音響機器の世界では、品質の良いサウンドを得るために、機器自体の性能だけでなく、それらをつなぐケーブルの選択も重要です。
場合によって、ケーブルの種類とその特性は、音質に大きな影響を及ぼします。
本記事では、音楽制作の現場などでよく使われる『キャノンケーブル(XLRケーブル)』について解説します。
キャノンケーブルがどのようなケーブルで、他のケーブルとどう違うのかを理解しましょう。
また、キャノンケーブルの理解に重要な『バランス接続』という意味についても解説していきます。
キャノンケーブルとは?
キャノンケーブルとは、3つの端子(通常、地線、ホット線、コールド線と呼ばれる)からなるケーブルで、ロックがかかり抜けにくく、ノイズにも強い特徴があります。
アメリカのキャノン社が開発したことからキャノンケーブルとの愛称で使われていますが、正式にはXLRケーブル(XLRコネクタ)と言います。
本記事3章で解説するバランス接続が可能なケーブルで、音楽制作の場面では必要不可欠とも言えます。
キャノンケーブルのメリット・デメリット
メリット
キャノンケーブルは、他のケーブルに比べてノイズに強い特徴があります。
最近のイヤホンにも搭載されているノイズキャンセリングのように、ある程度のノイズを打ち消すことができます。
ライブハウスやホールなどはケーブルを長く伸ばす必要がありますが、ケーブルは長ければ長いほどノイズを含んでしまいます。
そうした現場では特に、キャノンケーブルが力を発揮します。
デメリット
キャノンケーブルのようにバランス接続できるケーブルは、割高です。
ノイズが減らせる強いメリットはあるものの、ケーブルを長く伸ばす必要がない場面では、そもそもケーブルにのるノイズが少ない状態です。
こうした状況では、特段キャノンケーブルを使う意味はありません。
キャンケーブルを使う機器
キャノンケーブルは、XLR型のコネクタを持つ、バランス接続対応の機器に接続します。
代表的な使用機器はマイクで、その使用頻度の多さから、マイクケーブルとも言われることもあります。
具体的には、マイクからミキサーや、マイクからオーディオインターフェースなどに接続されます。
キャノンケーブルの向き(メス・オス)
プラグに3本の穴がある方をメス、プラグに3本の突起がある方をオスと言います。
メスが入力側、オスが出力側の機器にそれぞれ接続します。
他のケーブルとの違い
音響機器に使うケーブルには様々なものがあり、それぞれどんな違いがあるかよく分からない方は多いでしょう。
ここで、キャノンケーブル以外のケーブルについても知って、より正確にキャノンケーブルを理解できるようにしましょう。
フォンケーブル
フォンケーブルは、以下画像のようなフォンプラグをもつケーブルです。
フォーンケーブルには、大きくわけて『TSケーブル』と『TRSケーブル』の2種類があります。
TSケーブル
ギターやベースをアンプに繋ぐ際に使うシールドケーブルや、アンプとスピーカーの接続に使うスピーカーケーブルは、主にTSケーブルです。
次に説明するTRSケーブルと似ていますが、TSケーブルは絶縁リングの本数が1本であり、のちに解説するアンバランス接続のケーブルとなります。
TSの名前は、プラグの導体の名称から来ています。
先端部分の導体をチップ(T)、絶縁リングを隔てた根本までの長い部分をスリーブ(S)と言います。
TRSケーブル
TRSケーブルは、キャノンケーブルのようにバランス接続できるケーブルです。
そのため、ノイズに強く、ケーブルを流く伸ばす際に重宝します。
ステージ上からミキサーへ、ライン接続をする際によく使われます。
TSケーブルとは、プラグの絶縁リングの本数で区別できます。TRSケーブルは2本です。
なお、TRSケーブルのプラグは、先端のチップ(T)、絶縁リングに挟まれたリング(R)、根本側のスリーブ(S)と、3つの導体からなります。
RCAケーブル
RCAケーブルは、色分けのされたピンプラグが特徴のケーブルです。
レコードやCDプレーヤーなどのオーディオ機器や、テレビの接続などに使われます。
白いプラグが左(L)、赤いプラグが右(R)の音声信号を伝送します。
白が左、赤が右、黄が映像、の信号を流すんだ。
最近はHDMIケーブルの普及で見なくなったけど…。
ミニプラグ
前述したフォンケーブルの一種で、携帯音楽プレーヤーやスマホと接続できる小さなプラグを持ったケーブルです。
イヤホンなどの端子としてよく使われており、チップ(T)リング(R)スリーブ(S)の3極タイプがよく見られます。
最近は4極のものよく使われますが、この場合、マイク音声を伝送できるようになります。
キャノンケーブルでできるバランス接続とは?
『バランス』『アンバランス』とは、接続方式のことです。
キャノンケーブルやTRSケーブルは、バランス接続方式ができるケーブルということです。
このバランスという接続は、ノイズに強いため、ノイズが多く乗りやすい長い配線をする時に効果的です。
反対に、アンバランス接続は、比較的ノイズに弱いということになります。
楽器とアンプ間とか、自宅の音響環境であれば、わざわざバランス接続でなくてもいいね!
バランス接続はそもそもつなげる機器がお互いにバランス接続に対応してる必要もあるし。
この記事では、詳しいバランス接続とアンバランス接続の詳しい仕組みの違いまで、解説しません。
ただ簡単にいうと、プラグの極数が『バランスは3極』『アンバランスは2極』という大きな違いがあります。
キャノンケーブルもTRSケーブルも、どちらも3つの極を持っています。
バランス接続 | アンバランス接続 | |
---|---|---|
どんなケーブル? | XLRケーブル(キャノン) TSRケーブル | TSケーブル RCAケーブル |
黒い線(絶縁リング)の本数は? ※フォンケーブルの場合 | 2本 | 1本 |
極数は? | 3極 | 2極 |
ノイズに? | 強い | 弱い |
値段は? | 高め | 安め |
まとめ
キャノンケーブルは、コンデンサーマイクなどによく使われるケーブルです。
ノイズに強く、ライブハウスや録音スタジオの様に、マイクからミキサーまで長い距離を必要する場面で、大きな効果を発揮します。
形状が特徴的なので、他のケーブル間違える可能性は少ないでしょう。
ただ、他のTS・TRSケーブル、RCAケーブルなども知っておくと、より違いを理解しやすく、適切なケーブル選びができるようになるでしょう。