2020年5月20日にリリースされた1stアルバム『HELP EVER HURT NEVER』に収録されている壮大なバラードナンバー。
イントロ
1~5小節目
コード | DM7→Aadd9/C♯→Bm7→D/E→DM7→Aadd9/C♯→Bm7→D/E→Dm6 |
ディグリ ー表記 | ⅣM7→Ⅰadd9/Ⅲ→Ⅱm7→Ⅳ/Ⅴ→ⅣM7→Ⅰadd9/Ⅲ→Ⅱm7→Ⅳ/Ⅴ→Ⅳm6 |
ⅣM7から始まり、次のⅠadd9/Ⅲ。Ⅰadd9の長3度がルートにきている第一転回形のオンコード。
これは藤井風さんがよく使うコードで、「旅路」やMISIAさんに提供した「Higher Love」でも聴くことができます。
MISIAさんが2021年11月12日に配信リリースした新曲、「Higher Love」。藤井風さん初の楽曲提供ということでも話題になりました。 今回は、藤井風さんが生み出した至高のゴスペルソングのコード進行について分析していきます![…]
2小節目と4小節目のⅡm7→Ⅳ/Ⅴはツーファイブですが、この楽曲ではⅤ7の代わりにⅣ/Ⅴが使われています。
Ⅳ/ⅤはⅤ7に比べて緊張感が弱く、ドミナントとして用いることができる為、ポップスにおいては頻繁に使われます。
Ⅳm6はサブドミナントマイナー。Ⅳがマイナーになったコードで、切ない響きをもっています。
Aメロ
1~8小節目
コード | AM7→DM7→C♯m7→F♯m7(9)→Em7(9)→DM7→C♯m7→C7→Bm7→C♯m7→Dm7→Bm7/E→E7(♭9,♭13) |
ディグリ ー表記 | ⅠM7→ⅣM7→Ⅲm7→Ⅵm7(9)→Ⅴm7(9)→ⅣM7→Ⅲm7→♭Ⅱ7→Ⅱm7→Ⅲm7→Ⅳm7→Ⅱm7/Ⅴ→Ⅴ7(♭9,♭13) |
1-4-3-6とスムーズな強進行で進み、Ⅴm7(9)へ。これはドミナントマイナーといい、一般的にはⅣM7あるいはⅠ7に進むことができるコードです。
ⅣM7→Ⅲm7→♭Ⅱ7→Ⅱm7と、ルートが半音ずつ下降していく進行。
♭Ⅱ7は裏コードと呼ばれ、トライトーンをもっているコードである為、Ⅴ7の代理として使うことができます。
ここではⅢm7とⅡm7を半音でスムーズに繋ぐ経過的なコードとして使われています。
Ⅱm7→Ⅲm7と上昇していき、Ⅳm7へ。
Ⅳm7はイントロで出てきたⅣm6と同じく、サブドミナントマイナー。
Ⅱm7/Ⅴはイントロで出てきたⅣ/Ⅴとほぼ全く同じ構成音のコードで、ここではⅤ7(♭9,♭13)へのクッションのような役割をしています。
Ⅴ7(♭9,♭13)は、Ⅴ7にオルタードテンションの♭9と♭13が付与された暗い響きのジャジーなドミナントコード。
9~16小節目
コード | AM7(9)→DM7→C♯m7→C♯7(♭9)/E♯→F♯m7→Em7→DM7→C♯m7→Cm7→Bm7→Bm7/E→E7(♭9) |
ディグリ ー表記 | ⅠM7(9)→ⅣM7→Ⅲm7→Ⅲ7(♭9)/♭Ⅵ→Ⅵm7→Ⅴm7→ⅣM7→Ⅲm7→♭Ⅱm7→Ⅱm7→Ⅱm7/Ⅴ→Ⅴ7(♭9) |
Ⅲ7(♭9)/♭ⅥはセカンダリードミナントであるⅢ7(♭9)の長3度の音がルートに来ている第一転回型のコード。
♭Ⅵは次のⅥm7へ半音下からスムーズにつながるベースラインになっています。
Bメロ
1~4小節目
コード | FM7(9)→Em7→Am7(9)→Dm7→Dm7(♭5)/G→CM7→Gm7(13)→F♯7(♭5) |
ディグリ ー表記 | ⅣM7(9)→Ⅲm7→Ⅵm7(9)→Ⅱm7→Ⅱm7(♭5)/Ⅴ→ⅠM7→Ⅴm7(13)→♯Ⅳ7(♭5) |
BメロはCメジャーキーに転調しています。
3小節目のⅡm7(♭5)/ⅤはAメロでも使われたⅡm7/ⅤのⅡm7がⅡm7(♭5)になった形。
Ⅱm7(♭5)/Ⅴの減5度は、Ⅴからみた♭9であるため、Ⅴ7(♭9)に似た響きを感じます。
5~8小節目
コード | FM7→Em7→Am7→Dm7→Dm7/C→B7(♭9)→Em7(9)→Em7/A |
ディグリ ー表記 | ⅣM7→Ⅲm7→Ⅵm7→Ⅱm7→Ⅱm7/Ⅰ→Ⅶ7(♭9)→Ⅵm7(9)→Ⅵm7/Ⅲ |
Ⅵm7(9)→Ⅵm7/Ⅲは、元のAメジャーキーから見るとⅤm7(9)→Ⅴm7/Ⅰというサビ頭のⅣM7に対するツーファイブであり、この時点でAメジャーキーに戻ってきていると解釈できます。
サビ
1~4小節目
コード | DM7(9)→C♯m7→F♯m7→Bm7→Bm7(♭5)/E→AM7→D♯7(9) |
ディグリ ー表記 | ⅣM7(9)→Ⅲm7→Ⅵm7→Ⅱm7→Ⅱm7(♭5)/Ⅴ→ⅠM7→♯Ⅳ7(9) |
Ⅱm7→Ⅱm7(♭5)/Ⅴ→ⅠM7はBメロと同様の流れ。
5~8小節目
コード | DM7(9)→C♯m7→F♯m7(♭9)→F♯m7/B→B7→Em7→Em7/A→A7(♭9) |
ディグリ ー表記 | ⅣM7(9)→Ⅲm7→Ⅵm7(♭9)→Ⅵm7/Ⅱ→Ⅱ7→Ⅴm7→Ⅴm7/Ⅰ→Ⅰ7(♭9) |
4→3→6と基本的な流れは同じですが、ここではⅥm7に(♭9)のテンションが付いています。
3・4小節目のⅥm7(♭9)→Ⅵm7/Ⅱ→Ⅱ7は、Ⅵm7→Ⅱ7というツーファイブ上で、Ⅱm7→Ⅱm7/Ⅴ→Ⅴ7とほとんど同じことをやっています。
Ⅵm7/Ⅱ→Ⅱ7はⅡ7sus4からⅡ7に解決するような感覚で使われています。
※F♯m7/Bの構成音は(シ、ファ♯、ラ、ド♯、ミ)、B7sus4の構成音は(シ、ミ、ファ♯、ラ)と、ほぼ同様。
8小節目のⅤm7は、セカンダリードミナントであるⅠ7(♭9)に向かうリレイテッドⅡm7です。
また、ここでもⅤm7とⅠ7(♭9)の間にはⅤm7/Ⅰがクッションの役割で入ってきています。
これも3・4小節目のⅥm7/Ⅱ→Ⅱ7と同様に、Ⅰ7sus4からⅠ7の解決のような役割を果たしています