「音が歪む」とは?歪む原理や波形の特徴

  • 2023年10月22日
執筆者: エルエミュージックセオリーでは、楽典や音楽理論の分野に関わる情報を発信しています。これらは、楽曲の分析や作曲、演奏をする上で必要な知識で、より深く音楽を理解し解釈することができます。音楽学校をでたライターにより執筆を行い、適宜情報を修正しながら運営してまいります。

「音が歪む」「もっと音を歪ませて欲しい」…
現代のポピュラーミュージックに関われば、「歪み」という言葉は必ず出てきます。

今回は、「歪む」とは何か。どのようにして歪みが起こるのかを解説していきます。

「音が歪む」とは?

音が歪むというのは、音の波形が元々の状態から変わってしまい、それによって音質が悪くなったり、特徴的な音になることです。

この歪んだ音は、ギターやベースなどの楽器の演奏でよく使われ、ロックやブルースなどの音楽ジャンルで重要な役割を果たしています。

「ロックっぽい音」と言われたり、強く歪んでいると「メタルっぽい音」と言われたりもします。

▼歪んでいないピアノ音

▼歪んだピアノ音

音が歪む原理

アンプなどに音を通すと、音が歪んで聞こえることがあります。

これは、声や楽器が発する自然な音(アンプに対する入力音)の波形は滑らかな山や谷のような形をしていますが、アンプを通すことで波形が変形されてガタガタした形になってしまうからです。

アンプの回路には出せる音の限界値があります。
その限界値を超える音を出そうとすると、超えた分がぐしゃっと潰され、圧縮された音になってしまいます。
この潰れによって、先ほどの例のようなガタガタな波形の音となり、「歪み」を起こします。

波形で見ると、以下のような変化が起こっています。

▼歪んでいない音(入力音)

歪んでいない波形

▼歪んだ音(出力音)

クリッピングされて歪んだ波形

 

昔はどのように歪みを作っていたのか

昔のギタリストたちは、アンプという機械を使って音を大きくしていました。
アンプの音量を最大まで上げていくにつれて、出しきれずに潰れる音が大きくなり、歪みも強くなります。

1950年代後半ごろになると、アンプをうまく使い、歪みを取り入れた音楽も追求され始めました。
チャックベリーなどの音楽でも、程よい歪みを聴けます。

ジミ・ヘンドリックスは歪みを大胆に使った演奏で有名ですね。
この頃には歪みを生み出すエフェクターも使われていました。

 

エフェクターでの歪みについて

昔はアンプ操作でうまく歪みを作っていましたが、今ではエフェクターを用いることで簡単に歪みを生み出すことができます。
この章では、歪みを生み出す「歪み系のエフェクター」について解説します。

えるるん
エフェクターは、楽器の音を加工して、さまざまな音色や効果を得るための機器だよ!
歪みや反響音を生み出すなど、さまざまなことができるんだ!

歪みを生み出す「歪み系エフェクター」とは

これまでに解説した通り、歪みはアンプの出力回路の最大値を超えた時に生じる、音の潰れによって現れる現象でした。
この「音が歪む」現象を意図的に生み出すのが、歪み系と言われるエフェクターです。

歪み系エフェクターには、オーバードライブやディストーション、ファズなど、さまざまな種類があります。それぞれ、歪みの度合いや質感が異なります。

オーバードライブとディストーション

歪みを生み出すエフェクターの代表格が、オーバードライブディストーションです。

オーバードライブは、音がやや歪む程度で、滑らかで温かみのある歪みが特徴です。
これは、アンプの音量を最大にした時の自然な歪みに近いものです。

ディストーションは、音が大幅に歪むことで、より強烈で激しい歪みが特徴です。
サスティンが長いですが、ダイナミクスが減少するといった特徴があります。

オーバードライブやブルースやロック、ディストーションはハードロックやヘヴィメタルなどのジャンルで好まれます。