【ベテルギウス/優里】コード進行と分析

ドラマ『SUPER RICH』の主題歌ベテルギウス。
エモーショナルなA・Bメロに、感情揺さぶるサビが魅力的な楽曲です。
ワンコーラスのほとんどがたった4つのコードでできています。
味付け的にノンダイアトニックコードが出てきますが、コードの順番や演奏・メロディーの変化で、セクションごとの違いを決定付けています。
ここからの内容は、er-music編集部の独自の見解になります。 読者様との解釈に相違がある場合も、考え方の一例、また娯楽の一環としてご覧ください。 また、ダイアトニックコードの理解があるとより楽しめるかと思います。 >>ダイアトニックコードについて

Aメロ

Aメロ楽譜

1~2小節目【F/A→B♭add9→Csus4→Dm7】

ベースの音に着目すると、Aからスケールを上行する進行であると分かります。
静かながらも、こみあがるものを感じます。

add9やsus4が出てくるのは、『F/A』コードの構成音F,Cを固定させているためです。
いずれのコードにもF,Cが含まれています。

コード構成音
F/AA,F,C
B♭add9B♭,D,F,C
Csus4C,F,G
Dm7D,F,A,C

今回でいうF,Cの様にコード進行の中で固定された音をペダルポイントと言います。

F/A以外が、必然的にトライアドコードでなくなり、フワッとした幻想的な響きをしています。
また、コードは進行していますが、音の変化が少ないために落ち着いた印象を受けます。

えるるん
なんだか夜空を眺めているような、キラキラとしていた穏やかな雰囲気を感じたよ!

優里の楽曲ではこうしたペダルポイントがよく使われています。
今回の様なコード進行はギターで作曲する人が多く使います。
解放弦も織り交ぜた豊かな響きで、指の移動もほとんどなくコード遷移がスムーズなため好まれます。

8小節目【Csus4】

Aメロは、2小節の進行を何度も繰り返しているセクションでしたが、8小節目だけCsus4で止まります。

ここまで、Dm7へ落ち着く進行だったのに対し、『Csus4』が引き伸ばされこの後の展開の変化を感じます。

この部分の解釈

本来、Fメジャーキーのうえでは『C』はFへと進行しようとする力があります。
しかし、『sus4』になるとその力は弱まります。

「これまでの流れでいけばDm7に進んでもいいが、『C』コードで、でも『sus4』コードで…」と、なんとも力の方向性が掴めず、次の展開が予想できません。
早く答えが欲しくなる様な、なんとも待ち遠しい時間です。

Bメロ

Bメロ楽譜

1~2小節目【Badd9→F/A→C→Dm7】

使われているコードは大きく変わりませんが、『Badd9』と『F/A』が入れ替えられています。

『F/A』はトニックコードなのに対し、『Badd9』はサブドミナントコードのため、少し安定感が損なわれた出だしになります。
その若干の不安定さに、感情が溢れ出てきたような、エモーショナルさが感じられます。

チェック:「トニック」とかってなに?
音階の一番目の音をトニック、四番目の音をサブドミナント、五番目の音をドミナントと言います。 また、ダイアトニックコードの一番目のコードをトニックコード、四番目のコードをサブドミナント、五番目のコードをドミナントコードと言い、それぞれをコードの機能といいます。 簡単に言うと、トニックコードは安定的。ドミナントコードは非常に不安定。サブドミナントはその中間的なイメージです。 ▷トニック・サブドミナント・ドミナントについて詳しくはこちら

4小節目【A7/C#→Dm7】

まず、『A7』はDm7に対するセカンダリードミナントです。
次にDm7へ進行する力が強くなり、Dm7のもつ暗い雰囲気が強調されます。

チェック:セカンダリードミナントとは?
セカンダリードミナントは、ダイアトニックコード一番目のコードであるトニック(『I』あるいは『Im』)以外のダイアトニックコードを一時的なトニックと見立てて、その5度上のコードをドミナントコードに変化させたものです。 ▷セカンダリードミナントについて詳しくはこちら

ここまでの煌びやかな雰囲気が一瞬崩れ、不安感が漂います。

ただしコードは『A7/C#』です。
これは、A7コードの転回系で、A7の構成音C#音をベース音としたコードです。

この部分の解釈

Fメジャーキーのダイアトニックコードは『Am7』です。
『A7』との違いは、コード構成音のC音がC#音に変化した部分です。
変化しているC#をベース音とすることでノンダイアトニック感が強調されるとともに、次のDm7に向けて半音したからアプローチできます。

Fメジャースケールに含まれないC#は大きな緊張感をもたらし、Dm7へと進みたい力を強めます。

7小節目【Eadd9】

『Eadd9』は、モーダルインターチェンジによるコードで、Fミクソリディアン♭VIIコードです。
add9は、Eコードに、これまでもペダルポイントになっていたC音を足したものです。

チェック:モーダルインターチェンジとは
モーダルインターチェンジは、長調(メジャーキー)の楽曲の中に、同主短調(マイナーキー)など、別の場所からメロディーやコードを借りてくるような手法です。
厳密に言うと、長調・短調の考え方とは異なる「モード」という概念を使います。「Aメロはハ長調(Cメジャーキー)、Bメロはハ短調(Cマイナーキー)」など、異なる調性を感じさせてしまう場合は転調といいます。▷モーダルインターチェンジについて詳しくはこちら

サビ

Cメロ楽譜

サビはBメロのコード進行とほとんど同じです。
そのためサビに入っての大きな変化といえば、演奏とメロディーの観点です。

演奏

Bメロまでは、アコースティックギターとこもった様なデジタルビートによる演奏でした。
サビでは、生のドラムにベース、エレキギターと、生バンドがインします。

音圧はもちろん、人間味や情熱感じる迫力が加わり、より感情的なセクション担っています。

メロディー

Bメロに比べて1小節の音符の数が違いますね。
同じBPMでも、音符少ないと緩やか・穏やかに、音符が多いともっとスムーズに感じます。
そのため、Bメロと比較して速度感が増した感覚があり、曲の主人公の動きも、早く、あるいは激しくなった様に感じます。

また、最高音『C』に何度も達していて、メロディーの跳躍も激しくなります。
歌唱もより感情的になっており、サビらしい迫力を感じます。

まとめ

コード数は少ないながらも、確固たる世界観があり、コードの順番や演奏・メロディーの変化で感情揺さぶるストーリー性を感じさせられました。

音楽理論的な解釈を並べてきましたが、実際はセンスで作り上げている部分も大きいのかなと思います。
他の曲ともコードの傾向が似ている部分もあり、「アコギを持ちながらメロディーに感覚値的に的確なコードを当てはめている」。そんな作曲風景が思い浮かびます。

ぜひ他の楽曲も聴いて、優里の作曲傾向を分析していきましょう。

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