楽器を演奏しない方でも不協和音という言葉は聞いたことがあるでしょう。また、その意味合いもぼんやりと理解しているかと思います。
今回は、不協和音を自在に扱えるようになるため、その意味を正しく理解していきましょう。
不協和音の理解にはまず『音程』を理解する必要があります。音程について詳しくはこちらをご覧ください。
不協和音とは
音程を大きく分けると、完全協和音程・不完全協和音程・不協和音程に分かれます。先に述べた2つの協和音程は心地よく響き合う音程で、不協和音程は濁りが増し緊張感を感じさせる音程を指します。
3つ以上の音が同時なると和音(コード)となりますが、不協和音程が含まれている和音のことを不協和音(不協和和音)と言います。
『不協和音程』となる音程
音程は2つの音の距離を意味しますが、それらは以下のように『度』で表されます。
(ドを主音とした場合の表記も添えてあります。)
このうち、完全と表記されている音程は完全協和音程になります。
3度と6度の音程は不完全協和音程になります。
それ以外の音程はすべて不協和音程です。
完全協和音程
- ド-ド(完全1度)
- ド-ファ(完全4度)
- ド-ソ(完全5度)
- ド-ド(完全8度)
不完全協和音程
- ド-ミ(長3度)
- ド-ミ♭(短3度)
- ド-ラ(長6度)
- ド-ラ♭(短6度)
不協和音程(例)
- ド-レ(長2度)
- ド-シ♭(短7度)
完全協和音と不完全協和音以外の音程は不協和音となります。
不協和音(不協和和音)の例
不協和音程の含まれる不協和音とはどのようなコードでしょうか。
実際のコード進行で確認していきましょう。
下のコード進行は、よく使われるキーCのコード進行です。
さて、不協和音と言えるのはどのコードでしょうか。
まず、1小節目Cコードの構成音は『ドミソ』です。
主音ドと、ドから見た長3度のミ(不完全協和音程)、ドから見た完全5度のソ(完全協和音程)となっています。
不協和音程が含まれていませんので、不協和音ではありません。
2小節目のDm7(構成音:レファラド)、3小節目のG7(ソシレファ)は、先ほどのCとは違いセブンスコードとなっています。
Dから見た短7度のドは不協和音程、Gから見た短7度のファは不協和音程ですので、どちらのコードも不協和音となります。
セブンスコードは不協和音となることがわかります。
そのほかにも、オーギュメントコードやディミニッシュコードも不協和音です。
テンションコードも11thを除いて不協和音です。
また、ドミナントセブンスに含まれる長3度と短7度間の音程はトライトーンという呼び方があるほど非常に不協和な音程です。
不協和音程が作る緊張が音楽には必要
濁っていて聞き心地の良くない不協音程は避けるべきでは?と思う方も少なくありません。
ただ、不協和音が作り出す『緊張』は、音楽を作るのに欠かせないものなのです。
不協和音は避けるべき音ではない
不協和音程の言葉を見たイメージで「不協和音は気持ち悪い音」「避けるべき音」と考えてしまう方もいますが、不協和音程は消して悪い音程ではありません。
2つの音に生まれる不協和とは、音の濁りですが、これにより聞き手が覚える印象は緊張感です。
音楽にはこの緊張感が重要になります。
音楽は緊張と弛緩でできている
一般的に、音楽は『緊張と弛緩』でできていると言われています。
協和音程は濁りの少ない綺麗な響きで安定した印象があります。
不協和音程が作り出す『緊張』が、協和音程に進んだときに大きな『弛緩(≒気のゆるみ、安心感、落ち着き)』が生まれます。
こうした、緊張と弛緩が音楽の中に物語を作り出し、ドラマチックな表現となるのです。
人生においてもそうですが、程よい緊張が充実感を高めることは往々にしてあるでしょう。