TVアニメ王様ランキングの主題歌であるKing Gnuの『BOY』。
特徴的なコード進行がおおく、聴き慣れない響きにクールさを感じる一曲ですね。
全体を通して
コードの特徴
この曲に限ったことではありませんが、King Gnuの作品はどれも、Jpopではあまり使われていないノンダイアトニックコードが使われています。
こうした僕たちが聴き慣れないコードを利用することにはさまざまなメリットがあります。
- 唯一無二な楽曲となる
- マンネリ回避
- センスを感じる
- 次の進行を予想させない
(前半3つはほぼ同じようなことを言っていますが…)
次の進行やメロディーを予期させないため、終始ワクワク感じますし、驚きを感じ惹きつけられますよね。
Aメロ・サビでは、不思議な響きのするコードもありますが、Bメロは落ち着いたセクションなので相応してシンプルなものになっています。サビのインパクトがいっそうましますね。
定番Jpopにももちろん良さはありますが、中には曲の展開が予想でき退屈に感じることも。
King Gnuの曲を初見で聴いて、『退屈』と思うことなんてほとんどないのではないでしょうか。
演奏の特徴
クラシックな雰囲気も感じるストリングスが特徴的ですね。イントロやサビではクラシックギターの音もよく聞こえ、アレンジのテーマ性が見えて来ます。
よく「芸術は創造と破壊」ってききますが、2サビ終わりのソロは丁度破壊の部分に該当するように思います。
サビの美しさを破壊し、また新たに創造していくイメージ。
ソロの尺の長さや、落ちサビが創造までの過程であり、よりラストサビが際立つように感じます。
そう考えると、ラスサビは半音上に転調していますので、今までのサビとはまた別の創造物となっているわけです。
自論です。
頭サビ【BOY】
複雑な進行に見えますが、土台にはカノン進行が見えます。
カノン進行を徐々にアレンジしていった形と考えれば、このセクションの全体感が掴みやすいかもしれません。
それぞれ解説していきます。
1小節目(CM7→Bdim7)
Cメジャーのダイアトニックコードには『Bdim7』は存在しません。
単純にみると、Cハーモニックマイナーから借用してきた『Ⅶdim7』のコードと考えることができます。
ほかに、『Am7』へのセカンダリードミナント『E7』の代理である『G#dim7(=Bdim7)』と捉えることもできます。
そのため、Amへスムーズに進むことができています。
「メジャースケールは理解できた」「マイナースケールはなんだかよく分からない」マイナースケールは、メジャースケールと勝手が…
2小節目(Am7→G→G♭)
『G→F#→F』とコードが半音ずつ平行移動していることがわかります。
ドミナントであるGコードの時点でCに戻りたい力が働いでいますが、こうした平行下降をすることでスムーズにF(サブドミナント)へと移行しています。
3小節目(F→Em7→A7)
『A7』は次のEm7へのセカンダリードミナントです。Em7を一時的なトニックと見立ててドミナントコードに置き換えています。
4小節目(Dm7→A♭7→G7)
『A♭7→G7』の進行が特徴的です。
ここもコードが半音の平行移動をしていますね。
7thコードの形になっているので、このA♭は裏コードと解釈することが出来ます。
裏コードは、GへのセカンダリードミナントD7の代理となるコードで、アプローチ先の半音上のセブンスコードであるのが特徴です。
5〜6小節目
繰り返しになります。
間奏【BOY】
イントロ2は先に続くAメロと同様の進行をしています。
1小節目(Am7→C→CM7)
イントロはCメジャーキーとしての響きを強く感じましたが、一転、Amでスタートしてマイナーキーのような暗い響きがします。
キーはAmになっているようです。
2小節目(B7→Em7→E♭m7)
『B7』は、次のEm7へのセカンダリードミナントです。
『E♭m7』はEm7を平行移動させたもので、Dm7へアプローチするためのコードです。
3小節目(Dm7→G7)
『Dm7→G7』は、トニックCへと解決するツーファイブのモーションです。
4小節目(C→Dm→Em→B♭dim)
『C→Dm→Em』と素直にダイアトニックスケールを駆け上がっていく進行ですが、4拍目は『B♭dim』が出てきます。
AmとB♭dimは、同じ音が1音、半音で隣り合う音が2音ありますので、意外にもスムーズに進行することができます。
Aメロ【BOY】
Aメロは、イントロと同じ進行なので特にコードについては語る必要はないでしょう。
『C→CM7→B7』『Em7→E♭m7→Dm7』の部分は下降するキメのようになっていますが、うまくメロディの合間を打っていて、より16分のノリが際立ちテンポよく聞こえますね。
Bメロ【BOY】
1〜2小節目(Am7→G7→FM7)
Bメロは全体を通して『Am7→G7→FM7』の動きを繰り返します。FM7がシンコペーションしてるので、2小節が一塊のフレーズとなっています。
FM7は偽終止となり不安定なので、「早く先に!」「物語の続きがみたい!」と、なんだかもどかしくも感じます。
サビ【BOY】
ほとんどイントロ1と変わりありませんが、1小節目に『E7』が使われています。
これは、Am7へのセカンダリードミナントです。
まとめ
明るく華やかな美しさと、ロックで暗い力強さが入り混じる楽曲でした。
ジャジーなコード進行と声質が相まってか、クールな印象が強く、泥臭いことを言いながらも気品を感じます。
今回ご紹介しておりませんが、2サビ終わりの間奏ソロセクションは、これまでの美しさを破壊し、新たなサビを構築していくストーリー性が感じられます。
こういった考えも持ちながら、ぜひフルで聴きなおしてみましょう。