが、Fdim7はその代理コードになります。
構成音から見てみると、にた響きのするコードであることがわかります。
コード | 構成音 |
---|---|
C#7 | C#,F,G#,B |
Fdim7 | F,G#,B,D |
代理コードについて詳しくは下の記事をご覧ください。
スリーコードと言えば、Ⅰ(トニック)、Ⅳ(サブドミナント)、Ⅴ(ドミナント)の3つのコードですね。 ダイアトニックコード…
4小節目(A7)
ここで現れる『A7』は次の『DM7』へのセカンダリードミナントコードになります。
先ほどのFdim7も近しいですが、今回はDM7を一時的なトニックに見立てドミナントモーションをとるためにA7(ドミナントコード)に変換しています。
セカンダリードミナントに関して詳しくは下の記事をください。
ダイアトニックコードを知っていると以前よりも簡単に作曲を行うことができますが、そればかりに頼ると単調な曲になってしまうこ…
10小節目では『A7/F#』が出てきますが、意図としては同じで、これもDM7へのセカンダリードミナント解釈できます。
7~8小節目(DM7→C#m7・F#m7→Bm7・Bm7/E)
サビ1回しを8小節ととらえるとちょうど一段落する感じがありますね。
ここのコード進行を見てみましょう。
イントロ~Aメロ
イントロも同様の
イントロ、Aメロも冒頭サビとほぼ同じ進行になりますので、まとめてコード譜面を載せておきます。
イントロでは最後2/4拍子になることに注意が必要ですね。
16分でくったメロディ
これは冒頭のサビでもいえることですが、小節をまたぐ際にメロディが16分音符一個分くって入ります。
例えば、「ふざけた人間なんだ か | たよる生活を~」のように。
こうしたメロディーからも16分のグルーブ感を作り出しています。
Bメロ
1~2小節目(G#m7-5→C#7→F#m7)
『G#m7-5→C#7→F#m7』は、F#m7へマイナーツーファイブワンの進行をとっています。
ここまでのコード進行とは明確に違うポイントですね。
Bメロが他と圧倒的に印象が違う理由の一つだね!
2小節目(B7 )
『B7』はセカンダリードミナントで、4小節目の『Bm7/E』にドミナントモーションをとっていると考えることができます。
間に、Bm7があるためツーファイブととらえることもできますが、『B7』の意味合いを考えると、Bm7を通り越してBm7/Eへドミナントモーションしていると解釈すると自然です。
この進行をディグリー表記で表すと『Ⅱ7→(Ⅱm7)→Ⅱm7/Ⅴ』と言えますが、この進行は以前取り上げた「接吻/ORIGINAL LOVE」のサビでも出てきた進行ですね。
参考までにご覧ください。
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サビ
18小節目(Aadd9)
最後のコードを見ても、この曲がキーAであることがわかりますね。
歌詞を見なくても、何か明るさのある曲だと感じることができます。
最後はAM7でなく煌びやかな『Aadd9』を使用していて、なんとも希望感のあるエンディングになりましたね。
まとめ
ループした行動進行が中心になりますが、細やかな部分に違いがあり、物語が進行していくイメージを感じることができました。
最近の『星野源』楽曲は、こういったブラックミュージックのエッセンスが強く感じられる一方で、大きく展開するセクションもあり、ちゃんとJPOPの要素も残っていて、上手く混ざり合っていると感じます。
日本人に受け入れられるちょうどいい塩梅の海外感が、星野源の楽曲が他と違う決定的な部分なのかもしれません。