Apple Musicのドルビーアトモスによる空間オーディオのCMで見かける、official髭男dismの『アポトーシス』。
避けられない運命のような悲しくも、力強いメッセージ性を感じさせますね。
読者様との解釈に相違がある場合も、考え方の一例、娯楽の一環としてご覧ください。
また、ダイアトニックコードの理解があるとより楽しめるかと思います。
ダイアトニックコードとは?
Aメロ(key=A)
1〜2小節目(C#7♭9→F#m7)
AメロはキーAですので、C#7♭9はノンダイアトニックコードであることがわかります。
このコードの正体はセカンダリードミナントで、次のF#m7を一時的なトニックと見立ててドミナントコードに置き換えたものです。
2〜3小節目
2小節目『Em7→A7』は3小節目の『DM7』に着地するためのツーファイブワン進行です。
要は、先程のC#同様、A7がセカンダリードミナントとなっています。
手前のEm7は、セカンダリードミナントに対するⅡm7に該当するので、リレイテッドⅡmと言われてます。
3小節目(E/D)
ここでは、『E/D』というオンコード(分数コード)が使われています。
コードはEで、ベース音のみDになっている状態です。
6小節目
ここもオンコード『F#m7/E』が使われています。
先ほどと同様に、次のコードDM7への接続をスムーズにする意味合いでベース音だけを下降させているのだと考えられます。
16小節目
一見今まで見てきたC#(セカンダリードミナント)と同じようですが、ここでは『C#7sus4→C#7』となっています。
実は、ここを起点にキーがAからF#へ転調します。
転調のきっかけとして機能してるコードであることが分かりますね。
Bメロ(key=D#m)
2〜3小節目(A#m7→A7→G#m7)
ここでの『A#m7→A7→G#m7』の進行を見ていきましょう。
ベースが半音で下降しているのがわかります。
滑らかな半音下降を作るため、ノンダイアトニックコードA7が使われています。
このコードは裏コードと言われるもので、次のG#m7に対するセカンダリードミナントD#7の代理コードと解釈することができます。
3〜4小節目(A#7♭9→D#M9)
『A#7♭9』はセカンダリードミナントと見ることができますが、『D#M9』はなんでしょう。
ここは、A#7♭9のコードを起点にキーD#(キーE♭)に転調していると考えられます。
その後のコード進行を見ると、ほとんどキーE♭のダイアトニックコードで構成されていることがわかりますね。
D#とE♭は異名同音。ここでは、楽譜の上で区別しているだけだよ!
4〜5小節目(B♭7♭9→EM7)
『B♭7♭9→EM7』という進行ですが、B♭はA#の異名同音なので、3小節目と同じですね。
ただここでは、すでにE♭に転調しているので、セカンダリードミナントではなく、通常のドミナントコードになります。
7小節目(BM7)
『BM7』はBメロ前半でも出現していますが、全く解釈の異なるコードです。
前半はD#mキーであるのに対し、7小節目はE♭に転調しているからです。
そのため意味合いこそ変わりますが解釈は簡単で、キーE♭m(D#m)のコードを一時的に借用していると考えることができます。
これをモーダルインターチェンジと呼ばれる手法です。
8小節目(Fm7/B♭)
『Fm7/B♭』は、B♭7sus4と似た響きのコードのため、ドミナントであることがわかります。
E♭へ解決しようとしているようです。
サビ(key=E♭)
2〜3小節目(Dm7-5→G7→Cm7)
ここはofficial髭男dismも御用達の定番コードです。
Cm7へ解決するためのマイナーツーファイブワンの進行になっています。
分解してみればG7はセカンダリードミナントと言えます。
3〜4小節目(B♭m7→E♭7/A→A♭M7)
『B♭m7→E♭7/A→A♭M7』のコード進行はA♭M7へ着地するためのコード進行と考えると理解しやすいでしょう。
スムーズな進行を取るために、A♭M7を一時的なトニックとみたててツーファイブワンの進行を取ろうとしているのです。
E♭7のベース音をAにすることで、強烈な違和感とともに、A♭へ落ち着きたい力が一層増します。
4小節目(G♭m6)
A♭M7からの半音下降を作るためにこのコードをチョイスしているのだと考えられます。
理論に結びつけるならば、E♭ロクリアンスケールからの借用してきたコードで、モーダルインターチェンジと言われるものです。
5小節目(B→B♭→B♭7/D)
『B』はE♭mキーからのモーダルインターチェンジ。
『B♭』はそのままドミナントで、『B♭/D』は次のE♭への接続を滑らかにするためベースを変えたコードです。(B♭の第一転回系)
11~12小節目(Fm7→Bdim→Cm)
ここのコード進行は、Cmへ滑らかに着地するためのものでしょう。
ここでの『Bdim』の正体は、Cmに対するセカンダリードミナント「G7」の代理コードです。
G7と同様に、Cmに進みたくなる力が働いています。
12小節目(Am7-5)
『Am7-5』は、A♭M7のベース音が半音下がった形です。
トニックE♭の代理コードとしても考えることができて、この後Ⅳ(A♭)へ進行するために使われることが多いです。
14小節目(A♭m→B♭m)
ここもモーダルインターチェンジで解釈できます。
E♭mキーのⅣm(A♭m)→Ⅴm(B♭m)に該当するからです。
15小節目(B→C#)
先ほどと同様モーダルインターチェンジです。
E♭mキーの♭Ⅵ(C♭)→♭Ⅶ(D♭)と進んでいます。
*楽譜と表記がことなっていますが、同じ音です。
まとめ:歌詞の解釈も深めていこう!
今回は、コード進行を中心に分析を行ってきましたが、official髭男dismさんのすばらしさはその作詞能力にもあります。
以下にご紹介させていただく、ナナメblog様では歌詞のアポトーシスを歌詞の観点から分析・解釈をされています。
非常に納得できる内容となっていますので、ぜひご覧ください。