使われるシーンが少ないために、どうしても難しく捉えられてしまうオーギュメントコード。
今回は、オーギュメントコードがどんなもので、どんな特徴があるのかを解説します。
後半は、具体的な使い方をヒットソングを例に紹介しています。
※オーグメントとも言いますが、この記事では『オーギュメント』で統一しております。
この記事の内容
- オーギュメントとは?コードの作られ方と特徴
- サザンオールスターズ、LiSA…オーギュメントの使用例
オーギュメントってどんなコード
オーギュメント(aug)コードは、メジャーコードの完全5度の音が半音上がったコードで、3つの音がそれぞれ長3度の間隔で重なっている特徴があります。
とても不協和で緊張感のある響きに感じられるかと思います。
例えば、Cオーギュメント(Caug)であれば『ド・ミ・ソ#』が構成音となります。
クリシェラインを作る際やドミナントコードの代理としてよく使われています。
Augment(オーギュメント)には、増加させるという意味があります。
音程における『増音程』を英語で言う際に、このaugmentが使われます。
増音程には増1度や増4度など他にもありますが、オーギュメントコードと言われたら、『完全5度が半音上がったメジャーコード』のことを指します。
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長3度で積み重なる特徴がある
冒頭でもお伝えした通り、オーギュメントコードは各構成音どうしが長3度の音程関係にあります。
要は、3つの音が等間隔であるのです。
上図では、『ドからミ』『ミからソ#』のみ見ていますが、オクターブ上まで上がって『ソ#からド』も長3度の関係です。
ですので、いずれの音を主音にしても同じ構成音でオーギュメントコードを作ることができるのです。
オーギュメントコードは実質4つしかない
長3度で等間隔に重なっていくコードの特性上、あるオーギュメントコードから、合わせて3つの同じ構成音のオーギュメントコードが導きだせます。
例えば、先ほど例に出た『Caug=Eaug=G#aug』です。
もちろん、これらは主音が異なるコードですので、キーやコードの流れに沿って使い分け、演奏をしやすくする必要があります。
ですが、実質的には一つのオーギュメントコードとも言えます。
1オクターブは12音しかないので、『一つのコードパターンで3コード』×『4通り』ですべてのコードをオーギュメントでとらえることができます。
オーギュメントは4パターンしかないといえるのです。
パターン1 | Caug | Eaug | G#aug |
---|---|---|---|
パターン2 | D♭aug | Faug | Aaug |
パターン3 | Daug | F#aug | A#aug |
パターン4 | E♭aug | Gaug | Baug |
オーギュメントの使い方と使用例
それでは実際にオーギュメントの使い方を確認していきましょう。
よりイメージしやすくするために、ヒットソングでの使用例を交えて解説いたします。
- 基本のメジャーコードからオーギュメントへ変化
- クリシェラインを作る
- ドミナントの代理として使う
- ドミナントの代理×裏コードでアレンジして使う
基本のメジャーコードからオーギュメントへ変化
オーギュメントコードの最も基本的な使い方は、基本となっているメジャーコードからオーギュメントコードへ変化させる進行です。
例えば、『C→Caug』といったコード進行が考えられます。
この場合、構成音が『ソ→ソ#』と変化しているので、次に『ラ』を構成音にもつコードがはまりやすいかと思います。
Cメジャーキーで言うと、IVであるFに進む進行(I→Iaug→IV)が最も自然です。
クリシェラインを作るために使う
クリシェとは、あるコードの一部の構成音のみを半音または全音で上行、下行させる手法です。
例えば、『C→Cadd9→C→Csus4』のコード進行では、構成音の一つが『ド→レ→ミ→ファ』と上行しクリシェラインを形成しています。
オーギュメントは、このクリシェラインを形成するために頻繁に使われます。
例1:みんなのうた/サザンオールスターズ(サビ)
いわずと知れたサザンオールスターズのみんなのうたのサビ冒頭のコード進行を見てみましょう。
Cの完全5度(ソ)の音が、Caugで増5度(ソ#)になり、C6の長6度(ラ)、C7の短7度(ラ#)と半音づつ上昇していることがわかります。
例2:HADASHI NO STEP/LiSA(サビ)
ドラマ『プロミスシンデレラ』の主題化、LiSAのHADASHI NO STEPです。
サビ9小節目のコード進行を見ていきましょう。
この進行は厳密にいうと、先ほど紹介した『クリシェ』とは異なるものなのですが、ベース音を半音下行させるクリシェっぽいアレンジから、『ベースラインクリシェ』と言われています。
この進行では、Emの構成音『E,B,G』のうち、ベースのE以外が固定されるようにD#aug(構成音『D#,G,B』)を選択しています。
ドミナントの代理として使う
オーギュメントコードの特徴である『#5』の音程は、テンションの『♭13』と同じ音です。
メジャーコードである上に、♭13はドミナントコード上でよく使われるテンションのため、ドミナントコード似た役割をします。
例えば、キーCにおけるドミナントGの代わりに、Gaugを使うといった具合です。
Gaug7にすると、なおさらV7(♭13)感が増します。
この不安定な響きは、強烈にトニックCへと戻りたい力を感じます。
コード | 構成音 |
---|---|
Gaug | G,B,D# |
Gaug7 | G,B,D#,F |
G7(♭13) | G,B,D,F,D# |
例:Progress/kokua
「プロフェッショナル 仕事の流儀」のテーマソングとして、誰しも一度は聞いたいことがあるであろう一曲。
ノンダイアトニックコードが多用されていて、大きく不安定な印象を感じますが、それが主人公の心情を反映しているようにも感じられます。
この表現にオーギュメントが欠かせません。
上の画像はAメロ全体のコード進行です。
10小節目にEaugが使われています。
このコードは、11小節目のAmにむけたセカンダリードミナントをaugにした形ととらえることができます。
ドミナントの代理×裏コード
ドミナントコードには、通称裏コードと言われる代理コードが存在します。
ドミナントセブンスコードの『長3度』と『短7度』はトライトーンという非常に不協和な音程なのですが、この同じトライトーンを含むドミナントコードを代理としてみることができるのです。
例えば、G7の代理コードは、D♭7です。(GとD♭もトライトーンの距離感があります。)
ここで、G7をオーギュメントコードにして、裏コードとしてみることもできます。
すると『Gaug7/D♭』という何やら複雑なコードが生まれます。
ジャジーなテンション感の強いコードで、おしゃれなアレンジを加えたい場面にピッタリです。
まとめ
オーギュメントコードは、メジャーコードの完全5度を増5度に変えたコードです。
各音が長3度の音程で重なっている特性があるために、一つのオーギュメントコードからあわせて3つのオーギュメントコードが生まれることがわかりました。
この特性を利用すれば、様々なオーギュメントコードが簡単に利用できそうですね。
今回解説した、オーギュメントコードの使い方は、クリシェを形成するためと、ドミナントの代理とするためのものでした。
いずれも、すぐに楽曲にとり入れることができるので、実際に使用してみてください。
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