【雲は白リンゴは赤/aiko】コード進行と分析

aikoさんのメジャー通算20作目のシングル。スバルの軽自動車「ステラ・R2」のTVCM曲にも使われていた楽曲。

難解なものも多いaikoさんの楽曲の中ではシンプルで、とても明るいポップロック。

ここからの内容は、er-music編集部の独自の見解になります。 読者様との解釈に相違がある場合も、考え方の一例、娯楽の一環としてご覧ください。 また、ダイアトニックコードの理解があるとより楽しめるかと思います。 ダイアトニックコードとは?

イントロ

楽譜イントロ

1~4小節目

コードD♭maj7→E♭→Cm7→F→D♭maj7→E♭→C7/E→Fm
ディグリ ー表記Ⅳmaj7→Ⅴ→Ⅲm7→Ⅵmaj→Ⅳmaj7→Ⅴ→Ⅲ7/♯Ⅴ→Ⅵm

 

4-5-3-6王道進行を思わせるイントロですが、1・2小節目はがメジャーコードになっています。

Ⅵメジャー同主短調A♭マイナーキーから借りてきた和音だという解釈ができます。

同主短調のトニックである上に、本来はマイナーコードがくるはずの部分にメジャーコードがくることで、とても明るい響きを感じさせます。

 

3・4小節目はⅤとⅥの間にⅢ7/♯Ⅴというオンコードを鳴らしています。

Ⅲ7セカンダリードミナントであり、に向かうドミナントの為、暗い響きを感じさせます。

また、そこでベースが♯Ⅴの音を鳴らすことによって、Ⅴ→♯Ⅴ→Ⅵとルートが半音づつ上昇していく滑らかな進行となっています。

 

この部分の解釈
経過音としてよく使われる♯Ⅴdimのような、パッシングディミニッシュ的な使われ方をしていると解釈できます。
C7/E(Ⅲ7/♯Ⅴ)の構成音は「ミ、ド、ソ、シ♭」、対してEdim(♯Ⅴdim)の構成音は「ミ、ソ、シ♭」と、ほぼ同じですね。

 

5~8小節目

コードD♭maj7→E♭→Cm7→F→B♭m7→E♭aug→E♭
ディグリ ー表記Ⅳmaj7→Ⅴ→Ⅲm7→Ⅵmaj→Ⅱm7→Ⅴaug→Ⅴ

 

5・6小節目は1・2小節目と同様です。

7・8小節目はツーファイブの間にⅤaugが入っています。

Ⅴaug→Ⅴという進行はツーファイブにアクセントを入れたい時などに使われる動きで、ジャジーな雰囲気を演出することができます。

aug(オーギュメントコード)について詳しくは『オーギュメントはどう使えばいい?』をご覧ください。

 

この部分の解釈
VaugはV7(♭13)として使われることもあります。
Ⅴaugの♯5thとⅤ7(♭13)の♭13thは同音であり、内声に入っているかテンションノートとして上に乗っかっているかの差で、響きに大きな違いはありません。
特にギターではコードフォームの関係上プレイしやすいこともあり、V7(♭13)がよく使われます。

 

Aメロ

楽譜Aメロ

1~4小節目

コードA♭→Cm→D♭→D♭m/F♭
ディグリ ー表記Ⅰ→Ⅲ→Ⅳ→Ⅳm/♯Ⅴ

 

3・4小節目のⅣ→Ⅳm/♯Ⅴの部分。

Ⅳmサブドミナントマイナーであり、と比べて切ない響きをもっています。

ベースが♯Ⅴを鳴らしていることによって、次のコード()へ半音で滑らかに繋がる進行となっています。

 

5~8小節目

コードFm→B♭7→D♭→D♭m/F♭→G♭
ディグリ ー表記Ⅵ→Ⅱ7→Ⅳ→Ⅳm/♯Ⅴ→♯Ⅵ

 

6小節目のB♭7(Ⅱ7)セカンダリードミナントです。Ⅱ7Ⅴ7に対するドミナントであるため、ダブルドミナントとも呼ばれます。

 

G♭(♯Ⅵ)モーダルインターチェンジという手法によって他のキーから借りてきた借用和音であり、ノンダイアトニックコードです。

この楽曲のキー、A♭メジャーキーの同主調であるA♭マイナーキーからG♭を借りてきています。

 

Bメロ

楽譜Bメロ

1~8小節目

コードD♭maj7→A♭/C→B♭m7 →A♭→D♭maj7→A♭/C→B♭m7 →E♭aug
ディグリ ー表記Ⅳmaj7→Ⅰ/Ⅲ→Ⅱm7→Ⅰ→Ⅳmaj7→Ⅰ/Ⅲ→Ⅱm7→Ⅴaug

 

1~4小節目はベースがⅣ→Ⅲ→Ⅱ→Ⅰと下降していく進行。

A♭/C(Ⅰ/Ⅲ)の3度の音がルートになっている転回系オンコードです。

構成音は全く変わらないため、通常のⅠ/Ⅲでは響きに大きな変化はありませんが、ベースがを弾いていることで滑らかに下降していく進行が作られています。

 

9小節目

コードF♭→G♭
ディグリ ー表記♯Ⅴ→♯Ⅵ

 

9小節目のF♭→G♭(♯Ⅴ→♯Ⅵ)はどちらもモーダルインターチェンジによってA♭マイナーキーから借りてきたコードです。

♯Ⅴ→♯ⅥはJPOPにおいてよく使われるコード進行で、前向きで勇ましい雰囲気があります。

多くの場合はトニックに解決しますが、ここではⅡm7へ繋がります。

 

サビ

楽譜サビ

1~4小節目

コードB♭m7→E♭aug→E♭→Cm→Fm
ディグリ ー表記Ⅱm7→Ⅴaug→Ⅴ→Ⅲ→Ⅵ

 

定番の2-5-3-6進行ですが、イントロにもあったようにの前にⅤaugを挟んでいますね。

2-5-3-6進行Ⅱ→Ⅴ、Ⅲ→Ⅵ、どちらともルートが完全4度進行(ドミナントモーション)となっているため、スムーズで非常に進行感の強いコード進行となっています。

 

5~8小節目

コードDm7(♭5)→G7→Cm→C♭maj7→B♭m7 →B♭m7/E♭
ディグリ ー表記♯Ⅳm7(♭5)→Ⅶ7→Ⅲ→♭Ⅲmaj7→Ⅱm7 →Ⅱm7/Ⅴ

 

♯Ⅳm7(♭5)→Ⅶ7はマイナーキーにおけるツーファイブを髣髴とさせる進行で、同じくaikoさんの楽曲「KissHug」などでも使用されています。

Ⅶ7というセカンダリードミナントに向かうリレイテッドⅡm7(♭5)として、♯Ⅳm7(♭5)が使われていると解釈できます。

 

Cm→C♭maj7→B♭m7とベースが半音ずつ下降していく進行。

その後のⅡm7/ⅤⅤ7の代理としてよく使われるコードで、Ⅴ7と比べて緊張感が弱く浮遊感や軽快なサウンドを演出できます。

特にⅡm7→Ⅱm7/Ⅴの流れは非常にスムーズできれいな為、頻繁に見られます。

 

13~16小節目

コードB♭m7→Cm→D♭→D♭/E♭→F♭→G♭→A♭
ディグリ ー表記Ⅱm7→Ⅲ→Ⅳ→Ⅳ/Ⅴ→♯Ⅴ→♯Ⅵ→Ⅰ

 

に向かってどんどん上昇していく、高揚感のあるパート。

Ⅱm7→Ⅲ→Ⅳと進みⅣ/Ⅴへ。
Ⅳ/Ⅴは先ほどの5~8小節目に登場したⅡm7/Ⅴとほとんど構成音が同じであり、同様の役割を持つコードです。

最後はBメロにも登場した♯Ⅴ→♯Ⅵを経由し、トニックへ着地します。

 

間奏

楽譜間奏

 

1~8小節目

コードD♭maj7→C♭maj7→F♭maj9→D♭/E♭→F♭→G♭
ディグリ ー表記Ⅳmaj7→♭Ⅲmaj7→♯Ⅴmaj9→Ⅳ/Ⅴ→♯Ⅴ→♯Ⅵ

 

この楽曲の中でもっとも浮遊感のあるパート。

今までは最低でも1小節単位以上の速さでコードチェンジしていましたが、Ⅳmaj7→♭Ⅲmaj7→♯Ⅴmaj9と2小節ずつたっぷり鳴らします。

また、ドラムパターンもハーフタイムになっている為、ゆったりとしたパートになっています。

 

♯Ⅴmaj9モーダルインターチェンジによって借りてきた♯Ⅴmaj7に9thというテンションノートを加えたもので、この9thには煌びやかな響きがあります。

最後はⅣ/Ⅴへ行き、キメと一緒に♯Ⅴ→♯Ⅵで元のリズムへと戻っていきます。

 

9~14小節目

コードD♭maj7→E♭→Cm7→F→D♭maj7→E♭→C7/E→Fm→D♭maj7→E♭→Cm7→F
ディグリ ー表記Ⅳmaj7→Ⅴ→Ⅲm7→Ⅵmaj→Ⅳmaj7→Ⅴ→Ⅲ7/♯Ⅴ→Ⅵ→Ⅳmaj7→Ⅴ→Ⅲm7→Ⅵmaj

 

この部分はイントロと同様のコード進行になっています。

煌びやかなブラスと、aikoさんのスキャットがかっこいいパートです。

 

15~18小節目

コードB♭m7→F♭→G♭→F♭→G♭→F♭→G♭→F♭→G♭→A♭
ディグリ ー表記Ⅱm7→♯Ⅴ→♯Ⅵ→♯Ⅴ→♯Ⅵ→♯Ⅴ→♯Ⅵ→♯Ⅴ→♯Ⅵ→Ⅰ

 

キメと♯Ⅴ→♯Ⅵの繰り返しが特徴的な部分。

ラスサビ前のBメロパートに繋がります。

 

ラスサビ

 

1~8小節目

コードB♭m7→E♭aug→E♭→Cm→Fm→Dm7(♭5)→G7→Cm→C♭maj7→B♭m7 →B♭m7/E♭
ディグリ ー表記Ⅱm7→Ⅴaug→Ⅴ→Ⅲ→Ⅵ→♯Ⅳm7(♭5)→Ⅶ7→Ⅲ→♭Ⅲmaj7→Ⅱm7 →Ⅱm7/Ⅴ

 

最後の盛り上がりの前に、少し溜めるような落ちサビとも言えるパート。

コード進行はサビと同様ですが、ドラムはスネアを叩かずにハイハットを細かく刻むなどして煽っています。

Ⅲ→♭Ⅲmaj7→Ⅱm7 →Ⅱm7/Ⅴのキメからラストにかけて盛り上がっていきます。

 

9~16小節

コードB♭m7→E♭aug→E♭→Cm→Fm→B♭m7→Cm→D♭→D♭/E♭→F♭→G♭→A♭
ディグリ ー表記Ⅱm7→Ⅴaug→Ⅴ→Ⅲ→Ⅵ→Ⅱm7→Ⅲ→Ⅳ→Ⅳ/Ⅴ→♯Ⅴ→♯Ⅵ→Ⅰ

 

最後はサビと同様のコード進行。

 

アウトロ

 

1~8小節目

コードD♭maj7→E♭→Cm7→F→D♭maj7→E♭→C7/E→Fm→D♭maj7→E♭→Cm7→F→B♭m7→E♭aug→E♭
ディグリ ー表記Ⅳmaj7→Ⅴ→Ⅲm7→Ⅵmaj→Ⅳmaj7→Ⅴ→Ⅲ7/♯Ⅴ→Ⅵm→Ⅳmaj7→Ⅴ→Ⅲm7→Ⅵmaj→Ⅱm7→Ⅴaug→Ⅴ

 

アウトロはイントロと同様のコード進行。

楽曲の最後はⅤaug→Ⅴで締めくくられています。

 

この部分の解釈

トニックに帰らず、ドミナントのまま曲が終わるという手法は、サザンオールスターズの名曲「いとしのエリー」でも使われています。

これによって、「まだ物語に続きがあるようなような、余韻のある雰囲気」を感じさせたまま曲を終わることができます。

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