関ジャム完全燃SHOW「クラシックのプロがスゴイと思うJ-POP特集」でピアニストの清塚信也さんがこの楽曲を挙げたことでも話題になった、
Official髭男dism屈指のバラード。
Aメロ始まりの曲で、間奏はありません。「最初から最後まで歌が途切れない」のがこの曲の特徴のひとつでもありますね。
おしゃれで切ないコードワークについて紐解いていきましょう!
Aメロ
1~3小節目
コード | A→Dmaj7→C♯7→F♯m |
ディグリ ー表記 | Ⅰ→Ⅳmaj7→Ⅲ7→Ⅵ |
リバースピアノの音(逆再生したピアノの音)から始まるAメロ。
3小節目の頭には早速ノンダイアトニックコードが使われています。
C♯7(Ⅲ7)はセカンダリードミナントであり、Ⅵに向かうドミナントコードである為、暗く切ない響きを持っています。
4小節目
コード | E→D♯m7(♭5) |
ディグリ ー表記 | Ⅴ→♯Ⅳm7(♭5) |
4小節目ではノンダイアトニックコードであるD♯m7(♭5)(♯Ⅳm7(♭5))が使われています。
♯Ⅳm7(♭5)というコードはⅠ6(#11)と同じ構成音であり、
また、Ⅴ→♯Ⅳm7(♭5)という流れから推測するに、トニックの代理コードとして使われていると考えることができます。
5小節目
コード | Bm7→Bm7/E |
ディグリ ー表記 | Ⅱm7→Ⅱm7/Ⅴ |
サブドミナントの機能を持つⅣに、Ⅴのベース音が付加されています。通常のV7と比べると緊張感が弱く、ドミナントの役割を持ちながらも浮遊感があります。
Ⅱm7と同じ構成音を持っているため、この曲のようにツーファイブ(Ⅱm7→Ⅱm7/Ⅴ)の形で使うことで、非常に滑らかな進行が可能です。
6~9小節目
コード | A→Dmaj7→C♯7→F♯m→Em→Dmaj7→Bm7→Bm7/E |
ディグリ ー表記 | Ⅰ→Ⅳmaj7→Ⅲ7→Ⅵ→Ⅴm→Ⅳmaj7→Ⅱm7→Ⅱm7/Ⅴ |
8小節頭のEm(Ⅴm)はドミナントマイナーと呼ばれるコードです。(そのままなネーミングですが…)
本来E(Ⅴ)が持つトニックへの導音「ラ♯」の音が半音下がって「ラ」になる、
つまりEm (Ⅴm)になることで緊張感が緩和され、柔らかい雰囲気のコードとなっています。
Bメロ
1・2小節目【F♯m→F♯m/F→F♯m/E→D♯m7(♭5)】
コード | F♯m→F♯m/F→F♯m/E→D♯m7(♭5) |
ディグリ ー表記 | Ⅵ→Ⅵ/♯Ⅴ→Ⅵ/Ⅴ→♯Ⅳm7(♭5) |
ここではルート音のみが半音ずつ下降していくベースクリシェが使われています。
クリシェには様々なパターンがありますが、Ⅵからルート音のみが半音ずつ下降していくベースクリシェは最もよく使われる進行のひとつで、切ない雰囲気があります。
3~6小節目【Dmaj7→C♯m7→Bm7(11)→E …】
コード | Dmaj7→C♯m7→Bm7(11)→E→Dmaj7→C♯m7→Bm7 |
ディグリ ー表記 | Ⅳmaj7→Ⅲm7→Ⅱm7(11)→Ⅴ→Ⅳmaj7→Ⅲm7→Ⅱm |
1・2小節からの流れのままⅣmaj7→Ⅲm7→Ⅱm7(11)と下降、Ⅴへとつながり再びⅣへ。
そしてⅡm7を維持したままサビへ。
サビ
1~4小節目
コード | Dmaj7(9)→C♯m7→F♯m7(9)→Bm7→E7sus4(9)→A→Bm→B♯m→A/C♯ |
ディグリ ー表記 | Ⅳmaj7(9)→Ⅲm7→Ⅵm7(9)→Ⅱm7→Ⅴ7sus4(9)→Ⅰ→Ⅱ→♯Ⅱm→Ⅰ/Ⅲ |
A→Bm→B♯m→A/C♯の部分は、メロディが半音ずつ上がっていくのに合わせてⅠ→Ⅱ→♯Ⅱm→Ⅰ/Ⅲと上昇していきます。
A/C♯(Ⅰ/Ⅲ)は分数コードですが、単純にⅠの3度がルートにきている転回系のコードになります。
Ⅲと比較すると、Ⅰ/Ⅲの場合はルートに対して完全5度が鳴っていない為、軽やかな響きになっています。
5・6小節目【D→Dm→A/C♯→F♯m7】
コード | D→Dm→A/C♯→F♯m7 |
ディグリ ー表記 | Ⅳ→Ⅳm→Ⅰ/Ⅲ→Ⅵm7 |
ここで出てくるDm(Ⅳm)はサブドミナントマイナーです。
文字通り、Ⅳ(サブドミナント)をマイナーコードにしたもので、同主短調(Am)から借りてきた和音と考えられます。
特にⅣ→Ⅳmの動きはよく使われる進行で、コードトーンが長3度→短3度と半音ずつ下がっていくため滑らかで美しいです。
歌メロはサビの1小節目と全く同じメロディですが、ここではⅣmが入ることで胸が締め付けられるような切ない雰囲気になっています。
7~9小節目【Bm7→C♯m7→Dm→Am/E→E→A→Asus4】
コード | Bm7→C♯m7→Dm→Am/E→E→A→Asus4 |
ディグリ ー表記 | Ⅱm7→Ⅲm7→Ⅳm→Ⅰm/Ⅴ→Ⅴ→Ⅰ→Ⅰsus4 |
Bm7→C♯m7→Dm→Am/E→Eと上昇してトニック(A)に着地する進行。
ここでもⅣmが使われていますが、Ⅱ→Ⅲから上がっていく流れで使うと、切なさというよりは勇ましさのような前向きな雰囲気を感じます。
Am/E→Eの部分は、歌メロの「LA~DY~(ド~シ~)」に合わせてコードが変化しています。
Cメロ
1~4小節目【Dmaj7→DmM7→C♯m7→F♯m7】
コード | Dmaj7→DmM7→C♯m7→F♯m7 |
ディグリ ー表記 | Ⅳmaj7→ⅣmM7→Ⅲm7→Ⅵm7 |
ここで出てくるDmM7もサブドミナントマイナーです。
ここではDmaj7から長7度(ド♯)を維持したまま3度のみが半音下がってDmM7になることで、
「不確かで・もどかしくて」という「ド♯シレ」の繰り返しメロディが非常に活きています。
5~8小節目【Bm7→Bm7/E→Em7→A→A7→E♭7(9.11)】
コード | Bm7→Bm7/E→Em7→A→A7→E♭7(9.11) |
ディグリ ー表記 | Ⅱm7→Ⅱm7/Ⅴ→Ⅴm7→Ⅰ→Ⅰ7→♯Ⅳ7(9.11) |
Bm7/E→Em7→A→A7(Ⅱm7/Ⅴ→Ⅴm7→Ⅰ→Ⅰ7)の部分。
Ⅴm7はⅠ7に向かうリレイテッドⅡm7であると考えることができます。
リレイテッドⅡm7とはこの場合、A7(Ⅰ7)をV7と捉え、それに対するⅡm7としてEm7(Ⅴm7)が使われているという解釈です。
最後はキメのタイミングでE♭7(9.11)が鳴っています。ラスサビの冒頭、Ⅳへ半音上から繋がるアプローチになっています。
ラスサビ
基本的にサビと同じ進行を2回し繰り返します。
ラスサビ2回し目・7~10小節目
コード | Bm7→C♯m7→Dm→Am/E→E→Bm7→C♯m7→Dm→Am/E→E |
ディグリ ー表記 | Ⅱm7→Ⅲm7→Ⅳm→Ⅰm/Ⅴ→Ⅴ→Ⅱm7→Ⅲm7→Ⅳm→Ⅰm/Ⅴ→Ⅴ |
エンディングに向けて、同じ進行を二回繰り返しています。
ここでは楽曲中最高音を歌っており、ラストに相応しい盛り上がりになっています。
アウトロ
アウトロではサビの進行に乗せて、フェイク的なアプローチで感情があふれるようなメロディを歌っています。
最後はトニックのAに解決。メロディも「ラ」できれいに終わります。
まとめ
テンションコードやノンダイアトニックコードなどがとても巧みに使われた名曲でしたね。
作詞作曲の藤原聡さん曰く「大切な人に対する愛と敬意を込めた曲。歳の割に幼い恋愛をしていることを自虐しながら、幸せを噛み締めている様子を描いた」とのことですが、まさしくそれが体現されたようなアレンジになっていると感じます。
皆さんも是非、この楽曲に使われているおいしいコードワークを是非活用してみてください!
以下のOfficial髭男dismの人気楽曲もご覧ください。