室内楽とはどんなもの?特徴や曲例、編成まで紹介

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クラシック音楽を勉強しているとよく聞く室内楽。
これはどのような音楽を指し、具体的にどんな楽曲が室内楽に分類されるのでしょうか。

この記事では、室内楽の特徴と、室内楽の名曲、アンサンブルやオーケストラと言った似た意味の言葉との違いについて紹介します。

室内楽とは

室内楽(chamber music)とは、2人から10人程度の少人数編成で演奏される音楽で、元は宮廷の一室で演奏されていました。

大規模なオーケストラなどのように、複数人が同じ楽譜を見るのではなく、それぞれに異なるパート譜を割り当ててるといった特徴があります。

一人の演奏は含まれない

室内』とはいえ、ピアノやバイオリンなど、一つの楽器で演奏される音楽(独奏曲)は室内楽には含まれないとされています。
室内楽は、あくまでも複数の演奏者が一緒に演奏することが前提にあります。

室内楽は、複数の演奏者が互いに協調して、一緒に音楽を創り出すものなのです。

編成の呼び方

室内楽は奏者の数で編成の呼び方が変わります。

  • 二重奏(デュオ)
  • 三重奏(トリオ)
  • 四重奏(カルテット)
  • 五重奏(クインテット)
  • 六重奏(セクステット)
  • 七重奏(セプテット)
  • 八重奏(オクテット)
  • 九重奏(ノネット)
  • 十重奏(デセット)

編成によって楽器が決められているわけではなく、さまざまな組み合わせがあります。

室内楽の楽曲例

それでは、実際に室内楽と呼ばれるものには、どんな楽曲があるのかを見ていきましょう。

  • モーツァルト:弦楽四重奏曲 第19番「不協和音
  • シューベルト:ピアノ五重奏曲「ます」
  • ドヴォルザーク:弦楽セクステット
  • ブラームス:クラリネット五重奏曲
  • ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲第8番

モーツァルト:弦楽四重奏曲 第19番「不協和音」

モーツァルトの「不協和音」は、4人の弦楽器奏者による楽曲で、曲の開始部分が当時としては驚きの不協和音から始まることでその名がつけられました。それが解消されて美しい旋律になるところが特徴です。

【楽器編成】

  • ヴァイオリン1
  • ヴァイオリン2
  • ヴィオラ
  • チェロ

シューベルト:ピアノ五重奏曲「ます」

シューベルトの「ます」は、ピアノ、ヴァイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバスの5人編成の楽曲です。普通、ピアノ五重奏曲ではチェロが2本使われますが、シューベルトはコントラバスを加えることで深みのある響きを作り出しました。

えるるん
ゲームの『太鼓の達人』に入ってて、よくやったな…

【楽器編成】

  • ピアノ
  • ヴァイオリン
  • ビオラ
  • チェロ
  • コントラバス

ドヴォルザーク:弦楽六重奏

ドヴォルザークの弦楽セクステットは、2本のヴァイオリン、2本のビオラ、そして2本のチェロを用いた6人編成の楽曲です。ドヴォルザークらしい明るく楽しいメロディが特徴で、チェコの民俗音楽の要素も見受けられます。

【楽器編成】

  • ヴァイオリン1
  • ヴァイオリン2
  • ビオラ1
  • ビオラ2
  • チェロ1
  • チェロ2

ブラームス:クラリネット五重奏曲

ブラームスのクラリネット五重奏曲は、クラリネット、ヴァイオリン、ビオラ、チェロの5人編成の楽曲です。この曲はブラームスが引退を考えていた時期に作られ、美しいクラリネットの旋律が特徴で、深い感情が表現されています。

【楽器編成】

  • クラリネット
  • ヴァイオリン
  • ビオラ
  • チェロ

ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲第8番

ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲第8番は、彼自身の名前の音型(DSCH)が全曲を通して用いられています。戦時中の苦悩を表現した作品で、ショスタコーヴィチの深い心情が反映されています。

【楽器編成】

  • ヴァイオリン1
  • ヴァイオリン2
  • ヴィオラ
  • チェロ

以上がそれぞれの楽曲の紹介と楽器編成です。これらの楽曲は室内楽の魅力を存分に味わえる代表的な作品であり、それぞれ独自の音楽性や感情を持っています。室内楽の演奏には、これらの楽曲を通じて楽器同士が調和し合い、美しい音楽が生み出されます。

室内楽とアンサンブル、オーケストラの違い

室内楽、アンサンブル、オーケストラとはなんでしょう。
室内楽を覚えるとともに、これらの言葉をいまいちど確認して、それぞれの違いまで把握できるようにしましょう。

まずアンサンブルとは、2人以上の同時演奏を指します。
広い意味では、2人でも50人でも100人でも、同時に演奏していればアンサンブルと表現できます。

室内楽もアンサンブルですが、「2人から10人程度の少人数で演奏され」「各パートが独立している」という特徴があるのが一般的です。
室内楽は、アンサンブルという枠の中の、演奏形式の一つであるといえます。

一方のオーケストラもアンサンブルの一種と言えますが、非常に大人数で演奏されることが多く、また楽器の編成が一般化されていることから、『アンサンブル』と区別されることがあります。
目安として50人以上の大規模な管弦合奏であれば、オーケストラに分類できます。
もちろんもっと少人数のオーケストラもありますし、これをアンサンブルと言っても間違いとも言い切れません。

なお、独奏曲はアンサンブルといいません。

まとめ

室内楽は、その名の通り室内で演奏ができるように、少人数で編成された合奏です。
ここに、1人で演奏される独奏曲は含まれず、2人編成のデュオ、3人編成のトリオから様々な編成があります。

室内楽の中でも有名なものとしては、モーツァルトの「不協和音」やシューベルトの「ます」などがありました。
今一度、それらの楽曲を聴いて、室内楽のイメージを感じていきましょう。