【ふでぺん〜ボールペン〜/放課後ティータイム】コード進行と分析

バンドブームを盛り上げたアニメ「けいおん!」
劇中で結成された、放課後ティータイムの『ふでぺん〜ボールペン〜』のコード進行から楽曲を分析していきます。
ここからの内容は、er-music編集部の独自の見解になります。 読者様との解釈に相違がある場合も、考え方の一例、また娯楽の一環としてご覧ください。 また、ダイアトニックコードの理解があるとより楽しめるかと思います。 >>ダイアトニックコードについて

全体を通して

クールで印象的なギターフレーズからスタートする、ロックかつ爽やかな一曲。

曲全体の特徴としては、シンコペーションが多様されていて、各小節の一拍目よりも若干前に重点が置かれています。
BPMも154と早目で、シンコペーションによる前のめりなアクセントと相まって、主人公が走っているような疾走感を感じます。

えるるん
PVがあるとしたら、きっと誰かが走ってる描写がありそう!
コード進行は、キーEのダイアトニックコードが中心的ですが、不安感を煽るようなクリシェ進行を含めクロマチックなアプローチが見られました。
各セクションで重要な部分を分析していきましょう!

イントロ

イントロ楽譜

1~3小節目【C#m→E→B】

この曲のキーはEですが、始まりのコードは『C#m』になっています。
キーEのダイアトニックコードの中で、C#mはVImのコードですので、とても暗い雰囲気を感じさせるコードです。

C#mの次には『E→B』と明るいコードに進んでいきます。
暗すぎず、ちょうどクールな印象です。

この部分の解釈
ギターのフレーズを見ると、E(ルート)など安定的な音をあまり選ばず、Bコード(ドミナント)のコードトーンを意識した音づかいをしています。
そのため不安定なサウンド感があります。
コードのクールな印象と、安定せずなかなか落ち着かないギターフレーズが忙しなさや、早く安心したい前のめりな印象を感じさせ、疾走感を生んでいます。

7~8小節目【C#(omit5)→D(omit5)→D#(omit5)】

Aメロ1小節目の『E』に目掛けて、半音づつ上がっていくアプローチです。
omitは「指定の音を省略して演奏する」という指示です。この場合、コードの5度を省略するため、俗にいうパワーコードになります。

Eという目標のコードを設定して、パワーコードでクロマチック(半音)にアプローチする手法は、ロックやハードロックでよく使われます。

Aメロ

Aメロ楽譜

イントロとは一点、最も明るく安定的な『E』コードから始まるセクションです。

1~4小節目【E→C#m】

ここでは、同じコードが2小節続き進行します。
イントロの疾走感とは反対に、ペースが落ち着き安定した印象があります。

5小節目【Am】

キーEのダイアトニックコードに『Am』は含まれません。

Amは、サブドミナントマイナーと言われるコードで、Aがマイナーコードになったものです。

メジャーキーで使われるサブドミナントマイナーには「切なさ」や「哀愁」を感じます。
合わせてメロディーではブルーノート(この場合G)と呼ばれる音が使われていて、こちらも哀愁を感じさせます。

えるるん
G#のメロディーが半音届かず、G(ブルーノート)で留まってしまうところに、意気消沈したように少し切ない感覚を感じるね!

Bメロ

Bメロ楽譜

1~3小節目【C#m→C#mM7/C→C#m7/B】

一見複雑そうに見える進行ですが、クリシェと呼ばれる定番の進行です。
『C#m』のルートであるC#の音が半音づつ下がり、『CmM7』『Bm7』といったコードになっています。

同時にベースラインも変化していますが、変化しているのは同じ音です。

こうしたクリシェによるコードアレンジをしている楽曲はこちらで確認できます。

4小節目【F#】

C#mからC#の音が半音づつ下がっていくと、『CmM7』『Bm7』の次は『A#m7-5』に行き着きます。
『F#』はさまざまな解釈ができますが、『A#m7-5』と似た構成音をしており、代理として使われています。
先ほどのクリシェ進行は、非常に暗い響を続けていましたが、F#というメジャーコードにいきつくことで、雨が止んだようにパッと明るくなった印象を感じさせます。

5~8小節目【F#m7→G#m7→Am7→B】

F#からスケールを登っていく進行で、ドミナントである『B』に進行します。
Bは、次にEへの進行を予感させるので、この上昇のコード進行は希望的な印象を感じさせます。

『Am7』はAメロでも出てきたサブドミナントマイナーで、全体的には希望的でありながらも哀愁を感じさせています。

サビ

サビ楽譜
※訂正があります『E/G#m』×→『E/G#』○

最初の4小節を見てもメジャーコード中心で明るい進行となっています。

メロディーも出だしから上向の跳躍を連続させています。(「ミ・シ・シ」の部分)
Aメロでもメロディーの跳躍はありましたが、もっと疾走感があり、連続させることで気持ちの高まりも倍増させています。

3〜4小節目【F#】

先ほども出てきた『F#』です。
『C#m7→F#』という進行が、先ほどのクリシェの進行にも似ています。

もう少し掘り下げると、F#はモーダルインターチェンジによって、別のところから持ってきたコードと考えられます。

キーEのダイアトニックコードはEメジャースケールから導出されるものですが、モーダルインターチェンジを使うと、スケールを別のものと交換することができるため、ダイアトニックコードにはない新たなコードを持ってくることができます。

ここでは、Eリディアンモードというスケール(のようなもの)を想定してF#が使われています。

5~8小節目【A→E/G#→F#m→B】

『A→E/G#→F#m』はベース音をみて分かる通り、降っていく進行です。
Aから降るなら、次はG#mでも自然ですが、ここはより明るい『E/G#』を使っています。

E/G#はEの第一転回系で、Eの構成音のうち長3度のG#をベース音に指定した形です。

F#mはサブドミナントの役割があるため、次にドミナント(B)へと進み、気持ち良くEへと進行していきます。

まとめ

疾走感溢れてクールさもある楽曲でした。
歌声の可愛らしさと、タイトル・歌詞の可愛げにばかり目が行きがちですが、演奏から構成まで非常にかっこいい一曲でした。

当時、アニメでリアルタイムに聞いていましたが、こうして大人になって聞いてみるとまた違った風に聞こえます。
細部の工夫まで感じられて非常に楽しいです。

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